企業BCPは、災害や事故が起きた時に「何を最優先で止めずに残すか」を決める計画です。ですが、新年度の策定で失敗しやすいのは、最初から分厚い計画書を作ろうとして止まってしまうことです。企業BCPで本当に大切なのは、きれいな文書より、自社の重要業務・代替手段・復旧目標を現実的に決めることです。
つまり、新年度の企業BCP策定手順で大切なのは、「全部を網羅すること」ではなく、止まると困る仕事を先に絞り、今年の体制で回せる形にすることです。この記事では、その現実的な手順を整理して解説します。
■① まず結論として、企業BCP策定で最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、自社の“止められない仕事”を先に決めることです。
BCPで失敗しやすいのは、「総務も営業も製造も物流も全部大事」と並べてしまうことです。ですが、災害時は人も設備も情報も限られます。だから、最初に必要なのは「全部守る計画」ではなく、最優先で残す仕事を選ぶ計画です。
元消防職員として感じるのは、災害時に本当に差が出るのは「準備量」より「優先順位の明確さ」です。私なら、新年度のBCP策定では
まず重要業務を絞る
次に止まる理由を洗う
最後に代替手段を決める
この順で考えます。
■② 手順① まず“重要業務”を1〜3個に絞る
最初の手順は、会社の売上・信用・法令対応に直結する業務を1〜3個に絞ることです。
たとえば、
主力商品の出荷
顧客対応窓口
基幹システムの維持
決済・入金業務
などです。
ここで大切なのは、「大事な仕事」を全部並べることではなく、止まったら会社への打撃が大きい順に並べることです。私なら、「一週間止まったら何が一番痛いか」で考えます。その方がBCPの軸がぶれません。
■③ 手順② その業務は“何が止まると止まるか”を洗い出す
次の手順は、重要業務に必要な資源を洗い出すことです。
具体的には、
人
建物・拠点
設備・機械
電源・通信
システム・データ
取引先・物流
です。
企業BCPは、「災害が来た時どうするか」だけでなく、「何が欠けると業務が止まるか」を知ることが出発点です。私は、ここで初めて“自社の弱点”が見えると考えます。思い込みで進めるより、現実が見えます。
■④ 手順③ 復旧目標時間をざっくり決める
三つ目は、その業務を何時間・何日で戻したいかを決めることです。
たとえば、
当日中に再開したい
24時間以内に再開したい
3日以内なら許容できる
といった形です。
ここで大切なのは、立派な数値より、自社として許容できる停止時間を持つことです。これがないと、何を優先して準備するか決まりません。私なら、「理想」より「本当に困る期限」で決めます。その方が現場で使えます。
■⑤ 手順④ 代替手段を“今年できる範囲”で決める
四つ目は、止まった時の代替手段を決めることです。
たとえば、
データのクラウドバックアップ
代替拠点の確保
紙運用への切り替え手順
安否確認ツールの導入
主要取引先との連絡ルート整理
などです。
ここで失敗しやすいのは、最初から大がかりな投資前提にしてしまうことです。私は、BCPは「理想の完成形」より「今年すぐできる対策」から作る方が続きやすいと考えます。まずは小さくても、止まり方を変える対策が大事です。
■⑥ 手順⑤ 緊急時の指揮系統を決める
BCPでかなり大事なのが、誰が判断するかです。
たとえば、
発動責任者は誰か
不在時の代行者は誰か
従業員への連絡方法は何か
取引先へは誰が伝えるか
といったことです。
元消防職員としても、災害時に止まりやすいのは設備より“判断待ち”でした。私なら、BCP策定では「何をするか」と同じくらい「誰が決めるか」を重く見ます。その方が初動が早いです。
■⑦ 手順⑥ 安否確認と初動連絡を別で考える
ここはかなり大事です。安否確認と業務連絡を混ぜない方がいいです。
災害時には、
従業員の無事確認
出社可否確認
業務再開連絡
の3つが必要になります。これを一つの連絡で済ませようとすると混乱しやすいです。
私なら、
安否確認の方法
出社判断の連絡方法
取引先への連絡文例
を分けて用意します。BCPでは、“連絡する”より“何を確認するかを分ける”方が現実的です。
■⑧ 手順⑦ 計画書は最初から厚くしない
BCPは、最初から完璧な冊子にしない方が続きます。
最低限なら、
重要業務一覧
復旧目標時間
必要資源と弱点
代替手段
指揮命令系統
連絡先一覧
この6点でも十分スタートできます。
中小企業では特に、分厚い計画書を作っても現場で開かれないことがあります。私は、BCPは「読む資料」より「災害時に開く1枚・数枚」で始めた方がいいと考えます。
■⑨ 手順⑧ 訓練しないBCPは止まりやすい
策定後に必ずやるべきなのは、小さくても訓練することです。
たとえば、
安否確認だけ試す
停電想定で紙運用してみる
システム停止時の連絡訓練をする
といった小規模訓練です。
被災地経験でも、強かった組織は「立派な計画を持つ組織」より「一度でも試していた組織」でした。私なら、新年度の策定では「作ること」と「1回試すこと」をセットにします。
■⑩ 中小企業なら“事業継続力強化計画”も選択肢になる
中小企業なら、事業継続力強化計画を視野に入れるのも現実的です。
これは、中小企業が取り組みやすい防災・減災の計画として認定制度が用意されているものです。BCPをいきなり大規模に作るのが重い場合でも、まずここから整理していく考え方はかなり実務的です。
私なら、「BCPは難しそう」で止まるより、「今年はここまで整える」と段階を切る方をすすめます。その方が前に進みやすいです。
■⑪ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「止められない仕事を絞れているか」
「その仕事が何で止まるか見えているか」
「今年できる代替手段まで落とせているか」
「作ったあとに一度でも試せるか」
この4つが整理できれば、新年度の企業BCP策定手順としてはかなり現実的です。防災では、「立派な文書を作ること」より「止まり方を変えること」の方が大切です。
■⑫ まとめ
新年度の企業BCP策定で大切なのは、重要業務を絞り、必要資源と弱点を洗い出し、復旧目標時間と代替手段、指揮命令系統、連絡方法までを今年の体制で回せる形にすることです。内閣府は企業BCPの策定を促進しており、防災白書でも改定版ガイドラインに沿ったBCP策定を推奨しています。中小企業庁も「中小企業BCP策定運用指針」を案内し、さらに中小企業向けの取り組みやすい計画として「事業継続力強化計画」認定制度を設けています。
私なら、企業BCPで一番大事なのは「完璧な計画書を作ること」ではなく「止められない仕事を今年の体制で守れる形にすること」だと伝えます。現場では、厚いマニュアルより、優先順位が決まっている会社の方が強いです。だからこそ、まずは絞る、次に代替を決める、最後に試す。この順番で整えるのがおすすめです。

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