企業防災はいま、大きな転換点にあります。
これまでの中心は「備蓄すること」でした。
しかし今、求められているのは――
備蓄を“回せる”組織かどうか。
2026年2月25日から名古屋で開催される
「オフィス防災EXPO」は、その象徴的な展示会です。
元消防職員・防災士の視点から、
企業防災がなぜ“運用フェーズ”へ移行しているのかを解説します。
■① なぜ今「オフィス防災」なのか
企業には、自宅と違う構造的な課題があります。
社員は勤務場所を選べない。
つまり――
職場の安全は企業の責任です。
大規模災害時には
・帰宅困難者の滞留
・数日間の社内待機
・交通麻痺
・物流停止
が現実に起きます。
会社が止まれば、
取引先も止まり、社会も止まります。
だからこそBCP(事業継続計画)は
単なる書類ではなく「生きた運用」が必要です。
■② 現実:備蓄しても“回っていない”企業が多い
調査では、
・3日分以上の備蓄がある企業は約5割
・備蓄していても点検・更新が不十分な企業が約6割
という実態が示されています。
よくある失敗は、
・期限切れ
・在庫の所在不明
・配布手順が決まっていない
・誰が責任者か曖昧
「備えた=安心」ではありません。
回らなければ意味がない。
■③ 被災地で見た“備蓄の落とし穴”
被災地派遣(LO)で企業支援に入った際、
倉庫いっぱいの備蓄があるのに、
鍵の場所が分からない。
担当者が出勤できない。
配布方法が決まっていない。
というケースを実際に見ました。
物はある。
でも回らない。
この差が、
社員の不安を増幅させます。
■④ 最新技術が解決する「運用負荷」
今回の展示会では、
・A4サイズ備蓄用品(省スペース管理)
・女性視点の防災用品(フェムテック対応)
・衛星通信による非常時通信確保
・簡易設置型タイヤチェーン
などが紹介されます。
共通点は、
“現場の負担を減らす設計”
です。
防災DXの本質は、
「高度化」ではなく「簡素化」。
誰でも回せる仕組みが強い。
■⑤ 衛星通信が意味するもの
災害時に通信が止まると、
企業は意思決定ができません。
衛星通信は“つなぎ役”です。
地上回線が止まっても、
・安否確認
・本部連絡
・顧客対応
を維持できます。
元消防職員として断言します。
情報が止まることが、最大の混乱を生む。
■⑥ 南海トラフ対策と企業責任
南海トラフ巨大地震が想定される中部圏では、
長期停電
物流停止
インフラ遮断
が現実的シナリオです。
名古屋大学や京都大学の専門家が
セミナーで講演するのも、
“知識”と“実装”をつなぐため。
BCPは理論だけでは機能しません。
■⑦ 行政が言いにくい本音
行政支援は万能ではありません。
発災直後、
企業は自力対応が基本です。
72時間は“自助”。
企業も同じ。
だからこそ、
・備蓄
・通信
・責任体制
・訓練
を「運用前提」で設計する必要があります。
■⑧ 今日できる企業防災アクション
まずはこれだけでいい。
・備蓄期限を確認する
・配布手順を文書化する
・責任者を明確にする
・帰宅困難シナリオを1回想定する
物よりも、
流れを整えること。
■まとめ|企業防災は“回してこそ防災”
防災は“置く”ものではありません。
回すものです。
オフィス防災EXPOが示しているのは、
備蓄から運用へ。
形から機能へ。
元消防職員として最後に伝えたい。
「準備している」は安心材料にならない。
回る仕組みだけが命を守る。
企業防災の本質は、
社員の命と社会機能を止めないこと。
その一歩は、
倉庫の在庫確認から始まります。
■出典
RX Japan合同会社「【名古屋】オフィス防災EXPO」開催情報(2026年2月)

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