賃貸は「自分の家じゃないから、防災はできない」と思われがちです。
でも実際は逆で、賃貸ほど“自分の運用”で守れる部分が大きいです。なぜなら、建物を大きく改修できない分、家具配置・避難導線・連絡手段・保険といった「生活の設計」で差が出るからです。
防災士として、賃貸でも現実的にできて、続けやすい備えを整理します。
■① 結論|賃貸の防災は「設備」より「運用」で強くなる
賃貸は壁に穴を開けられない、工事できない、という制約があります。
その代わり、次の運用で被害を減らせます。
・家具を倒れにくくする
・避難導線を確保する
・停電・断水に備える
・連絡・集合ルールを決める
・保険で生活再建を早める
賃貸は「直せない」からこそ、先に“崩れない暮らし”を作るのが強いです。
■② 大家任せにできない現実|被害の大半は「室内」で起きる
地震や台風で怖いのは建物だけではありません。
室内では次が起きやすいです。
・家具転倒
・食器やガラスの飛散
・コンセント周りのトラブル
・停電で暗闇+転倒
・断水でトイレが詰む
建物側の対策を大家がしていても、室内は住む人の責任です。
ここを押さえるだけで、賃貸の防災は一段上がります。
■③ よくある誤解|「賃貸だから固定できない」は半分だけ正しい
穴を開ける固定が難しいのは事実です。
ただし、固定は“穴を開ける”だけではありません。
・突っ張り棒(耐震ポール)
・粘着・耐震ジェル
・家具と壁の隙間を詰める
・背の高い家具を置かない配置
・重い物は下、軽い物は上に収納
賃貸は「固定できない」ではなく「固定方法を選ぶ」が正解です。
■④ 最優先の備え|避難導線は“玄関と寝床”から作る
賃貸で一番効くのは、避難導線の設計です。
・寝床の近くにガラス・棚・鏡を置かない
・玄関までの通路に物を置かない
・玄関に予備靴(踏み抜き防止)
・懐中電灯を“手の届く位置”に固定
夜の地震は、「暗い」「踏む」「つまずく」が連鎖します。
導線だけ整えると、危険度が大きく下がります。
■⑤ 賃貸でやらなくていいこと|完璧主義と“買い足し地獄”
賃貸防災で続かない原因は、完璧を目指して疲れることです。
・最初から防災グッズを全部揃える
・SNSのチェックリストを全部実行する
・収納が増えて逆に動線が塞がる
・高価な装備で満足して運用が止まる
賃貸はスペースが限られるからこそ、最小限で回る形が強いです。
■⑥ 今日できる最小行動|「1カ所だけ」安全地帯を作る
今日できる最小行動は、部屋全体をやらないことです。
まず1カ所だけ安全地帯を作ります。
・寝床の左右1mの落下物をゼロにする
・スマホ、ライト、靴、眼鏡を固定位置に置く
・通路の床に物を置かない
これだけで、夜間被害のリスクが目に見えて下がります。
防災は“面”でやるより、最初は“点”で勝つ方が続きます。
■⑦ 生活再建の備え|賃貸こそ保険が効く(借家人賠償・個人賠償)
賃貸は、被害が「自分」だけで終わらないことがあります。
・水漏れで階下に損害
・火災で部屋を損傷し原状回復が必要
・第三者に損害を与える
ここで効くのが次の補償です。
・借家人賠償責任(部屋を損傷した場合の賠償)
・個人賠償責任(他人に損害を与えた場合の賠償)
賃貸は、保険が「揉め事の防止」になり、生活再建が早くなります。
■⑧ 現場で見た「小さな備えが大きな差になる」|賃貸は運用で守れる
被災地派遣・LOとして避難所や生活再建の現場に入ると、住まいの形に関係なく差が出る場面がありました。
それは「自分で決めた運用があるか」です。
・停電でも動ける導線
・家族の連絡・集合ルール
・必要最低限の備えが決まっている
・保険や連絡先がすぐ出せる
元消防職員としても、被害は建物の強さだけで決まらず、生活の準備で差が出ると感じてきました。
賃貸は変えられない部分があるからこそ、変えられる運用に集中すると強いです。
■まとめ|賃貸の防災は「玄関・寝床・動線・保険」を整えると一気に強くなる
賃貸でも防災はできます。
むしろ、設備をいじれない分、家具配置・避難導線・停電対応・連絡手段・保険といった運用が効きます。
玄関と寝床の安全地帯を作り、動線を確保し、借家人賠償や個人賠償で生活再建の揉め事を減らす。
この形にすると、大家任せにせず、自分で守れる範囲が広がります。
結論:
賃貸の防災は「設備」より「運用」。玄関・寝床・動線・保険を整えるだけで、被害と不安は大きく減らせる。
被災地の現場では、豪華な装備より「決まった段取り」がある人ほど崩れにくいと感じました。賃貸でも同じです。直せない家だからこそ、崩れない暮らしを先に作っておきましょう。

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