災害が起きた直後、多くの人がまずやろうとするのが家族への電話です。
「無事か確認したい」「今どこにいるのか知りたい」と思うのは当然です。
ただ、実際の災害時は電話回線が混雑し、すぐにはつながらないことが少なくありません。
結論から言えば、災害時に家族と連絡が取れない時は、“何度も電話をかけ続けること”より、“優先順位を決めて安否確認の手段を切り替えること”が大切です。
政府広報でも、災害時は回線がつながりにくくなるため、安否確認には災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板などを活用するよう案内されています。
つまり、非常時は普段の電話の感覚で連絡しようとすると、かえって動きが悪くなりやすいのです。 (gov-online.go.jp)
元消防職員としての感覚でも、災害時に本当に危ないのは「連絡が取れないこと」そのものより、連絡が取れないことで頭がいっぱいになり、今やるべき安全行動が止まることです。
家族を大切に思うほど焦ります。
だからこそ、連絡の優先順位を平時から整理しておくことが命を守る備えになります。
■① 最優先は「自分の安全確保」
家族と連絡が取れない時でも、最初の優先順位は自分の安全確保です。
地震の直後に家具が倒れそうな場所にいる、火災の危険がある、津波や土砂災害の危険が迫っている。
こうした状況でその場にとどまり、スマホを握って何度も発信を続けるのは危険です。
政府広報でも、発災時はまず身の安全を確保し、そのうえで電波が通じていれば電話や171などで自分の居場所を知らせることができると案内しています。
つまり順番は、まず安全、その次に連絡です。 (gov-online.go.jp)
防災では、この順番を崩さないことが本当に大切です。
家族が心配でも、自分が危険な場所にとどまれば、結果的に家族全体の安否確認がさらに難しくなります。
■② 次の優先順位は「居場所を知らせること」
災害時に連絡が取れない時、多くの人は「相手の無事を知りたい」と考えます。
もちろんそれは大事です。
ただ、同じくらい大切なのが、自分の居場所と状態を相手が分かる形で残すことです。
NTT東日本の災害用伝言ダイヤル(171)は、災害発生時に電話番号をキーにして伝言を録音・再生できる仕組みです。
電話がつながりにくい場面でも、「無事」「どこにいる」「どこへ向かう」といった短い情報を残せるのが強みです。 (ntt-east.co.jp)
つまり、優先順位としては、
相手に何度も直接つなごうとする
よりも、
自分の安否を残して、相手があとから確認できる状態を作る
方が現実的です。
■③ 連絡が取れない時の優先順位は「電話」より「短い安否情報」
災害時に弱いのは、長い会話を前提にする連絡です。
回線が混雑している時に、詳細な説明や何往復もの確認をしようとすると、つながりにくさが増します。
だから優先順位は、
「長く話すこと」ではなく、
短く伝わること
に置いた方がいいです。
たとえば伝える内容は、次の3つで十分です。
・無事かどうか
・今どこにいるか
・次にどこへ向かうか
この3つが分かるだけで、家族はかなり動きやすくなります。
被災地派遣やLOとして現場に入った時も、情報が多い人より、必要な情報だけを残せる人の方が強いと感じました。
災害時は、説明のうまさより、要点の短さが効きます。
■④ 直接電話がだめなら、171や災害伝言板へ切り替える
政府広報では、災害時の安否確認手段として、災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板を活用するよう案内しています。
家族みんなが携帯電話を持っていても、災害時は通常の通話がつながりにくくなることがあるためです。 (gov-online.go.jp)
ここで大切なのは、
「電話がつながらない=連絡手段がない」
ではないということです。
直接通話が無理でも、
171
災害伝言板
SMS
防災アプリ
メール
といった別ルートがあります。
防災士として強く言いたいのは、災害時の連絡は“執着”より“切り替え”が大事だということです。
同じ方法を繰り返すより、別の手段へ早く移る方が家族全体の安否確認は進みやすくなります。
■⑤ 家族で決めておきたいのは「集合場所」と「連絡の型」
災害時に本当に強い家庭は、連絡手段が多い家庭だけではありません。
連絡が取れない前提で行動の型が決まっている家庭です。
たとえば、
連絡がつかなければまず自宅ではなく○○へ向かう
子どもは学校待機
親は職場からすぐ迎えに行かず、まず安全確認
171には必ず同じ電話番号で伝言を入れる
このように決めておくだけで、混乱がかなり減ります。
元消防職員として感じるのは、災害時に苦しくなるのは「家族愛が足りない家庭」ではなく、大事に思っているのに、動き方がバラバラな家庭です。
だからこそ、連絡手段より先に、連絡が取れない時の行動基準を共有しておくことが大切です。
■⑥ 子どもや高齢者がいる家庭は“連絡先”より“流れ”が大事
子どもや高齢者がいる家庭では、災害時の連絡はさらに複雑になります。
子どもは端末操作が不十分なことがあり、高齢者は171や伝言板に慣れていないことがあります。
この場合、連絡手段をたくさん教えるより、まず何をするかの流れを決める方が効果的です。
たとえば、
子どもは学校の指示に従う
高齢の親は自宅待機か近隣避難所へ
連絡は長電話でなく「無事・場所・次の行動」だけ
こうした基本の流れを平時から確認しておくと、非常時に強くなります。
災害時は、細かい完璧さより、迷わない型の方が助かります。
■⑦ よくある誤解
よくある誤解の一つが、
「家族全員に電話がつながるまで動けない」
という考え方です。
実際には、先に安全を確保し、自分の情報を残し、必要なら避難行動を始める方が正しい場面が多いです。 (gov-online.go.jp)
もう一つは、
「171は古い仕組みだから今はスマホだけでいい」
という考え方です。
ですが、政府広報でも今なお171や災害用伝言板が災害時の安否確認手段として案内されています。
つまり、今でも十分に実用性があるということです。 (gov-online.go.jp)
さらに、
「詳しく説明しないと家族が不安になる」
と思って長い連絡にこだわるのも危険です。
災害時は、長い説明より短い要点の方が届きやすいです。
■⑧ まとめ
災害時に家族と連絡が取れない時の優先順位は、まず自分の安全確保、その次に自分の居場所と安否を残すこと、そして直接通話にこだわらず171や災害伝言板へ切り替えることです。
電話がつながらない時ほど、何度も発信を繰り返すより、短い安否情報を残す方が現実的です。 (gov-online.go.jp)
家族を思う気持ちが強いほど、すぐ声を聞きたくなります。
でも災害時に本当に強いのは、連絡が取れない前提でも動ける家庭です。
集合場所、連絡方法、伝える内容、この3つを平時から決めておくだけで、非常時の混乱はかなり減らせます。
元消防職員として強く言えるのは、災害時の連絡は「全部確認してから動く」では遅くなりやすいということです。
まず安全。
次に安否を残す。
そして連絡手段を切り替える。
この順番が、家族全体を守る一番現実的な考え方です。

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