消防の現場は、火災や救助の「本番」だけで成り立っていません。
日々の清掃、点検、補充、片付け、書類、訓練準備――いわゆる「雑用」に見える仕事が、実は安全と成果を支える土台です。
ここでは、消防で雑用が必要な理由を、入校前・配属前の不安が軽くなるように整理します。
■①
雑用は「現場の再現」である
現場では、道具が所定の位置にあるか、すぐ使える状態か、誰が何を担当するかが結果を分けます。
署の中で毎日やる整理整頓や補充は、そのまま現場の動き方の訓練になっています。
「探さない」「迷わない」「戻す」を体に入れるために、雑用は必要です。
■②
点検は「使えるかどうか」を保証する作業
消防は“壊れてから直す”が許されません。
ホース、結合金具、空気呼吸器、無線、ライト、工具、救急資器材は、使う瞬間に100%動く必要があります。
点検や消耗品の交換は地味ですが、現場でのトラブルを消すための仕事です。
実際、現場で「点検していた隊ほど動きが速い」のは珍しくありません。
■③
清掃は見た目ではなく「衛生と安全」のため
救急・救助・火災出場の後は、汗・粉じん・体液・泥・油が必ず残ります。
清掃や洗浄を怠ると、感染症リスク、皮膚トラブル、装備の劣化、転倒事故につながります。
救急車内の拭き上げやストレッチャーの消毒が徹底されるのも、次の傷病者を守るためです。
■④
雑用は「チームの呼吸」を整える
消防は個人競技ではなく、連携の仕事です。
雑用の場面は、声かけのタイミング、報連相、段取り、気づき、譲り合いが可視化されます。
小さな連携が揃わないチームは、本番でもズレます。
逆に、雑用で息が合うチームは、現場でも自然に役割が回ります。
■⑤
雑用は「新人の安全装置」でもある
新人のうちは、知識も経験も不足します。
いきなり最前線に立たせず、準備や片付け、補助、整備を通して、流れと危険ポイントを学ばせる。
これは現場での事故を防ぐための合理的な仕組みです。
「雑用=下っ端いじめ」ではなく、「事故らせない順番」だと理解すると気持ちが軽くなります。
■⑥
雑用は「住民の信頼」に直結する
消防署は、住民が最も困った時に頼る場所です。
車両や資機材が整い、庁舎が整然としていることは、それだけで安心感につながります。
逆に、装備が雑で、片付けが甘い組織は、いざという時の信頼も揺らぎます。
信頼は、日々の地味な積み重ねでしか作れません。
■⑦
被災地では雑用こそが「最優先」になる
被災地派遣やLOの現場では、派手な活動より先に、情報整理、物資の仕分け、動線づくり、掲示、清掃、衛生管理が求められます。
実際、避難所や役場支援では「片付ける人」「整える人」が不足すると、混乱が長引きます。
元消防職員として感じたのは、現場は“戦う”より前に“整える”で勝負が決まる場面が多いということです。
雑用ができる人ほど、被災地でも信用されます。
■⑧
雑用を前向きにするコツは「意味づけ」を変える
雑用がしんどいのは、「意味が見えない」時です。
今日の雑用を、次のどの場面につなげるかを自分で言語化すると、納得感が増えます。
・点検=本番の故障ゼロ
・整理整頓=探す時間ゼロ
・清掃=感染と劣化ゼロ
この発想に切り替えるだけで、雑用は“現場の準備”に変わります。
■まとめ|雑用は現場の準備そのもの
消防の雑用は、単なる作業ではありません。
点検・清掃・補充・片付け・準備を通して、現場で命を守るための「安全」「速さ」「連携」「信頼」を作っています。
結論:
消防の雑用は、命を守るための訓練であり、現場を回すための必須業務です。
元消防職員としての実感ですが、雑用を丁寧にやる隊ほど、現場での判断と動きが安定します。地味な積み重ねが、いざという時に自分と仲間を守ります。
出典:広島市「消防の一日(ある日の当直)(キッズホームページ)」

コメント