低学年の防災授業では、いきなり難しい知識や避難行動の理由を長く説明しても、なかなか入りにくいことがあります。
そのため、導入として使いやすいのが防災絵本です。
ただ、読み聞かせをしただけで終わると、「楽しかった」「こわかった」で止まりやすく、授業としては少し弱くなることもあります。
結論から言えば、低学年向けの防災絵本は、“読むこと”より、“読んだあとに子どもが一つ行動を言えるか”で活用する方が失敗しにくいです。
絵本は、防災知識を細かく教える教材というより、災害を自分ごととして感じる入口に向いています。
だから授業では、物語そのものを味わうだけでなく、「じゃあ自分ならどうする?」へつなげる使い方が大切です。
元消防職員として現場感覚で言えば、低学年の防災教育で本当に残るのは、正しい用語を覚えることより、危ない時に最初の一歩を選べることです。
防災絵本は、その一歩をやわらかく作れる教材としてかなり強いです。
■① まず重視したいのは「知識量」より「場面が想像できるか」
低学年向けの防災絵本で最初に見たいのは、情報量の多さではありません。
大切なのは、子どもが場面を想像しやすいかです。
たとえば、
・地震が来たら教室でどうなるのか
・大雨の時に外ではどんな危険があるのか
・火事の時にどう動くのか
・避難所や避難生活がどんな感じか
こうしたことが、絵や物語を通して見えやすい絵本は授業に入りやすいです。
防災士として見ても、低学年では「知っている」より「思い浮かべられる」方が大事です。
だから防災絵本は、説明が多い本より、場面がはっきり見える本の方が使いやすいです。
■② 低学年では“怖がらせすぎない”絵本の方が授業に残りやすい
防災を扱う以上、危険を伝えることは大切です。
ただ、低学年では強い被害描写や不安をあおりすぎる内容だと、怖さだけが残ることがあります。
そのため、授業で使うなら、怖さを伝えることより、守れる行動が入っている絵本の方が向いています。
たとえば、
・机の下に入る
・頭を守る
・大人の話を聞く
・水の近くに行かない
・避難するときは押さない
といった行動が自然に入っているものです。
元消防職員としての感覚でも、低学年に必要なのは「災害は怖い」で終わることではなく、怖い時でも何かできるという感覚です。
防災絵本も、その感覚を残せるかで選ぶと失敗しにくいです。
■③ 良い授業活用は「読み聞かせだけ」で終わらない
防災絵本を授業で使う時によくあるのが、読み聞かせだけで時間が終わる形です。
もちろん絵本を静かに味わう時間も大切です。
ただ、防災授業として強くするなら、読み終わったあとに一つだけでも活動を入れた方がいいです。
たとえば、
・どこが危なかったかを一つ言う
・主人公はどうして助かったのか話す
・自分なら何をするかを一つ書く
・教室の中で危ない場所を探す
・先生と一緒に避難の動きを一つやってみる
このように、絵本→ことば→行動の流れができると、かなり授業になります。
■④ 学級開きや新年度の導入にも防災絵本は使いやすい
新年度は、避難訓練の前に「学校で安全に過ごす」ことの土台を作る時期でもあります。
そのため、防災絵本は防災週間だけでなく、学級づくりの導入にも使いやすいです。
たとえば、
・学校では放送を聞くことが大事
・困った時は先生に伝える
・みんなで落ち着いて動く
・教室にも危ない場所がある
こうしたことは、生活指導と防災教育の両方にまたがっています。
絵本を入口にすると、説教っぽくならずに自然に入れやすいです。
防災士として見ても、低学年の防災教育は「特別な時間」だけでやるより、学校生活のルールとつなげる方が現実的です。
防災絵本は、その橋渡しにかなり向いています。
■⑤ 絵本選びでは「授業後に何をさせるか」を先に決めると失敗しにくい
絵本を先に選んでから授業を考えると、内容が広がりすぎることがあります。
そのため実際には、先に
・危ない場所に気づかせたい
・地震時の最初の動きを確認したい
・大雨の時の行動を考えさせたい
・家族と話すきっかけを作りたい
など、授業後に何をさせたいかを決める方がやりやすいです。
その目的に合う絵本を選ぶと、授業がぶれにくくなります。
元消防職員として感じるのは、防災教育で本当に大切なのは教材の豪華さではなく、授業の終わりに子どもが一つ行動を持ち帰れるかです。
防災絵本もその基準で選ぶと、かなり実践的になります。
■⑥ 現場経験を入れるなら“怖い話”より“助かった行動”を短く添える
絵本のあとに現場経験を入れる時は、強い災害体験を長く話すより、
・早く机の下に入れた子は動きやすい
・危ない場所を知っていると落ち着きやすい
・大人の声を聞けると助かりやすい
・水の近くへ近づかないことが大事
といった、助かった行動を短く添える方が低学年には入りやすいです。
被災地派遣やLOの経験でも感じたのは、小さな子どもに残るのは大きな理屈より、短い行動の型です。
防災絵本の読み聞かせ後も、その型を一つ残すようにすると授業として強くなります。
■⑦ よくある失敗は「絵本=やさしい教材」と思い込みすぎること
絵本はやさしく見えますが、使い方によっては浅い授業にもなりやすいです。
ただ読むだけ、感想を聞くだけだと、防災の行動にはつながりにくいことがあります。
逆に、絵本の一場面を使って
・どこが危なかった?
・どうしてその行動が大事?
・じゃあ学校ではどうする?
と一つ深めるだけで、かなり授業になります。
つまり、防災絵本は“簡単な教材”というより、入口として強い教材です。
入口だからこそ、その先の一歩を教師側が準備しておくことが大切です。
■⑧ まとめ
低学年向けの防災絵本は、読み聞かせそのものを目的にするより、読んだあとに「自分ならどうするか」を一つ言える授業にすると実践的です。
場面が想像しやすく、怖がらせすぎず、守れる行動が自然に入っている絵本の方が使いやすいです。
さらに、読み聞かせの後に、危ない場所を探す、言葉にする、少し動いてみる、といった活動を一つ入れると、防災教育としてかなり強くなります。
元消防職員として強く言えるのは、低学年の防災教育で本当に残るのは、難しい知識ではなく、いざという時の最初の一歩です。
迷ったら、まずは一冊の絵本から、そして一つの行動へ。
その使い方が、防災絵本を授業で生かす一番現実的な方法です。
出典:内閣府「防災絵本を見る」

コメント