【防災士が解説】避難所の土足厳禁はなぜ揉める?問題と課題を「衛生」と「動線」で整理する

避難所でよく起きる揉めごとの一つが「土足か、土足禁止か」です。
衛生のために土足厳禁にしたい人と、安全や効率のために土足のままがいい人がぶつかります。

被災地派遣の現場でも、この議論は繰り返し起きました。
正解は一つではありません。大事なのは、避難所の状況に合わせて“衛生と安全の両立”を設計することです。

この記事では、土足厳禁をめぐる問題と課題を整理し、現実的な落としどころを考えます。


■① 土足厳禁が求められる理由

土足厳禁にしたい理由は明確です。

・泥や汚れで衛生が崩れる
・床が汚れると生活がしにくい
・感染症リスクが上がる
・寝具や衣類が汚れる

避難所は生活の場なので、床の清潔さはストレスと体調に直結します。
特に長期化すると、衛生が崩れた避難所ほど体調不良が増えます。


■② 土足のままが必要になる理由

一方で、土足のままにしたい理由も現実的です。

・ガラス片や釘で足を切る危険
・余震で急に避難が必要になる
・夜間の移動で転倒しやすい
・介助や搬送でスピードが必要
・靴の管理ができず紛失する

被災地派遣でも、靴を脱いだことで足を怪我したり、靴がなくなって外に出られなくなる例がありました。
安全の視点は無視できません。


■③ 問題の本質は「衛生」か「安全」かではなく両方

土足厳禁の議論は二択に見えますが、本質は二つを両立する設計です。

・清潔で生活が回ること
・足を守り、すぐ動けること

避難所は「命をつなぐ」場所です。
衛生が崩れても、安全が崩れても、どちらも災害関連死のリスクを上げます。


■④ 課題は玄関が詰まることと、動線が崩れること

土足厳禁を導入すると起きやすい課題はここです。

・靴の脱ぎ履きで入口が詰まる
・靴が混ざって取り違える
・スリッパが不足する
・雨天で床が濡れて滑る
・通路が泥で汚れる

運用がないと、土足厳禁がストレスを増やします。
入口の設計が鍵になります。


■⑤ 現実的な落としどころは「ゾーニング」

現場で有効だったのは、避難所をゾーンで分ける考え方です。

・生活スペースは土足禁止
・通路や搬送動線は土足可
・トイレや出入口周辺は土足可
・更衣や授乳などは清潔ゾーン

全域を同じルールにしないことで、衛生と安全を両立できます。
これは避難所運営のストレスを減らします。


■⑥ 土足禁止にするなら必須の備え

土足禁止を採用する場合、最低限これが必要です。

・玄関マットや段差対策
・靴の保管ルール(袋・番号)
・室内用の履物(スリッパ等)
・床清掃の担当と頻度
・夜間照明の確保

被災地派遣でも、履物が不足すると不満が一気に増えました。
ルールより、物と運用が先です。


■⑦ 家庭側でできる準備が避難所トラブルを減らす

家庭側でできる備えもあります。

・玄関に予備靴を置く
・室内履き(軽い靴)を準備する
・靴袋を用意する
・足を守れるスリッパを持つ

避難所は混乱します。
自分の足を守る準備は、自分と家族を守ります。


■⑧ 今日からできる最小行動

今日からできるのは次の3つです。

・避難所が土足かどうかを確認する
・室内履きを一つ準備する
・靴袋を用意する

これだけで、避難所での困りごとが減ります。


■まとめ|土足厳禁は「衛生」と「安全」をゾーニングで両立させる

避難所の土足厳禁は、衛生を守る一方で、足の怪我や急な避難への対応など安全面の課題もあります。
二択で決めるより、生活スペースと動線を分けるゾーニングが現実的です。
ルールより先に、履物・靴管理・清掃・照明など運用を整えることが重要です。

結論:
避難所の土足厳禁は「衛生のため」だけで決めず、ゾーニングと運用で安全も両立させるほど、避難生活が崩れにくくなる。
被災地派遣の現場で実感したのは、床の清潔さと足の安全を両立できた避難所ほど落ち着きがあり、体調不良も少ないということです。
防災士として、土足問題はルール論ではなく“生活が回る設計”として扱うべきだと考えています。

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