防災の世界には、長年解消されないジレンマがあります。
それが、
「わかりやすくしたつもり」
「伝えたつもり」
という思い込みです。
情報を出す側と、受け取る側の間には、想像以上に深い溝があります。
■① 「わかりやすくした」は誰目線か
防災情報は、年々整理され、簡素化されています。
・用語を統一した
・レベル表示にした
・文章を短くした
しかしこれは、作る側にとっての分かりやすさです。
住民にとっての分かりやすさとは、
「次に何をすればいいかが即座に分かること」です。
■② 専門家と住民の“理解の基準”は違う
専門家はこう考えます。
・意味が正確
・理論的に正しい
・誤解が生じにくい
一方、住民が求めているのは、
・自分に関係あるか
・今動くべきか
・どこへ行くのか
正確さと行動性は、必ずしも一致しません。
■③ 「伝えた」は「伝わった」ではない
現場でよくあるすれ違いです。
・行政「情報は出しました」
・専門家「説明しました」
・住民「聞いた気はする」
結果、行動が起きていない。
これは誰の怠慢でもなく、
伝達設計そのものの問題です。
■④ 情報は“理解”ではなく“決断”を生むもの
防災情報の目的は、
・理解させること
・納得させること
ではありません。
決断させ、行動させることです。
理解できても、
動かなければ意味がありません。
■⑤ 「行動が起きなかった」ことが答え
情報発信の成否は、ここで判断できます。
・避難者は増えたか
・行動開始は早まったか
・迷いは減ったか
もし動きがなければ、
それは「伝わらなかった」という結果です。
■⑥ なぜ“つもり”が生まれるのか
理由は単純です。
・出した側は努力している
・改善してきた自負がある
・だから伝わったはずと思いたい
しかし、防災は結果主義です。
意図ではなく、行動がすべてです。
■⑦ ジレンマを越える唯一の方法
答えは一つです。
住民の行動を基準に、伝え方を作り直すこと
・避難行動から逆算する
・迷った点を拾い上げる
・現場の声を反映する
これを繰り返すしかありません。
■⑧ 自律型避難がジレンマを縮める
住民が自律的に判断・行動できるようになると、
・情報の細かさに依存しない
・多少分かりにくくても動ける
・周囲に声をかけられる
結果として、
「伝えたつもり」のリスクは小さくなります。
■まとめ|防災情報の評価軸を変える
防災情報は、
・分かりやすいか
・丁寧か
では評価できません。
結論:
行動が起きたかどうかが、唯一の評価基準
防災士として強く感じています。
「つもり」の防災から、
「動いたか」で測る防災へ。
この視点転換が、
次の命を守ります。

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