【防災士が解説】40代・50代にも広がる「リベンジ退職」と黒字リストラ|災害時に折れない“働き方の耐災害力”を整える

「リベンジ退職」は若い世代の話と思われがちですが、黒字でも早期・希望退職を募る企業が増えると、40代・50代の「ここまで貢献してきたのに」という感情が強い引き金になります。
防災の視点で見ると、これは単なる転職トレンドではなく、生活基盤と判断力を揺らす“長期ストレス災害”です。災害対応は平時の体力・睡眠・人間関係・家計の上に成り立ちます。だからこそ、働き方の耐災害力を崩さない整理が必要です。


■① 何が起きている?|黒字リストラが“中高年の怒り”を生む構造

黒字でも人員削減を進める動きが広がると、現場には「合理化のため」「先のため」という言葉だけが先に届きます。
その結果、長く貢献してきた人ほど、次の感覚に陥りやすいです。

・努力が評価されないまま“対象”にされた
・会社への帰属意識が一気に折れる
・説明が少なく、噂が先に広がる
・「自分の尊厳を守るために辞める」という決断に傾く

突発に見えても、実際は「積み上がった不信」と「一撃のきっかけ」で決まります。


■② なぜ防災と関係がある?|仕事のストレスは“判断力”と“備え”を削る

災害時に最後まで残る力は、道具よりも判断力と体力です。
しかし職場ストレスが続くと、静かに次が起きます。

・睡眠の質が落ちる
・集中力が下がる
・家族との会話が減る
・備えの優先順位が下がる(確認・補充・見直しが止まる)
・「考える余白」がなくなる

これは防災の世界でいう“慢性的な機能低下”です。備えが弱るのは、災害が来てからではなく、平時の疲労で始まります。


■③ よくある誤解|「辞めればスッキリして全部解決」は危ない

辞めること自体を否定する必要はありません。
ただし、誤解されがちなのは「辞める=解放=解決」という単純化です。

・収入が変わると生活の安定が揺れる
・保険・住宅ローン・教育費の設計が崩れる
・転職活動が長引くと自己評価が削られる
・焦りが判断を荒らす

防災士として強く言いたいのは、極端な判断ほど“余白がない時”に起きやすいということです。辞める・辞めないではなく、先に「判断を軽くする土台」を作るのが安全です。


■④ いちばん怖いのは“情報不信”|職場で信頼が崩れると連鎖が起きる

被災地派遣や連絡調整(LO)で痛感したのは、組織が動けなくなる瞬間は「物がない時」より「信頼が割れた時」だということです。
説明が不足し、憶測が広がり、誰も本音を言わなくなると、行動が止まります。

職場でも同じです。黒字リストラのように“納得の材料が見えにくい”出来事は、信頼残高を一気に削ります。
すると、静かな離職、無気力、対立、引き継ぎ崩壊が連鎖します。現場に残る人の負荷も増え、さらに離職が増える。これが一番の損失です。


■⑤ やらなくていい行動|感情のまま動くと“生活の損害”が増える

「仕返し」の気持ちは自然に出ます。ただ、次は避けた方がいいです。

・上司や同僚への攻撃で関係を焼き尽くす
・退職を“最後の意思表示”にして情報を切る
・SNSで一気に吐き出して後戻りできなくなる
・準備ゼロで退職して家計を不安定化させる
・疲れているのに大きな決断を連続させる

防災と同じで、火に油を注ぐ行動は一時的に楽でも、後で生活の復旧が難しくなります。


■⑥ 今日できる最小行動|辞める前に「撤退ライン」と「資金ライン」を決める

最小行動は、転職サイト登録より先に“撤退基準”を決めることです。

1)心身の危険サインを言語化する(眠れない、動悸、食欲低下、怒りの制御不能など)
2)退職前に守る資金ラインを決める(生活費○か月分など)
3)選択肢を増やす準備を静かに始める(資格・異動希望・社内外の相談先)

これは避難と同じです。逃げるかどうかより先に、逃げ道を確保しておくと判断が軽くなります。


■⑦ 現場で効く予防策|1on1・評価の透明化・予兆共有は“防災訓練”と同じ

予防の本質は、制度より運用です。
組織側の対策としては、次が効きます。

・定期的な1on1で対話し、溜めない
・評価基準を数字・言葉で明示し、納得感を作る
・会議での発言減少、表情変化などの予兆を複数の管理職で共有する

防災訓練が「やって初めて回る」ように、人の不満も「話して初めて回る」ものです。放置すると、現場の損失として噴き出します。


■⑧ 防災士として伝えたい本質|働き方の耐災害力は“尊厳”と“余白”で決まる

災害対応の現場では、極限でも踏ん張れる人ほど「自分の尊厳が守られている」「判断の余白がある」という共通点があります。
逆に、尊厳が傷つき続ける環境では、人は静かに壊れます。リベンジ退職は、単なる仕返しではなく“自己回復行動”として表れることがあります。

防災士として言えるのは、生活再建は「お金だけ」でも「根性だけ」でも回りません。
仕事・家計・健康・家族関係を一体で守ることが、長期の災害に強い生き方になります。


■まとめ|黒字リストラ時代は「辞める・辞めない」より“判断を軽くする仕組み”を持つ

リベンジ退職は若者だけではなく、黒字リストラの増加で40代・50代にも起きやすくなります。
怖いのは、信頼が崩れた時に情報不信が連鎖し、判断力と生活基盤が同時に削られることです。
だからこそ、感情のまま動かず、撤退ラインと資金ラインを決め、逃げ道を先に作る。これが働き方の耐災害力です。

結論:
黒字リストラの時代は「会社に依存しない」より先に、「判断を軽くする逃げ道」を持つことが最も現実的な備え。

被災地派遣・LOで見てきたのは、非常時に強い人ほど「早めに情報を取りに行き、選択肢を確保し、静かに備える」という共通点があることです。職場の不信も同じです。余白を作れた人から、生活は守れます。

出典:東洋経済オンライン「若い世代だけでなく40代・50代も『リベンジ退職』 引き金は『黒字リストラ』か?」(2026年2月2日)

コメント

タイトルとURLをコピーしました