【元消防職員・防災士が解説】防災×トイレカー|能登半島地震が示した“命をつなぐ衛生インフラ”

防災

災害で最初に崩れる生活基盤は何か。

水でも電気でもない。

多くの現場で最初に限界を迎えるのは
「トイレ」です。

2024年の令和6年能登半島地震でも、発災1~2日でいわゆる“トイレパニック”が発生しました。

断水。
下水機能停止。
清掃が追いつかない。

そして起きるのが、

・排泄の我慢
・水分摂取の抑制
・脱水
・感染症拡大
・車中泊への回帰

これは誇張ではなく、実際に報告された事実です。


■① なぜトイレは「命の問題」になるのか

災害関連死の多くは、直接死ではありません。

避難生活の悪化による二次被害です。

トイレ環境が崩れると、

・高齢者が水を飲まなくなる
・排尿回数を減らそうとする
・動かなくなる
・血栓リスクが高まる

結果として、エコノミークラス症候群や感染症、体調悪化へつながります。

能登でも、水不足と衛生環境の悪化が長期化し、
「トイレが使えないから車に戻る」という高齢者が出ました。

私は被災地派遣の現場で、
“トイレの質”が避難所滞在率を左右する瞬間を何度も見ています。

トイレは単なる設備ではありません。

生存率を左右するインフラです。


■② トイレカーとは何か

トイレカーは、

・水洗式
・手洗い設備付き
・バリアフリー対応
・女性専用区画あり

などを備えた自走式の移動型トイレです。

輪島市や七尾市でも実際に配備され、避難所で即時稼働しました。

強みは3つあります。

① 即応性(走ってくる)
② 衛生性(清掃・管理しやすい)
③ 尊厳確保(プライバシー・安全性)

特に女性や高齢者にとって、
「安心して使えるトイレ」は心理的安定に直結します。

避難所の空気は、トイレで決まる。

これは現場の実感です。


■③ 能登半島地震が示した課題

しかし課題も明確です。

・配備台数が足りない
・燃料・給水確保が必要
・自治体の運用訓練不足

設備はあっても、
運用できなければ意味がありません。

内閣府も、ハイブリッド型の備え
(トイレカー+携帯トイレ+マンホールトイレ)を推奨しています。

「ある」よりも
「使える」が重要です。


■④ 自治体がやるべきこと

・地域防災計画へ明記
・広域応援協定の締結
・平時イベントでの実動訓練
・給水・燃料体制の確保

トイレカーは“車両”ではなく、
衛生戦略の一部として組み込む必要があります。


■⑤ 個人がやるべきこと

トイレカーが来るまでの時間を考えてください。

最低でも、

1人あたり
1日5回 × 7日分

= 35回分の携帯トイレ備蓄が目安です。

これは標準的な推奨量です。

トイレは「最後に考える備え」ではありません。

最初に整える防災です。


■⑥ 結論

・能登半島地震でトイレ危機は現実化した
・排泄問題は命に直結する
・トイレカーは移動する衛生インフラ
・尊厳確保は関連死防止につながる
・設備より運用力が鍵

私は元消防職員として断言します。

トイレを軽視する防災は、必ず破綻します。

命を守る。
そして命をつなぐ。

その起点は――
清潔で安心できるトイレ環境です。


【出典】
内閣府 防災情報ポータル
https://www.bousai.go.jp/

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