寒さが厳しくなる冬は、重ね着や厚手の衣服で過ごす時間が増えます。しかし、その日常の服装が、家庭内で命に関わる事故につながることがあります。それが「着衣着火」です。統計データと事故の特徴を踏まえ、現場視点で整理します。
■① 着衣着火とは何か
着衣着火とは、ガスコンロやストーブ、たき火などの炎が衣服に燃え移り、そのまま燃え広がる事故を指します。住宅火災とは異なり、本人の身体が直接炎に包まれるため、重篤な被害につながりやすい特徴があります。
■② 死者数から見える深刻さ
消防庁の統計によると、直近5年間で着衣着火による死者数は487人に上っています。これは一過性の事故ではなく、毎年繰り返し起きている現実的なリスクであることを示しています。
■③ 「炊事中」が多い理由
着衣着火が発生する場面として、「たき火中」に次いで多いのが「炊事中」です。調理中は火に近づく時間が長く、無意識にコンロの奥へ手を伸ばす動作が増えるため、衣服が炎に接近しやすくなります。
■④ 冬場に危険性が高まる要因
冬は重ね着によって衣服が厚くなり、火が付いても気づくのが遅れがちになります。また、毛羽立った衣服では、わずかな炎でも一気に燃え広がる「表面フラッシュ現象」が起きやすくなります。
■⑤ ガスコンロ周辺の注意点
ガスコンロの炎は、目に見える部分だけでなく周囲にも広がっています。マフラーや袖が広がる服、ひも付きの衣服は、知らないうちに火元へ近づきやすく、着衣着火の原因になります。
■⑥ グリル使用時の見落としがちな危険
魚焼きグリルの汚れを放置したまま使用したり、水を入れずに点火すると、内部の油汚れに引火し、炎が吹き出す事故が起きています。アルミ箔を敷いたまま脂の多い食材を調理することも危険です。
■⑦ 誤使用・不注意が事故を招く
ガスコンロ事故の多くは、機器の故障ではなく「誤使用」や「不注意」が原因です。火を使う場面では、その場を離れない、汚れを放置しないといった基本行動が事故防止につながります。
■⑧ 現場経験から伝えたい視点
実際の火災現場では、「いつもの台所」「慣れた動作」が大きな事故につながるケースを何度も見てきました。着衣着火は特別な人に起きる事故ではなく、誰にでも起こり得る身近な危険です。
■まとめ|冬の炊事は服装と距離が命を守る
冬場の炊事は、火との距離と服装への意識が生死を分けます。寒さ対策と安全対策は、必ずセットで考える必要があります。
結論:
着衣着火は「炊事中」に多く、冬の厚着がリスクを高めます。火に近づきすぎない意識と正しい使用が命を守ります。
元消防職員として、台所では一歩引いた行動を常に意識することが最も確実な減災だと感じています。
■出典
・独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)

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