【防災士が解説】防災×エスタブリッシュメント④|「正しさ」が命を奪う瞬間

これまで、
・安心を配る構造
・責任回避の仕組み
について解説してきました。

今回は、さらに一段深いテーマです。

「正しい行動」が、なぜ災害時に人を危険にさらすのか
この矛盾について整理します。


■① 災害時に求められるのは「正解」ではない

平時の社会では、
・正しい
・ルール通り
・前例がある

これらは美徳です。

しかし災害時に求められるのは、
「生き残るための判断」 です。

この2つは、しばしば一致しません。


■② エスタブリッシュメントが重視する「正しさ」

既存の制度や組織が守ろうとする正しさは、主に次の3つです。

・手順通りであること
・公平であること
・説明できること

これらは社会運営には不可欠です。

ただし、
時間制限のある非常事態 では足かせになります。


■③ 「正しい判断」を待つあいだに起こること

災害現場では、こうした場面が繰り返されます。

・情報が十分でない
・誤報の可能性がある
・正式な発表を待つ

その結果、
・避難が遅れる
・初動を逃す
・逃げるタイミングを失う

「正しさを確認する時間」そのものが、リスクになるのです。


■④ 過去の災害に共通する失敗パターン

多くの災害で、同じ言葉が聞かれます。

・「まさかここまでとは思わなかった」
・「想定を超えていた」
・「指示が出なかった」

これは個人の問題ではありません。

正しい判断を待つ構造 が、集団全体に染み込んでいるのです。


■⑤ 「間違ってもいい判断」は許されにくい

防災で難しいのはここです。

・早く避難して何もなかった
・自主判断で空振りだった

こうした行動は、後から評価されにくい。

一方で、
・遅れて被害が出た
・でもルールは守っていた

こうした行動は、批判されにくい。

この空気が、判断を鈍らせます。


■⑥ 自律型避難は「正解を捨てる行為」

自律型避難とは、
「完璧な正解を探さない」ことです。

・情報が不十分でも動く
・確率で判断する
・最悪を想定して先に動く

これは、間違う可能性を受け入れる行為でもあります。


■⑦ 判断の基準は「安全側かどうか」

災害時の判断基準は、これで十分です。

より安全な側に振れているか

・逃げすぎ → 後で取り戻せる
・逃げ遅れ → 取り戻せない

この非対称性を理解することが重要です。


■⑧ 組織の正しさと個人の正しさは違う

組織は、
・説明責任
・再現性
・公平性

を背負います。

個人は、
・命
・家族
・時間

を背負っています。

同じ「正しさ」を求める必要はありません。


■⑨ 「正しい人」ほど危険になる場面

皮肉ですが、
・ルールをよく知っている人
・指示を守る人
・真面目な人

ほど、避難が遅れるケースがあります。

それだけ、エスタブリッシュメントに適応しているからです。


■⑩ 防災で必要なのは勇気

防災において必要なのは、

・完璧な知識
・最新の情報

よりも、

「正しくなくても動く勇気」 です。

間違ってもいい。
空振りでもいい。

生きていれば、修正できます。

制度を理解しつつ、
正しさに縛られすぎない。

それが、自律型避難の核心です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました