【防災士が解説】非適債事業とは?災害対応で“起債できない支出”を現場目線で整理する

災害対応では「今すぐ必要」「やらないと回らない」支出が連続します。
ところが、すべての支出が同じ扱いで財源化できるわけではありません。
自治体の現場でよく出る言葉が「適債」「非適債」です。

非適債事業とは、ざっくり言えば“地方債(借入)で賄えない支出”のことです。
災害時は、非適債の支出が積み上がるほど現場の負担が重くなり、調整が増え、スピードが落ちます。

被災地派遣の現場でも、現場の困りごとは「お金がない」より「使えるお金の形が違う」ことで詰まる場面がありました。
この記事では、非適債事業を住民目線でも分かるように整理し、現場で困りにくい考え方をまとめます。


■① 非適債事業とは何か

非適債事業とは、地方債(起債)を充てられない事業・支出を指します。
起債は、原則として施設整備など“将来にわたり効果が残る資産性のあるもの”に適用される考え方が基本で、消耗品や運営費のような支出は対象外になりやすい傾向があります。

災害時の現場は、この「対象になる支出」と「対象にならない支出」が混ざります。


■② なぜ重要か|非適債が増えるほど現場は回りにくくなる

非適債が重要なのは、現場にこういう影響が出るからです。

・財源の組み立てが難しくなる
・支出の判断が遅れる
・調整と説明が増える
・必要なのに手当てが後回しになる
・現場の疲弊が進む

現場は「必要だから買う」だけで動けません。
財源の形が違うと、スピードが落ちます。


■③ どんな支出が非適債になりやすいか

非適債になりやすいのは、継続的運用や消耗・サービスに近い支出です。

・消耗品(衛生用品、清掃用品など)
・運営費(人件費的なもの、委託の一部)
・短期レンタル
・燃料や日々の維持費
・一時的な対応経費

災害対応では、こうした支出が「命を守る」場面で直撃します。
だからこそ、平時の備えと制度理解が効きます。


■④ 現場で詰まりやすいポイント|“必要性”と“制度上の扱い”は別

災害時に混乱が起きやすいのは、ここです。

・必要性は高い
・でも非適債で財源が組めない
・結果として判断が止まる

現場は「必要だからすぐ買いたい」。
一方で制度は「支出の性格に応じた財源で処理してほしい」。
このズレが、調整コストになります。

解決の方向性は、平時から「非適債になりやすい支出」をリスト化しておき、初動で迷いにくくすることです。


■⑤ 住民目線での理解|非適債は“ムダ”ではなく“回すための費用”も多い

非適債と聞くと、「対象外=不要」と誤解されがちです。
しかし実際には、避難所を回すための費用が多いです。

・トイレ清掃に必要な消耗品
・手指衛生を保つための物資
・暑さ寒さをしのぐための運用物品
・案内表示や照明などの応急対応

設備(適債)だけ整えても、運用(非適債)がなければ避難所は崩れます。
非適債は“生活を回す費用”として重要です。


■⑥ 備え方のコツ|非適債になりやすいものは“平時の備蓄”が効く

非適債になりやすい支出ほど、平時の備蓄が効きます。

・衛生用品(手指衛生、清掃)
・簡易トイレ関連
・照明・電池
・熱中症対策や防寒対策の消耗品
・掲示物、養生、整理資材

「買う」ではなく「備える」。
この発想に寄せるほど、初動の混乱が減ります。


■⑦ 被災地派遣で見た現実|運用費が足りないと避難所は簡単に荒れる

被災地派遣の現場で実感したのは、運用費が足りないと避難所は簡単に荒れることです。
設備があっても、清掃用品がない、ゴミ回収が回らない、消毒が行き届かない。
こういう小さな欠けが積み重なると、生活の不快が増え、体調を崩す人が増えます。

LOとして調整に入ったときも、「必要性は分かるが財源の扱いで止まる」場面は現実に起きます。
非適債を理解しているだけで、初動の詰まりを減らせます。


■⑧ 今日からできる最小行動(自治体・地域・住民)

・自治体は非適債になりやすい支出の“初動リスト”を作る
・避難所運営に必要な消耗品を平時に備蓄・更新する
・調達ルート(地元事業者、協定)を整える
・地域は清掃・衛生の役割分担を訓練で確認する
・家庭もトイレ・衛生・照明の消耗品を厚めに備える


■まとめ|非適債事業は“起債できない支出”。運用を回す費用として重要

非適債事業とは、地方債(起債)を充てられない性格の支出を指します。
災害対応では、設備整備だけでなく、避難所を回すための消耗品や運用費が不可欠で、そこに非適債が多く含まれます。
非適債を理解し、平時の備蓄と初動リスト化で迷いを減らすことが、現場のスピードと住民の健康を守ります。

結論:
非適債事業は「不要」ではなく、災害対応を回すために不可欠な運用支出が多い。平時の備蓄と初動の整理で“詰まり”を減らすことが重要である。
防災士として被災地派遣で見てきた実感では、運用の小さな欠けが避難所の荒れにつながります。非適債の理解は、現場を止めないための知識です。

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