【防災士が解説】防災行政無線とは?聞こえない前提で命を守る「受け取り方」と家庭の備え

防災行政無線は、災害時に自治体から住民へ一斉に情報を届けるための基盤です。停電や通信混雑が起きても「地域で最後まで残る情報手段」になり得る一方、屋外スピーカーは天候や地形、生活騒音で聞こえにくいこともあります。だからこそ、防災行政無線は“聞こえるかどうか”ではなく、“聞こえない時にどうするか”まで含めて備えるのが現実的です。


■① 防災行政無線とは何か(住民に届く自治体の一斉放送)

防災行政無線は、自治体が災害情報や避難情報などを、地域に一斉に放送・配信するための仕組みです。代表的な届け方は、屋外スピーカー放送と、屋内で受け取る戸別受信機です。情報の中身は、避難指示、避難所開設、津波・土砂災害の警戒、火災や行方不明情報など、地域の安全に直結するものが中心になります。


■② 屋外スピーカーと戸別受信機(届き方の違い)

屋外スピーカーは、屋外にいる住民や広い範囲へ同時に知らせるのに強い一方で、雨風・窓の遮音・交通騒音・地形の影響を受けやすいという弱点があります。
一方、戸別受信機は屋内でも聞き取りやすく、特に高齢者世帯や山間部、海沿いなど「聞こえにくい条件」がある地域で重要性が高まります。自治体によって貸与・購入・設置支援の運用が異なるため、自分の地域の制度を把握しておくことが実務的です。


■③ 「聞こえない」は起こる(だから“二重化”が必要)

防災行政無線は重要ですが、現実には聞こえない場面が必ずあります。
・屋内で窓を閉めている
・風雨が強い
・周囲の生活騒音が大きい
・地形や建物で音が遮られる
この前提に立つと、必要なのは「無線を信じない」ではなく、「無線に加えて別の受信手段を持つ」ことです。スマホの緊急速報、自治体メール、ラジオなどで情報を重ねるほど、取り残されにくくなります。


■④ 災害時に強い理由(通信が混むほど価値が出る)

大きな災害ほど、電話やSNS、回線が混雑して「見たい情報が見られない」状態が起きます。防災行政無線は、地域全体に同時に伝える仕組みとして、こうした混雑時に価値が出ます。特に避難情報は、個別連絡よりも一斉伝達が速く、地域の動きを揃えられる利点があります。


■⑤ 戸別受信機が効く世帯(要配慮者の“情報格差”を埋める)

災害で危険が増えるのは、情報を受け取れない人です。
・高齢者のみ世帯
・聴覚に不安がある
・山間部や沿岸で聞こえにくい
・夜間、屋内で気づきにくい
こうした条件があるほど、戸別受信機の価値が高まります。防災行政無線の整備は、地域全体の安全だけでなく、要配慮者の情報格差を埋める意味があります。


■⑥ 被災地派遣(LO)で見た「情報が届かない人ほど動けない」現実

被災地派遣(LO)の現場で強く感じたのは、情報が届かない人ほど判断が遅れ、結果として危険に残りやすいということです。避難所の開設場所が変わっても知らない、給水の時間が変わっても知らない、危険区域の拡大に気づけない。こうした“情報格差”が、生活と安全をじわじわ削っていきます。防災行政無線は、その格差を小さくするための重要な基盤です。


■⑦ 家庭で決めるべき最小ルール(迷いを消す)

聞こえなかった時に備えるルールを、家庭で一つ決めておくと強いです。
・放送が聞こえたら、まず窓を閉めて情報確認(安全確保が先)
・聞こえなかったら、自治体の公式情報(メール・アプリ・HP・ラジオ)を確認
・家族の集合場所と連絡手段を一つに絞る
難しい備えより、「聞こえない時の動き」を決める方が実際に効きます。


■⑧ 今日からできる現実的な対策(無線を“行動”に変える)

・自治体の戸別受信機制度の有無を確認する
・スマホの緊急速報を有効にし、音量と通知設定を見直す
・電池式ラジオとモバイルバッテリーを備える
・自宅で「放送が聞こえる場所/聞こえない場所」を一度だけ確認する
防災行政無線は、聞こえた瞬間に“行動”へ変換できて初めて命を守ります。


■まとめ|防災行政無線は「聞こえない前提」で備えるほど強くなる

防災行政無線は、災害時に自治体から住民へ一斉に情報を届ける地域の基盤です。屋外スピーカーには聞こえにくい場面があるため、戸別受信機やスマホ通知、ラジオなどで受信を二重化し、「聞こえない時の手順」を家庭で決めておくことが現実的です。情報が届く仕組みを整えることは、地域の安全だけでなく、要配慮者の情報格差を埋めることにもつながります。

結論:
防災行政無線は「聞こえるか」より「聞こえない時にどう動くか」が命を守る鍵。受信手段の二重化と、家庭の最小ルールで“迷い”を消すことが最強の備えです。
防災士として、被災地派遣(LO)の現場でも、情報が届かない人ほど動けず、負担が増える現実を見てきました。無線を中心に、情報の穴を埋める備えが、耐災害力を底上げします。

出典:https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/kento213.html

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