政治の演説は一見、防災と関係が薄く見えます。しかし、防災は「避難の仕方」だけではありません。道路・港・電力・通信・医療・物流・財政。社会の土台が強いほど、災害時に生活は崩れにくくなります。逆に、土台が弱いと災害は長引き、復旧の遅れが家庭の負担を増やします。
被災地派遣やLOとして現場に入った時に感じたのは、災害対応は“気合い”では回らないという現実です。燃料、資材、人員、宿泊、通信、調達。どれか一つが詰まると、支援も復旧も止まりやすい。だからこそ、国の方針に出てくる「強さ」「強靭化」という言葉は、政治スローガンとしてだけでなく、生活防災の土台として捉える価値があります。
■① 演説のキーワード「強さ」は、防災で言えば“壊れにくさ”
施政方針演説では「強い経済」や政策推進の姿勢が前面に出ました。防災の言葉に置き換えると、「壊れにくい社会」「復旧が早い社会」を目指す話に近いです。
- 経済が強い=復旧に必要な人・モノ・金が回りやすい
- 安全保障が強い=危機対応の想定が広く、連携・備蓄・訓練が整いやすい
- 社会が強靭=停電・断水・道路寸断が起きても生活が立て直しやすい
家庭の防災も同じで、“強さ”とは勇ましさではなく、日常が壊れにくい設計です。
■② 「強い経済」は、災害の“長期戦”に効く
災害は、発災直後の72時間だけでは終わりません。むしろ効いてくるのは、その後の数週間〜数か月の生活です。
被災地では、復旧が遅れると次の問題が連鎖します。
- 仕事が止まる → 収入が落ちる
- 物価が上がる → 家計が削れる
- 医療や介護の負担が増える → 家庭が疲弊する
だから、経済政策の議論は「家計防災」に直結します。防災で言う“耐災害力”は、体・心だけでなく、お金と生活基盤も含みます。
■③ 安保・危機管理の強化は「想定外を減らす」方向に働く
安全保障や危機管理の議論は、戦争だけの話ではありません。災害・感染症・サイバー障害・物流遮断など、現代の危機は重なって起きます。
元消防職員として現場感覚で言うと、危機対応の質を上げる鍵は「連携」と「想定」です。
- どこが指揮を取るか
- 情報共有の線があるか
- 代替手段(電源・通信・輸送)が用意されているか
演説でにじむ「自信」や「推進力」は、制度面の整備が進むと、結果的に災害対応のスピードや復旧力にも影響します。
■④ 「市場への配慮」は、防災で言えば“混乱を増幅させない”という視点
災害時に一番怖いのは、被害そのものに加えて「不安が増幅して混乱が広がる」ことです。市場や社会心理は、平時も非常時も似た動きをします。
- 情報が曖昧だと、憶測が増える
- 不安が増えると、買い占めやデマが起きる
- 混乱が増えると、本当に必要な人に届かなくなる
だからこそ、政策の説明が具体化し、指標や方針が明確になるほど、社会全体の“揺れ”は小さくなる方向に働きます。防災も同じで、家族ルールが決まっているほど迷いが減ります。
■⑤ 「共生への配慮」は、避難所・地域防災の現場で確実に効く
多文化共生や外国人支援は、災害現場では理想論ではありません。避難所では、言語・生活習慣・情報理解の差が、そのまま安全格差になります。
被災地派遣で見た現実として、次の場面で差が出ます。
- 避難情報が読めない/聞けない
- ルールが伝わらず、トラブルが起きる
- 受診や支援制度につながれない
共生の整備は、災害時の「取り残される人を減らす」ことにつながります。地域の安全度を上げる政策として見ても意味があります。
■⑥ 迷ったらこの判断:国の「強靭化」と家庭の備えは“同時進行”が最強
国が強くなるのを待ってから備えるのでは遅いし、家庭だけで全てを抱えるのも無理があります。
防災の現実解はこれです。
- 国・自治体:インフラと制度を強靭化する
- 家庭:72時間〜1週間の自力を確保する
- 地域:助け合いが回る関係性を作る
三層が揃うと、災害が起きても暮らしが壊れにくくなります。
■⑦ やらなくていい防災:政治の言葉に振り回されて不安を増やさない
政治ニュースは情報量が多く、感情が揺れやすい分野です。ですが、防災は「不安を増やす」より「判断を軽くする」方が強いです。
- すべてを追わない
- 生活に関係する部分だけ拾う
- 最終的に家庭の行動へ落とす
これが、長く続く防災のコツです。
■⑧ 今日できる最小行動:演説を“家庭の強靭化”に翻訳する
今日できることは小さくてOKです。
- 「強い経済」→ 家計の固定費を見直す(通信・保険・サブスク)
- 「安保・危機」→ 連絡手段の冗長化(家族集合ルール+モバイル電源)
- 「共生」→ 避難所で困る人の想定(高齢者・子ども・外国人・ペット)を家族で話す
- 「強靭化」→ 水・電源・衛生の3点だけ、今日1つ補強する
国の方針を、家庭の行動に翻訳できた瞬間に、防災は一段強くなります。
まとめ
施政方針演説の「強さ」は、政治のスローガンとして見るだけでなく、防災の言葉で言えば“壊れにくさ(強靭性)”として読み替えると価値が出ます。経済の強さは復旧の速さに、安保・危機管理は想定外の減少に、共生への配慮は避難の安全格差の縮小に、それぞれつながります。
結論:
国が強くなるほど災害に強くなる。だからこそ、家庭は“待たずに”小さく備えを進める。これが一番壊れにくい防災です。
出典
テレビ朝日「“成長のスイッチを押して、押して…” 高市総理が連呼 初の施政方針演説」(2026年2月20日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000486658.html

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