夏に地震が起きた時、「避難所は暑そう」「家族やペットがいる」「周囲に気を使う」などの理由で、車中泊を考える人は少なくありません。実際、内閣府の手引きでも、車中泊避難は一定数発生する現実的な避難形態として整理されています。
https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/pdf/tebiki.pdf
ただし、夏の車中泊は「気楽な避難」ではありません。プライバシー確保などの利点がある一方で、熱中症、エコノミークラス症候群、一酸化炭素中毒、情報や支援からの孤立といった危険があります。だからこそ大切なのは、「避難所が嫌だから車」ではなく、車中泊が本当に安全に回る条件があるかで判断することです。この記事では、夏の地震で避難所代わりに車中泊を考える時の判断基準を、家庭で使いやすい形で整理して解説します。
■① 最初に考えるべきことは「車で休めるか」ではなく「車で命を守れるか」
結論から言うと、最初に考えるべきことは、車で眠れるかどうかではなく、その車中泊で命を守れるかです。
内閣府の「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」では、車中泊避難にはプライバシー確保やペットの世話ができる利点がある一方、エコノミークラス症候群の危険があり、健康管理が課題だと示されています。
元消防職員として感じるのは、夏の車中泊で一番危ないのは「とりあえず今夜だけ」と軽く考えることです。暑さ、姿勢の固定、トイレ不安、水分不足が重なると、思った以上に早く体調を崩すことがあります。だから、車中泊は“楽かどうか”ではなく、“安全に続けられるか”で見た方が現実的です。
■② 車中泊を選ぶ理由があっても、まず確認すべきことは何か
まず確認したいのは、その駐車場所が安全かどうかです。
地震のあとなら、建物やブロック塀の倒壊、津波、土砂災害、地割れ、火災延焼、周辺の交通混乱などを見て、そこに車を置き続けてよいかを判断する必要があります。内閣府の検討会資料でも、車中泊避難場所の確保や事前指定を考える際には、地震時と水害時で使える場所が異なるため、安全性の検討が必要だと指摘されています。
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/07/pdf/shiryo1.pdf
私なら、車中泊をするか考える時は、まず「この場所は熱と危険がたまらないか」を見ます。被災地でも、場所選びを外すと、その後の工夫が効きにくくなることがありました。
■③ 夏の車中泊で最も警戒すべき危険は何か
最も警戒したいのは、熱中症です。
内閣府・厚生労働省の「災害時の熱中症予防」では、災害時は慣れない環境や疲労で熱中症リスクが高まり、特に高齢者、こども、障害のある方は注意が必要だとされています。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/pdf/netchushoyobo.pdf
しかも車の中は、日中だけでなく、夜も熱がこもることがあります。エンジンを止めた車内で暑さを我慢し続けるのは危険です。逆に、エンジンをかけたまま寝れば、一酸化炭素中毒の危険があります。内閣府の車中泊避難資料でも、一酸化炭素中毒は命に関わる危険として挙げられています。
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/01/pdf/shiryo5.pdf
■④ 車中泊でよく言われるエコノミークラス症候群は本当に危ないのか
はい。かなり危ないです。
内閣府の資料では、車中泊避難にはエコノミークラス症候群等の健康リスクがあるため、行政としても平時から住民への周知が必要だと示されています。
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/07/pdf/shiryo1.pdf
また、熊本地震に関する内閣府資料では、発災直後に車中泊と関連してエコノミークラス症候群の患者が集中的に発生し、重篤な患者も出たと整理されています。
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/04/pdf/shiryo7.pdf
つまり、「少し狭いけど眠れるから大丈夫」とは言えません。水分を極端に控えない、足を少しでも動かす、同じ姿勢を続けないことがかなり大切です。
■⑤ 夏の車中泊を選ぶなら、最低限そろえたい条件は何か
最低限そろえたいのは、次の条件です。
・安全な駐車場所
・直射日光を避けやすいこと
・水分を切らさないこと
・トイレに無理なく行けること
・足を伸ばしたり体を動かしたりできる工夫
・情報と支援から切れないこと
・長期化しない前提を持つこと
内閣府の検討会資料では、車中泊避難者に対して、避難所避難者と同程度の物資支援や情報発信、健康管理、相談窓口の設置などが必要だと整理されています。
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/04/pdf/shiryo4.pdf
私なら、車中泊は「車があるからできる」ではなく、「場所・水・トイレ・情報」がそろって初めて成り立つと考えます。
■⑥ どんな人は車中泊を避けた方がよいのか
特に避けた方がよいのは、妊産婦、重い持病のある方、高齢者、乳幼児、障害のある方など、体調悪化のリスクが高い人です。
内閣府の検討会資料では、群馬県の避難ビジョンを引用し、妊産婦などのハイリスクの方は静脈血栓塞栓症や肺炎などの危険性が高いため、車中避難は避けるべきだと紹介しています。
元消防職員としても、弱い立場の人ほど「気を使って車を選ぶ」ことがありますが、むしろ先に冷房のある避難所や屋内避難先を考えた方が安全です。
■⑦ 車中泊はどのくらいの期間までならよいのか
結論から言うと、長期化は避ける前提で考える方が安全です。
内閣府の検討会資料では、群馬県の避難ビジョンを引用し、車中避難は発災前後1〜2日程度の「命を守る避難」の選択肢として位置づけられていると紹介しています。
つまり、車中泊は「避難生活の完成形」ではなく、「安全な次の場所へつなぐ一時的な手段」と考えた方が現実的です。私なら、車中泊を始める時点で「次にどこへ移るか」まで考えます。
■⑧ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「その場所は安全か」
「暑さとトイレを無理なく回せるか」
「体を動かせず健康リスクが高まらないか」
「長期化させず、次の避難先につなげられるか」
この4つがそろわないなら、車中泊は避難所の代わりとしては危ういです。防災では、「避難所が嫌だから車」ではなく、「車中泊でも命を守れる条件があるか」で判断する方が大切です。
■まとめ
夏の地震で避難所代わりに車中泊を考える時に大切なのは、「気楽そうだから」ではなく「本当に安全に回るか」で考えることです。内閣府の手引きでは、車中泊避難にはプライバシー確保などの利点がある一方で、エコノミークラス症候群の危険があり、健康管理が課題だと示されています。関連資料でも、一酸化炭素中毒や熱中症、長期化の危険性が整理されています。
https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/pdf/tebiki.pdf
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/01/pdf/shiryo5.pdf
私なら、夏の車中泊で一番大事なのは「車で寝られるか」ではなく「車中泊で命を落とさないか」だと伝えます。被災地でも、車中泊は助けにも危険にもなりました。だからこそ、まずは安全な場所、次に暑さとトイレ、その次に長期化しない出口。この順番で考えるのがおすすめです。
出典:https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/pdf/tebiki.pdf(内閣府「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」)

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