【元消防職員が解説】防災庁が年内発足──「ふるさと防災職員」が被災地に来ると何が変わるか

政府は2026年内の防災庁発足を目指し、その前身となる「ふるさと防災職員」制度がすでに動き始めています。
あなたの町が被災したとき、この職員が何をしてくれるのか。知っておくと、避難生活の見通しが変わります。


■①「ふるさと防災職員」とはどんな制度か

ふるさと防災職員は、防災庁の設置を見据えて2024年度から採用が始まった任期付きの国家公務員です。

「防災の専門人材を国が常時抱える」という発想自体が、これまでの日本の行政にはありませんでした。
従来は災害のたびに各省庁や自治体から人を引っ張ってくる形が基本で、初動に時間がかかる構造でした。

この制度はその課題を解消するための第一歩です。


■②平時は何をしているのか

平時は内閣府に所属し、都道府県と連携しながら業務を行います。

主な担当は次の2つです。

  • 避難所の環境改善(衛生・プライバシー・要配慮者対応など)
  • 地域ごとの災害リスク評価と事前対策の検討

「災害が起きてから動く」のではなく、日常的に自治体と関係をつくっておくことが、この職員の本来の価値です。顔の見える関係ができているかどうかが、いざという時の連携速度に直結します。


■③災害時には「リエゾン」として被災地へ

大規模災害が発生すると、ふるさと防災職員は「地域防災リエゾン」として現地に派遣されます。

リエゾンとは「連絡調整員」のことです。国と被災自治体の間に入り、支援のミスマッチを防ぐのが役割です。

2025年11月の大分市大規模火災ではすでに派遣されており、制度は絵に描いた餅ではなく、実際に機能し始めています。


■④被災地派遣の現場で感じた「情報断絶」の怖さ

私自身、元消防職員として被災地への派遣(現地LO)を経験しています。

被災地で最も深刻だったのは「情報の断絶」です。現場で何が起きているかが国や県に届かず、支援が的外れになる。そのタイムロスが、人命に関わることを肌で感じました。

物資が余っている避難所と、水すら届いていない避難所が同時に存在する──そういう状況は決して珍しくありません。リエゾン職員がいるかどうかで、その格差は大きく変わります。


■⑤防災庁が発足すると、現場で何が変わるか

現状では被災地支援は複数省庁にまたがる調整が必要で、縦割りによる初動の遅れが課題です。

防災庁が一元化された司令塔として機能すれば、次の3点が現実的に改善されます。

  • 派遣判断が早くなる(意思決定ラインが短くなる)
  • 平時からの県・市町村との連携が制度として強化される
  • 避難所の環境改善に専門人材が継続的に関与できる

採用された職員の中には、東日本大震災で自ら避難所生活を経験した人もいます。「制度をつくる側」に「被災を知っている人」が増えてきたのは、確かな変化です。


■⑥住民側にも「受け皿」が必要な理由

リエゾン職員がどれだけ優秀でも、地域に受け皿がなければ支援は届きません。

行政側が言いにくい本音を正直に書くと、「住民の準備ゼロの地域ほど支援に時間がかかる」のが現実です。名簿がない、連絡手段がない、近所の要配慮者を誰も把握していない──そういう地域への支援調整は、どうしても後手になります。

「待つ防災」から「迎える防災」への意識が、被災後の生活の質を変えます。


■⑦今すぐできる3つの準備

防災庁の制度を最大限に活かすために、住民側でやっておけることがあります。

  • 避難所・避難経路の確認:自分の地区の指定避難所と、そこへのルートを2通り把握しておく
  • 要配慮者情報の共有:近隣の高齢者・乳幼児・障がいのある方の情報を、町内会や自治会レベルで共有しておく
  • 行政との連絡手段の確認:防災アプリ・防災無線・緊急速報メールが自分のスマホで受信できるか確認する

特別な装備よりも、この3点の方が実際の避難生活に直結します。


■⑧防災庁設置法案の現在地

政府は2026年3月に防災庁設置法案を閣議決定し、今国会での成立を経て年内の発足を目指しています。

法案が成立すれば、ふるさと防災職員はその中核人材として位置づけられます。
制度の名前が変わっても、「現場と国をつなぐ専門人材」という役割の本質は変わりません。

防災庁の動きを追っておくことは、「自分の地域に何が来るか」を知ることでもあります。


■まとめ|防災庁は「国の話」ではなく「あなたの避難所に来る話」

  • ふるさと防災職員は2024年度から採用済みの任期付き国家公務員
  • 平時は避難所改善・リスク評価、災害時はリエゾンとして現地派遣
  • 防災庁設置法案は閣議決定済み、2026年内の発足を目指している
  • 制度が整うほど、住民側の受け皿づくりが支援の質を決める

結論:
「防災庁ができる=国が全部やってくれる」は大きな誤解。リエゾン職員が機能するかどうかは、地域の準備次第で変わる。

元消防職員として被災地のLO業務を経験した立場から言うと、一番動きやすかった地域は「誰に何を聞けばいいかが明確な地域」でした。制度が整うことと、地域が整うこと。この両輪が揃ったとき、はじめて支援は本当に届きます。


内閣府防災情報ページ(bousai.go.jp)

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