児童生徒への防災教育で大切なのは、知識をたくさん覚えさせることだけではありません。文部科学省は、防災教育について、児童生徒が自ら危険を予測し、主体的に判断して行動する態度を育てること、さらに支援者となる視点から安全で安心な社会づくりに貢献する意識を高めることが重要だと示しています。近年は、小学校向けの「実践的な防災教育の手引き」に加え、中学校・高等学校向けの手引きも公表され、発達段階に応じた実践例の整理が進んでいます。文部科学省「実践的な防災教育の手引き(小学校編)」 文部科学省「実践的な防災教育の手引き(中学校・高等学校編)」
つまり、児童生徒向け防災教育のカリキュラム例を考える時に大切なのは、「何年生で何を教えるか」を機械的に並べることではなく、その発達段階で身に付けさせたい行動を先に決めることです。元消防職員として感じるのは、防災教育で本当に差が出るのは知識量ではなく、最初の数秒で体が動くか、状況を見て次の一歩を考えられるかです。私なら、防災教育カリキュラムでは、まず自分の命を守る、次に周囲と協力する、最後に地域や社会へ関わる、この順で組むのが現実的だと考えます。
■① まず結論として、児童生徒向け防災教育カリキュラムで最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、学年ごとに「何を覚えるか」ではなく「何ができるようになるか」を決めることです。
学校の防災教育は、単なる知識学習ではなく、学校安全計画、危険等発生時対処要領、避難訓練、地域連携と一体で進める考え方が示されています。だから、カリキュラム例も「災害の種類を学ぶ授業一覧」ではなく、発達段階に応じて何を行動として身に付けるかで組む方が実践的です。
私なら、低学年なら「まず身を守る」、中学年なら「理由を理解して動く」、高学年以降は「自分で判断し、周囲と関わる」というように、行動の階段を作ります。その方が、防災教育が毎年の積み上げになります。
■② 小学校低学年でまず教えるべきことは何か
小学校低学年では、危険を感じた時に、まず身を守る行動を取れることが中心になります。
この時期は、難しい説明を増やすより、揺れたら机の下に入る、放送を聞く、勝手に走らない、先生の指示で動く、といった基本行動を繰り返し身に付けることが大切です。防災教育では、低学年ほど「知っている」より「すぐ動ける」が重要です。
元消防職員としても、災害時は最初の一瞬の動きがかなり大きいと感じます。だから、低学年では「災害の仕組み」を長く教えるより、「最初の1分の動き」を何度も確認する方が現実的です。
■③ 小学校中学年では何を足すべきか
小学校中学年では、なぜその行動が必要なのかを少しずつ理解させる段階に入ります。
たとえば、地震、津波、洪水、火災では、それぞれ行動が違うことを知ることが大切です。また、学校だけでなく、登下校中や家の中でも考える内容を少しずつ入れていくと、防災が「学校の授業」だけで終わりにくくなります。
私は、この段階から「家で話せる宿題」を入れる方が強いと考えます。たとえば、「家の中で安全な場所を探す」「避難する時に持っていく物を家族と話す」といった小さな課題です。防災は、学校と家庭がつながった時に、かなり現実味が増します。
■④ 小学校高学年では何を目指すべきか
小学校高学年では、自分を守るだけでなく、周囲を見て動けることを目指した方がよいです。
この時期は、避難経路を自分で考える、家庭の備えを確認する、小さい子や友達への声かけを考える、といった内容を入れると、知識と行動がつながりやすいです。高学年になると、先生の指示だけでなく、「自分ならどう動くか」を考えられるようになってきます。
元消防職員としても、この時期に「自分だけ逃げる」から一歩進んで「周囲も見られる」経験を持てると、その後の防災意識はかなり変わると感じます。私は、高学年では避難訓練も「並んで移動する」だけでなく、「どこが危ないかを考える時間」を少し入れた方がよいと考えます。
■⑤ 中学生では何を中心に組むべきか
中学生では、状況判断と役割意識を入れるのが現実的です。
中学校・高等学校向けの実践的な防災教育の手引きでも、単なる避難訓練ではなく、通学時や地域連携、発信活動など、より実践的な取組が重視されています。つまり、中学生では、登下校中の判断、在宅時の行動、避難所や地域で中学生にできる役割まで広げる方が実践的です。文部科学省「実践的な防災教育の手引き(中学校・高等学校編)」
私なら、中学生には「先生の指示を待つ訓練」だけでなく、「自分で考える訓練」を少し入れるべきだと考えます。たとえば、登下校中に地震が起きたらどうするか、家に一人の時に警報が出たらどうするか、といった判断型の問いです。その方が現実に近いです。
■⑥ 高校生では何を一段上げるべきか
高校生では、支援者になる視点を本格的に入れると現実的です。
高校生なら、避難所運営の基本を知る、地域防災活動に参加する、小中学生へ伝える側に回る、災害情報の見方を学ぶ、といった内容が合います。防災教育は「自分が助かる」で終わるのではなく、「地域で何を担えるか」へ広げた方が、学校教育としても深くなります。
被災地派遣の現場でも、避難所や地域では、高校生くらいの年齢が果たせる役割は意外と大きいです。だから私は、高校生のカリキュラムには「地域で何を担えるか」を必ず入れます。その方が、防災教育が学校内だけで閉じません。
■⑦ カリキュラム例は教科とどうつなげるべきか
防災教育は、単独授業だけでなく、既存教科へ自然に入れる方が続きやすいです。
たとえば、社会科で地域の災害特性、理科で地震や気象、家庭科で備蓄や非常食、保健体育で応急手当、総合的な学習で地域防災へつなげる形です。こうすると、防災が特別な一日だけのものではなく、普段の学びの中に入っていきます。
私は、年間で一度だけの防災週間より、「少しずつ教科へ入る」方が現場では回りやすいと考えます。防災教育は、授業時間を別に大きく取らなくても、教科の中へ自然に組み込むことで続けやすくなります。
■⑧ 学校独自カリキュラムにする時に外してはいけないことは何か
外してはいけないのは、その学校と地域の災害特性です。
沿岸部と内陸部、豪雪地帯と都市部、特別支援学校と一般校では、教えるべき重点が違います。だから、カリキュラム例を作る時は、地域の主な災害、通学環境、学校施設の特徴、地域連携の相手を先に書き出す方が現実的です。
元消防職員としても、災害は「どこでも同じ」ではありません。私は、学校防災で本当に強いのは、全国共通の正しい内容をたくさん並べた学校より、「この地域、この学校ならでは」をきちんと落とし込んだ学校だと感じます。
■⑨ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「その学年で“何を知るか”より“何ができるようになるか”を決められているか」
「低学年は自分を守る、中高学年は周囲を見る、中高生は判断と支援へ広げられているか」
「教科や学校行事に自然に入れられているか」
「学校と地域の災害特性に合っているか」
この4つが整理できれば、児童生徒向け防災教育のカリキュラム例としてはかなり現実的です。防災では、「たくさん教えること」より「いざという時に体が動くこと」の方が大切です。
■⑩ まとめ
児童生徒向け防災教育のカリキュラム例で大切なのは、低学年では初動行動、中学年では理由理解、高学年では周囲への視点、中高生では判断力と支援者意識へと段階的に広げ、学校や地域の災害特性に合わせて教科や行事へ落とし込むことです。文部科学省は、防災教育について、自ら危険を予測し主体的に行動する態度の育成と、支援者となる視点から社会づくりに貢献する意識の向上を求めており、小学校向け・中高向けの実践的な手引きを順次公表しています。
私なら、児童生徒の防災教育で一番大事なのは「災害を知ること」ではなく「その学年で必要な最初の行動ができること」だと伝えます。被災地でも、知識の多さより、最初の一歩が動く方が強いと感じてきました。だからこそ、まずは自分を守る、次に周囲を見る、最後に支える側へ育てる。この順番で整えるのがおすすめです。

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