大災害が起きると、がれき・家財・泥・畳・家具・家電など、想像以上の「災害廃棄物」が一気に発生します。
問題は量だけではありません。仮置場の確保、分別、収集運搬、処理先の調整、住民への周知、契約や発注……“事務と現場”が同時に膨らみます。
その負荷を軽くして、処理を前に進めるための仕組みが「災害廃棄物処理支援員制度(人材バンク)」です。
■① 災害廃棄物処理支援員制度とは?
災害廃棄物処理支援員制度とは、災害廃棄物の処理に知見を持つ自治体職員等をあらかじめ「支援員」として登録し、被災自治体からの要請に応じて派遣する仕組みです。
災害廃棄物の処理は“経験がものを言う分野”なので、経験者の視点を現場へ投入できる点が強みです。
■② なぜ必要?|廃棄物対応は「遅れるほど生活が崩れる」
災害廃棄物の処理が遅れると、次の問題が連鎖します。
- 道路が塞がれて救援・復旧が進まない
- 悪臭・害虫・衛生悪化で健康被害が出る
- 仮置場が混乱し、火災・事故・苦情が増える
- 住民が片付けの見通しを失い、心理的負担が増す
つまり災害廃棄物は、「生活再建のスピード」を左右します。
■③ 支援員は何をする?|“現場の段取り”を整える仕事
支援員が担うのは、重機を動かす作業そのものというより、処理が回るように“段取り”を整える仕事です。
- 仮置場の立ち上げ支援(導線・区画・掲示・安全)
- 分別ルールの設計と住民周知の整理
- 収集運搬の体制づくり(委託・直営・応援の割付)
- 処理先・広域処理の調整の補助
- 進捗管理(量の見える化、優先順位、課題整理)
- 現場の声を行政判断に変換(やることを絞る)
“迷い”を減らして、処理の速度を上げる役割です。
■④ どんな人が支援員になる?|経験が資産になる
支援員として価値が高いのは、次の経験がある人です。
- 災害廃棄物の実務経験(仮置場、分別、委託、広域調整)
- 一般廃棄物処理の運用経験(収集運搬・施設・契約)
- 住民対応や広報を含む運用設計の経験
- 他機関調整(都道府県、環境部局、事業者)に慣れている
現場で必要なのは、理屈より「現実の回し方」です。
■⑤ 派遣はどう決まる?|「要請→マッチング→投入」
被災自治体が支援を要請し、登録された支援員の中から適任者が派遣されます。
この仕組みの良さは、被災自治体が“ゼロから探さない”で済むことです。
被災直後は電話も人も回らないので、候補者が整備されているだけで初動が速くなります。
■⑥(一次情報)被災地で見た「片付けが進むと、人の顔が戻る」
被災地派遣(LO)で現地に入ると、がれきや家財が街に残ったままだと、住民はずっと災害の中に取り残されたような表情になります。
一方で、仮置場が整い、分別が分かり、収集が回り始めると、少しずつですが「次にやること」が見えるようになり、人の顔が戻っていきます。
元消防職員・防災士としての実感ですが、災害対応は“救助の次”が長いです。
廃棄物処理は地味に見えて、復旧・復興の土台そのものです。
■⑦ 住民側のポイント|勝手に捨てると、逆に遅くなる
災害廃棄物は、普段のごみ出しと違います。
ルールが整う前に「とにかく出す」が広がると、仮置場が混乱し、分別が崩れ、処理が遅れます。
- 指定場所・指定日が出るまで待つ
- 分別ルールに合わせて出す
- 危険物(ガスボンベ、塗料、電池等)は別扱い
- 家電やアスベスト疑いなど、判断が必要なものは確認する
“焦って動く”より、“ルールに乗る”ほうが早く片付きます。
■⑧ 平時にできる備え|自治体こそ「計画と訓練」が効く
自治体の平時の備えは、災害時の速度に直結します。
- 仮置場候補地のリストと想定レイアウト
- 分別区分と掲示物テンプレ
- 委託契約・応援受援の手順整理
- 住民周知の型(HP・SNS・防災無線・掲示)
- 支援員制度や支援ネットワークの活用手順の共有
制度は、平時に“確認と共有”を積んでいる団ほど強いです。
■まとめ|支援員制度は「災害廃棄物の詰まり」を外して復旧を速くする
災害廃棄物処理支援員制度(人材バンク)は、経験ある人材を登録し、被災自治体の要請に応じて派遣する仕組みです。
仮置場、分別、運用設計、進捗管理、住民周知など、現場が回るための“段取り”を整え、生活再建を前に進めます。
結論:
災害廃棄物は、復旧のスピードを決める「生活インフラ」です。制度を知り、平時に使い方を共有しておくほど、被災地の苦しさは短くできます。
防災士として被災地を見てきた立場からも、片付けが進むことは「人が前を向く力」になります。
出典:環境省 中部地方環境事務所「災害廃棄物処理支援員制度(人材バンク)による職員派遣について」https://chubu.env.go.jp/press_00004.html

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