【防災士が解説】リカバリー・デフィシット(休息負債)とは?災害時に判断力が落ちる本当の理由と回復の作り方

「寝ていないわけじゃないのに、疲れが抜けない」「休んでも回復しない」——そんな状態が続くと、集中力・判断力・感情のコントロールが落ちていきます。これがリカバリー・デフィシット(休息負債)のイメージです。防災の観点では、休息負債がたまるほど“いつもの自分”で動けなくなり、ミスや事故、体調悪化が増えます。備蓄や装備だけでなく、「回復できる仕組み」を平時から持つことが耐災害力になります。


■① リカバリー・デフィシット(休息負債)とは何か

リカバリー・デフィシット(休息負債)とは、休息・睡眠・回復が足りない状態が積み重なり、体と心の回復が追いつかなくなる状態を指す考え方です。単純な睡眠時間の不足だけでなく、睡眠の質の低下、緊張の持続、休めない環境、回復行動(入浴・食事・水分・軽い運動)の不足などが重なることで起こります。


■② 休息負債がたまると起きやすい変化

休息負債がたまると、次の変化が出やすくなります。
・ミスが増える(確認漏れ、思い込み)
・イライラしやすい、落ち込みやすい
・頭が回らない、判断が遅い
・痛みが強く感じる、体が重い
・風邪をひきやすい、持病が悪化しやすい
防災では、この“じわじわ落ちる状態”が最も危険です。派手な症状より、静かに判断力が落ちます。


■③ 災害時に休息負債が一気に増える理由

災害時は、休息負債がたまりやすい条件がそろいます。
・環境変化(騒音、寒暖差、照明、床の硬さ)
・緊張と不安で眠りが浅くなる
・生活リズムの乱れ(食事・水分・排泄)
・“やること”が終わらず休めない
ここで大事なのは、体力だけでなく「回復する時間と質」が削られることです。


■④ 被災地派遣(LO)で見た「回復できない人から崩れる」現実

被災地派遣(LO)の現場では、直接のケガよりも、睡眠不足と疲労の蓄積で体調を崩す人を多く見ました。避難所では、夜間の物音や照明、周囲への遠慮で眠れず、翌日に判断が鈍ります。
さらに、休めない人ほど「自分だけ頑張らないと」と背負い込み、結果として倒れてしまう。防災の現場では、頑張る人ほど先に消耗することがあります。だから“休む力”は、甘えではなく命を守る技術です。


■⑤ 休息負債を減らす最重要ポイントは「回復の優先順位」

回復の優先順位を間違えると、努力しても回復しません。おすすめの順番はこれです。
1) 睡眠時間より先に「睡眠の邪魔」を減らす(光・音・寒暖差)
2) 水分と塩分(脱水は回復を遅らせる)
3) 食事(特に朝)でリズムを戻す
4) 10分の軽い運動・ストレッチで血流を戻す
災害時も平時も、回復は“足し算”より“邪魔を引く”方が効きます。


■⑥ 休息負債がたまりやすい人の共通点(落とし穴)

次に当てはまるほど、休息負債が増えやすいです。
・夜にスマホやSNSを見続ける
・寝る直前まで頭を使い続ける
・カフェインや飲酒で“気絶睡眠”になりやすい
・休日に寝だめしてリズムが崩れる
災害時はこれがさらに強化されます。だから平時から“戻れる型”を作るのが重要です。


■⑦ 災害時に効く「ミニ回復」3点セット

避難所や多忙な時でも、回復を少しでも進めるミニ回復はこれです。
・首(タオル)と腹(腹巻)を冷やさない
・水分を“こまめに一口”で切らさない
・横になる前に「目を閉じて呼吸を10回」だけ整える
回復はゼロか100かではありません。小さく積んだ回復が、翌日の判断を支えます。


■⑧ 今日できる最小の備え(回復の耐災害力を上げる)

今日できる最小行動は、次のどれか一つで十分です。
・寝室の光を一段落とす(遮光・アイマスク)
・耳栓を備える(避難所でも効く)
・「寝る前のスマホ10分削減」を固定する
・水分を寝る前に一口増やす
この一つが、休息負債の積み上がりを止めます。


■まとめ|休息負債は“静かに判断力を奪う”。回復の型を持つことが耐災害力になる

リカバリー・デフィシット(休息負債)は、睡眠不足だけでなく、回復できない状態が積み重なって心身の回復が追いつかなくなる状態です。災害時は環境・不安・生活の乱れで一気に増え、判断力低下や体調悪化につながります。回復は“頑張る”より“邪魔を減らす”が基本です。小さな回復を積み、戻れる型を平時から作ることが、命を守る備えになります。

結論:
防災は「備える力」だけでなく「回復する力」が勝負です。休息負債を減らせば、災害時も“いつもの自分”で動けます。
防災士として、被災地派遣(LO)の現場で「回復できない人から崩れる」現実を見ました。だからこそ、今から回復の型を一つ持っておくことが、最も現実的な備えになります。

出典:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/keywords/sleep-disorder.html

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