災害が起きると、生活は一気に「水がない世界」に変わります。
結論から言うと、トイレ問題は“不快”ではなく、水分摂取を止めさせて脱水を招き、命に関わる引き金になります。
平時は1人1日あたり約200〜260Lの水を生活で使っていますが、災害直後は「飲み水3Lすら厳しい」局面が起こり得ます。このギャップの中でトイレが崩れると、人は飲めなくなり、体が先に壊れます。
私は被災地派遣(LO)で避難所運営や住民対応に入った経験がありますが、トイレが回らない現場ほど「飲まない」「我慢する」「体調を崩す」が連鎖し、結果として救急要請や介助が増え、避難所全体が疲弊しました。トイレは、命と秩序を守るインフラです。
■① なぜトイレが命に関わるのか:人は“行けない”と分かった瞬間に飲まなくなる
トイレが足りない・汚い・暗い・並ぶ。
この状況になると、人は合理的に水分を減らします。
- 行列が怖い → そもそも飲まない
- 夜が怖い → 夕方から飲まない
- 汚い → 行きたくないから飲まない
結果として、脱水→血圧低下→転倒→持病悪化→熱中症リスク増。
トイレ問題は「水分を止めるスイッチ」になりやすいのが本質です。
■② 200L→3Lの世界では、トイレは“水で解決”できない
断水時、よくある誤解が「水を集めて流せばいい」です。
しかし災害直後は、そもそも水が足りません。
- 飲む水が最優先
- 生活用水(洗浄・洗濯・流す水)は後回し
- 取りに行ける人が限られる
- 夜間や豪雨では給水に行けない
だから、断水時の基本戦略はこうです。
「水で流す」から「固めて密閉して捨てる」へ切り替える。
これがギャップを埋める現実解です。
■③ 避難所運営の考え方:トイレは“早期に整える”ほど被害が減る
避難所の運営では、トイレが遅れるほど次が起きます。
- 汚れて使えない人が増える
- 我慢して体調不良が増える
- 介助・救急対応が増える
- 苛立ち・クレームが増える
- 現場が回らなくなる
逆に、トイレが整うと「飲める」「眠れる」「落ち着く」が増えて、避難所が回り始めます。
家庭の備えでも同じで、トイレの備えは“体調の保険”です。
■④ 備蓄の優先順位①:携帯トイレは「回数」で持つ(数が安心を作る)
携帯トイレ(凝固剤+袋タイプ)は、数が足りないと水分を控え始めます。
だから“回数”で準備します。
最低ラインの目安
- 1人1日5回 × 3日=15回分
- 家族4人なら60回分
余裕があれば7日分へ増やすと、メンタルと体調が守りやすいです。
■⑤ 備蓄の優先順位②:「衛生セット」がないと感染症→脱水のルートに入る
トイレが汚れると、感染症(下痢・嘔吐)リスクが上がり、脱水が進みます。
だから最低限、これだけは固定化します。
- 使い捨て手袋
- 手指消毒(アルコール or シート)
- ウェットティッシュ(手・便座・体を兼用でも可)
- 厚手のゴミ袋+消臭袋(臭いとストレスが激減)
被災地でも、衛生が保てた場所ほど体調不良が減り、空気が荒れにくいのが現実でした。
■⑥ 備蓄の優先順位③:「夜の不安」を消すと、夕方から飲まない問題が止まる
夜のトイレが怖いと、人は夕方から飲みません。
ここを装備で潰すと、脱水を防げます。
- ヘッドライト or 足元灯
- 予備電池
- 目隠し(ポンチョ・大判タオル)
- 室内で使える簡易環境(移動が危険な時の保険)
夜の不安は根性で解決できません。照明と動線で解決します。
■⑦ 「水で流す」は最後に:状況によっては詰まり・逆流リスクがある
断水時にバケツで流す方法は、環境が整っていないと危険です。
マンションや排水状況によっては詰まりや逆流が起き、復旧を遅らせます。
迷ったら基本は、
「流さない。固めて密閉して捨てる」
この方が二次被害を増やしません。
■⑧ 今日できる最小行動:3日分だけ“数字で”揃える
完璧は不要です。まず3日分だけ数字で揃えると、一気に現実が変わります。
- 飲み水:1人3L×3日=9L
- 携帯トイレ:1人15回分×家族人数
- 衛生セット:手袋+消毒+拭くもの+袋
- 夜対策:ライト+電池
これが揃うと、トイレが原因で飲めなくなる確率が下がり、耐災害力が上がります。
まとめ
結論:200L→3Lの世界では、トイレが崩れると水分摂取が止まり、脱水で命に関わる。トイレ備蓄は「回数(携帯トイレ)」「衛生セット」「夜対策」の順で優先し、“飲むためにトイレを整える”発想に切り替える。
被災地派遣(LO)の現場でも、最初にトイレが整った場所ほど混乱が減り、健康が守られました。トイレは命を守る備えです。
出典
内閣府「避難所運営ガイドライン」
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/

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