はじめに
台風(海外ではハリケーン級の暴風雨)が近づくと、危険なのは「雨」よりも判断の遅れです。
避難は早すぎて困ることは少なく、遅れるほど一気に選択肢が消えます。
私は元消防職員として、風水害時の現場対応や避難所の動き、被災地派遣(LO)での状況把握にも関わってきました。
そこで繰り返し見たのは――
- 「朝まで様子を見る」で夜に一気に詰む
- 避難開始が遅れて渋滞と冠水に巻き込まれる
- 家の中にいても“外より危ない状態”になる
この記事では、台風接近中に迷わないための「避難判断の基準」を、家庭向けに分かる形で整理します。
■① 結論|台風の避難判断は「場所×時間×人」で決める
避難するかどうかは、気合ではなく条件で決めます。
判断に使うのは3つだけです。
- 場所:浸水・土砂・高潮のリスクがあるか
- 時間:暗くなる前に動けるか(夜間は危険が増える)
- 人:高齢者・子ども・持病など要配慮者がいるか
この3つで「今動くべきか」が決まります。
■② 台風の本当の怖さ|雨より“風と停電と夜”が人を詰ませる
台風は「雨がすごい日」ではありません。
現場で生活が壊れるのは、次が重なったときです。
- 強風で窓・屋根・飛来物が危険化
- 停電で情報・照明・冷蔵・充電が止まる
- 夜間に避難が必要になり、移動が一気に危険化
つまり、危険は“後から”増えます。
だからこそ、判断は早めが基本です。
■③ 「避難しない方が危ない家」チェック|土砂と浸水は性質が違う
台風の避難判断で最重要なのは、自宅のリスクを分けることです。
土砂災害リスク(山・崖・谷が近い)
- 逃げ遅れが致命的になりやすい
- 早め避難が基本(夜は特に危険)
浸水リスク(川・低地・アンダーパス・排水が弱い地域)
- “車で動けなくなる”リスクが高い
- 避難のタイミングを逃すと道路が詰む
同じ「風水害」でも、詰み方が違います。
ハザードマップで「土砂」と「浸水」を分けて見てください。
■④ 避難の決断を早める“合図”|警報より先に動いていい
避難情報を待つと遅れることがあります。
次の合図が出たら、避難準備ではなく「避難開始」に寄せてOKです。
- 風が強くなって窓が鳴る(飛来物リスクが上がる)
- 雨脚が一定以上で続く(排水が追いつかない)
- 近所の側溝があふれ始める(道路冠水の前兆)
- 川の水位が短時間で上がる(増水スピードが危険)
- 土の匂い・濁り水・小石が落ちる(斜面の異常)
「様子を見る」ほど、移動が危険になります。
■⑤ 車で避難する?しない?|台風は“車が罠”になる場面がある
台風避難で車を使うかは、条件で決めます。
車が有利になりやすい
- 風が強くなる前(暗くなる前)に出られる
- 道が冠水していない
- 家族に要配慮者がいて移動が必要
- 避難所までのルートが明確
車が危険になりやすい(徒歩・垂直避難も検討)
- アンダーパスや低地を通る
- 川沿い・用水路沿いを通る
- すでに渋滞が始まっている
- 風が強くなってハンドルが取られる
- 夜間で水たまりの深さが見えない
台風は「車で逃げれば安心」ではありません。
最悪は、冠水で車が止まり、外に出られず詰みます。
■⑥ 避難所に行く前に“最低限”やること|到着後に詰まない準備
避難所で困るのは「着いてから」です。
最低限これだけ揃えれば、耐えられます。
- 水(飲む分+薬用)
- すぐ食べられる食料(加熱不要)
- ライト(両手が空くものが強い)
- 充電(モバイルバッテリー)
- 防寒/防水(雨具・タオル・着替え)
- 体温調整(冷え対策)
- 子ども・高齢者の必需品(薬、補助具)
持ち物は完璧を狙わず「止まった生活を回す最小セット」に寄せます。
■⑦ 被災地派遣(LO)で見た“逃げ遅れパターン”|家が安全だと思い込みやすい
被災地派遣(LO)で繰り返し見たのは、逃げ遅れの共通パターンです。
- 「ここは大丈夫」と言い切って準備しない
- 夜になってから避難を決める
- 車で動こうとして渋滞・冠水に巻き込まれる
- 停電で情報が途切れ、判断がさらに遅れる
台風は地震と違い、近づく時間があるのに動けないことが多い。
つまり、準備できるのに逃げ遅れる災害です。
■⑧ やらなくていい防災|台風接近中に“やるほど危ない行動”がある
台風の前後は、善意が事故になります。
- 田んぼ・川を見に行く
- 屋根に上る
- 強風下で外の片付けをする
- 停電後にロウソクを多用する(火災リスク)
- 雨の中で車を動かし続ける(視界不良+冠水)
「確認」「片付け」は落ち着いてからで十分です。
■⑨ 今日の最小行動|避難判断を“自分ルール”にして迷いを消す
台風は迷うほど遅れます。
今日やる最小行動はこの3つです。
1) ハザードマップで「自宅のリスク(浸水/土砂/高潮)」を1回確認
2) 避難先を1つ決める(避難所 or 親族宅 or 高台)
3) “動くタイミング”を固定する(暗くなる前/風が強くなる前)
ルールにしておけば、当日は迷いません。
まとめ
台風(ハリケーン級)の避難判断は、根性ではなく条件で決めます。
- 判断は「場所×時間×人」
- 雨より「風・停電・夜」が人を詰ませる
- 土砂は早め、浸水は道路が詰む前が勝負
- 車は有利にも罠にもなる(冠水・渋滞・夜間に注意)
- 逃げ遅れの典型は「様子見→夜→詰む」
- 今日やるのは“自分ルール化”だけで十分
避難は怖い行動ではなく、命を守る「順番の行動」です。
迷いを減らすほど、家族を守れる確率が上がります。

コメント