災害ボランティアから帰ってきたあと、
「なぜか眠れない」
「疲れているはずなのに頭が休まらない」
「もう1か月近いのに、まだ引きずっている」
と感じる人は少なくありません。
結論から言えば、帰還後1か月たっても不眠が続くなら、“気のせい”や“気合い不足”で片づけない方がいいです。
災害支援に関わった人には、被災者だけでなく支援者にも強いストレス反応が出ることがあります。
消防庁は、災害救援者に起こり得る反応として、不眠、悪夢、集中力低下、侵入症状、フラッシュバック、いら立ちなどを挙げています。
また、厚生労働省の資料でも、PTSDの診断に至らない段階であっても、PTSD症状が認められる場合には段階的な支援が推奨されるとされています。
防災士として率直に言えば、支援の現場では
「自分は助けに行った側だから大丈夫」
と思い込みやすいです。
でも実際は、現場を見て、においを感じて、声を聞いて、無力感や責任感を抱えたまま帰ることがあります。
だからこそ、帰還後1か月の不眠は、かなり大事なサインとして見た方がいいです。
■① まず知っておきたいこと|支援者にもストレス反応は起こる
災害時のこころのケアというと、被災者向けの話だと思われがちです。
でも、日本赤十字社は「こころのケア」活動の目的として、被災者だけでなく救護にあたる援助者もストレスを受けることを明記しています。
つまり、災害ボランティアや支援活動に入った人が、帰還後に眠れなくなったり、気分が不安定になったりするのは、珍しいことではありません。
元消防職員として被災地派遣やLO対応を経験すると強く感じるのは、支援者はその場では気を張って動けても、帰ってから一気に反応が出ることがあるということです。
現場にいる間は役割があるので耐えられても、日常に戻った瞬間に心と体が追いつかなくなることがあります。
■② 早期サイン①|眠れない、寝つけない、途中で何度も起きる
一番分かりやすく、しかも見逃されやすいのが睡眠の変化です。
消防庁の資料でも、惨事ストレスによる身体的反応として不眠が挙げられ、精神的反応として悪夢や入眠困難が示されています。
つまり、
・寝つきが悪い
・夜中に何度も起きる
・寝ても休まった感じがしない
・夢の内容が重い
といった変化は、かなり重要です。
特に「疲れているのに眠れない」は軽く見ない方がいいです。
体ではなく、頭と神経がまだ現場モードから戻っていない可能性があるからです。
■③ 早期サイン②|現場の光景や音が急によみがえる
次に注意したいのが、侵入症状です。
消防庁は、災害のことが意に反して突然よみがえることや、フラッシュバックのように現実のようによみがえることを代表的な反応として挙げています。
たとえば、
・作業中に被災地の場面が急に浮かぶ
・音やにおいで一瞬現場に戻ったようになる
・テレビの災害報道で動悸がする
・似た風景を見ると頭が固まる
こうした反応です。
防災士として言えば、これは「考えすぎ」ではなく、心がまだ整理しきれていないサインです。
特にボランティア後1か月前後でこうした再体験が続くなら、放置しない方がいいです。
■④ 早期サイン③|イライラ、怒りっぽさ、感情の揺れが大きくなる
不眠や悪夢ほど自覚しやすくないのが、感情の変化です。
消防庁の資料では、惨事ストレスの情動的反応としていら立ち、不安、怒り、抑うつなどが挙げられています。
具体的には、
・家族に強く当たる
・小さなことでイライラする
・職場で余裕がなくなる
・普段なら流せることで気持ちが爆発する
こうした変化です。
元消防職員として現場を見ていると、支援後にしんどくなる人は「落ち込む人」だけではありません。
むしろ、怒りや焦りとして表に出る人もいます。
だから「最近、短気になったかも」は、かなり大事なサインです。
■⑤ 早期サイン④|集中できない、頭がぼんやりする、仕事のミスが増える
消防庁は、精神的反応として注意力の減退や集中力の低下も挙げています。
これはかなり現実的で、
・仕事に集中できない
・会話が頭に入らない
・ミスが増える
・何をするにも時間がかかる
という形で出やすいです。
災害ボランティアから帰ったあと、
「疲れが抜けていないだけかな」
と流してしまいがちですが、1か月近く続くなら少し慎重に見た方がいいです。
特に、睡眠の質が落ちている人は、この集中力低下が強く出やすいです。
心の反応と睡眠の乱れはかなりつながっています。
■⑥ 早期サイン⑤|食欲低下、頭痛、動悸など“体の不調”として出る
ここも見逃しやすいです。
消防庁は、惨事ストレスによる身体的反応として頭痛、下痢、発汗、不眠、食欲減退などを挙げています。
つまり、心の不調は心だけで出るとは限りません。
たとえば、
・頭痛が続く
・胃が重い
・食欲が落ちる
・動悸が増える
・下痢や便秘が続く
といった形でも出ます。
防災士として率直に言えば、災害支援後に「体調がずっと微妙」と感じる人は、身体だけでなくストレス反応も一緒に考えた方がいいです。
病院で異常がなくても、そこで終わりにしない方がいい場合があります。
■⑦ “1か月”という節目をどう考えるべきか
ここはかなり大切です。
支援直後に眠れない、気持ちが高ぶる、ぼんやりする、といった反応は、強い出来事のあとの自然な反応として出ることがあります。
ただ、厚生労働省の資料でも、PTSD症状が認められる成人に対しては、診断に至らない場合でも症状の程度に応じた段階的な介入が推奨されています。
つまり、
「PTSDと診断されるかどうか」
を素人判断で決めるより、
1か月たっても生活に影響する症状が続いているか
で見た方が現実的です。
特に、
・眠れない
・仕事に集中できない
・感情が荒れる
・現場がよみがえる
・体調が戻らない
が重なっているなら、早めに相談先を持った方がいいです。
■⑧ 見逃さないための現実的な対処法
帰還後1か月で眠れない時に大切なのは、我慢比べをしないことです。
まずやっておきたいのは、
・睡眠、食欲、気分、集中力の変化をメモする
・一人で抱えず、信頼できる人に共有する
・災害関連の映像を無理に見続けない
・飲酒で無理に寝ようとしない
・必要なら早めに医療や相談窓口につなぐ
ことです。
日本赤十字社も、こころのケア活動は、ストレスの軽減と必要時の専門家への確実な橋渡しが重要だとしています。
つまり、「我慢する」より「つなぐ」が大切です。
■⑨ まとめ
災害ボランティア帰還後1か月で眠れないなら、見逃さない方がいい早期サインがあります。
特に注意したいのは、
・不眠や悪夢
・現場の再体験やフラッシュバック
・イライラや感情の揺れ
・集中力低下
・頭痛や食欲低下などの身体反応
です。
消防庁は、災害救援者や支援者にも惨事ストレス反応が起こり得るとして、不眠、悪夢、集中力低下、フラッシュバック、いら立ちなどを挙げています。
日本赤十字社も、被災者だけでなく援助者もストレスを受けることを明記しています。
つまり、支援後の不眠は「弱さ」ではなく、支援にきちんと向き合った人にも起こり得る現実の反応です。
防災士として強く言えるのは、災害ボランティアのこころの不調は、早く気づいた方が整えやすいということです。
迷ったら、「まだ頑張れるか」ではなく、
この1か月で眠り・感情・集中力・体調が戻っているか
を基準にした方が、ずっと現実的です。

コメント