冬の災害時、もっとも多い死亡原因のひとつが「低体温症」です。
寒さ・濡れ・風の3つがそろうと、わずか数十分で急激に体温が奪われます。
特に停電・避難・車中泊では低体温のリスクが高く、
乳幼児・高齢者・女性・基礎疾患のある人は“命に直結する危険”となります。
今回は、防災士として現場で学んだ
低体温から身を守るための正しい知識と実践策を解説します。
■① 低体温とは?命に関わる状態
通常の体温は36〜37℃ですが、
35℃を下回ると「低体温症」 と診断されます。
体温が下がると以下の症状が進行します。
- 35℃:震え、指先がかじかむ
- 34℃:判断力低下、動作が遅くなる
- 33℃:意識がもうろう、歩けない
- 30℃以下:意識消失、心停止の危険
災害時は暖房が使えず、想像以上に急速に悪化します。
■② 低体温が災害時に多い理由
冬の災害(停電・断水・避難生活)では、
次の要因が重なるためわずか数時間で危険に陥ります。
●① 暖房が使えない
停電で暖房器具が全滅 → 夜間の室温が急低下。
●② 衣類・布団が不足
避難先では毛布が足りず、身体が冷える。
●③ 風と雨(濡れ)で体温が急激に奪われる
濡れた衣類のまま避難すると10倍の速度で体温が奪われる。
●④ 高齢者・子どもは体温調整が弱い
自力で体温を保持できず、短時間で危険域に。
■③ 初期症状(ここを見逃さない)
低体温は初期症状が“静かで気づきにくい”のが特徴です。
以下の症状が出たら危険の始まりです。
- 唇や指先が紫になる
- 震えが止まらない
- 手が動かしにくい
- 言葉がはっきりしない
- 考えがまとまらない
- 歩き方がふらつく
これらは“体温が35℃前後に低下したサイン”です。
■④ 重症化の危険サイン
以下が見られたらすぐ救急対応が必要です。
- 震えが止まった(危険)
- 意識がもうろう
- 返事が遅い
- 体温が34℃以下
- 眠りたがる
- 手足が固くなる
震えが止まるのは「もう体温を作れない危険状態」です。
■⑤ 正しい応急処置(低体温者を温める方法)
低体温の対応は「ゆっくり・確実に温める」のが鉄則。
✔① 風・寒気のない場所へ移動
風が体温を最も奪うため、まず風避けを確保。
✔② 濡れた衣類を脱がす
濡れた服は“体温を奪う冷却材”。
乾いた衣類・タオルに着替えさせる。
✔③ 毛布・寝袋で全身を包む
特に頭部・首・背中・腰を重点的に保温。
✔④ 温かい飲み物(可能なら)
白湯・お茶・スープなど。
※アルコールは絶対禁止(血管が広がり体温が下がる)
✔⑤ カイロは“直接貼らない”
低温やけどの危険があるため、
タオル越しに脇・首・腹・背中に当てる。
■⑥ やってはいけない危険行為
低体温者に対し次の行為は命を危険にさらします。
❌ 熱い風呂に入れる
→ 急激な血圧変動で心停止の危険。
❌ 手足を強くこする
→ 末端の冷えた血液が急に循環し心臓に負担。
❌ いきなりストーブの前に置く
→ 急激に温めるのは逆効果。
❌ アルコールを飲ませる
→ 体温低下を加速させる。
■⑦ 災害時の備蓄で“低体温対策”として最重要な物
冬の被災地で最も役立つ防災用品です。
- アルミブランケット
- 寝袋
- カイロ(貼るタイプ+普通タイプ)
- 体拭きシート
- 防寒帽子・手袋
- レインコート(濡れ防止)
- 濡れた時にすぐ交換できる衣類
- 段ボール(床冷え対策)
アルミブランケットは“わずか80gで体温保持力が非常に高い”ため必携。
■⑧ 子ども・高齢者の特別リスク
●子ども
体表面積が大きく、体温が急激に奪われる。
震えが弱いので気づきにくい。
●高齢者
筋力低下で体温を作れない。
寒さを感じにくく、重症化しやすい。
→ どちらも「周囲の大人が気づくこと」が命を救う。
■まとめ|低体温は“静かに命を奪う”災害リスク
低体温は凍傷だけでなく、心停止まで起こす危険な状態です。
特に冬の災害では、暖房が使えず誰でも短時間で低体温に陥る可能性があります。
結論:
低体温は早期発見・濡れを避け・ゆっくり温めることで命を守れる。
防災士として、避難所で低体温が重症化したケースを見てきました。
「保温」「乾燥」「風避け」の3つを守れば、多くの命が救われます。

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