【防災士が解説】学校のDXは「非常時に止まらない仕組み」から|クラウド活用で先に決める3つのこと

学校のDX(クラウド活用)は、便利にするためだけの話ではありません。
結論から言うと、クラウドは「災害・感染症・停電・人手不足」でも業務と連絡を止めないための“継続計画(BCP)”の中核になります。
一方で、費用面と安全性(情報管理)を曖昧にしたまま導入すると、現場が疲弊して失敗します。

いま必要なのは、ツール選びより先に「運用ルール」を固めることです。


■① なぜ学校にクラウドが必要なのか:止まるのは“授業”ではなく“連絡と事務”

大きな災害が起きたとき、学校で最初に止まりやすいのは授業よりも、

  • 連絡網(誰に何を、どう伝えるか)
  • 安否確認(児童生徒・教職員)
  • 各種資料の共有(名簿、計画、マニュアル)
  • 事務(出勤できない・紙が見られない)

です。

被災地派遣(LO)でも、混乱の原因は「情報が届かない」「最新が分からない」でした。
だからこそ、クラウドは“平時の効率化”だけでなく、“非常時の代替”として効きます。


■② 現場がつまずく2大課題:費用と安全性(情報管理)

ご提示のとおり、進展を阻む代表的な壁は次の2つです。

費用面

  • ライセンス費、端末更新、通信費
  • 管理者の負担(設定・アカウント管理)
  • サポートや研修のコスト

安全性の確保

  • 個人情報(名簿、健康情報、成績等)の扱い
  • アカウントの使い回し・パスワード管理
  • 持ち出し端末の紛失・盗難
  • 誤送信・誤共有(共有リンクの事故)

ここを曖昧にすると、導入しても現場が怖くて使えず、結局“紙に戻る”が起きます。


■③ まず決めるべきは「何をクラウドに載せるか」ではなく「載せないもの」

クラウド活用は、最初に線引きが必要です。

  • 原則:必要最小限の情報から
  • まずは:文書テンプレ、会議資料、行事計画、連絡文
  • 慣れてから:安否確認、保護者連絡、提出物管理

特に、健康情報などセンシティブ情報は、運用が固まるまでは慎重が無難です。


■④ 学校DXの“失敗パターン”と対策(現場目線)

よくある失敗は、ツールが悪いのではなく運用が未設計なことです。

失敗①:使い方が人によってバラバラ

フォルダ構成・命名ルール・保存期限を統一

失敗②:管理者だけが詳しくて属人化

副管理者を置き、手順書を1枚にする

失敗③:非常時にログインできない

緊急時の権限・連絡手段・代替手段(紙/電話)を併用

災害対応も同じで、計画があっても“使える状態”にしておかないと意味がありません。


■⑤ 防災(BCP)の視点で優先度が高いクラウド活用

学校にとって防災上、特に価値が高いのはこの3つです。

  1. 安否確認(教職員・児童生徒)
  2. 保護者への一斉連絡
  3. 災害時マニュアル・連絡先の最新版共有

災害時は「情報の最新版」が命を守ります。
紙のファイルが職員室にあるだけでは、出勤できないと詰みます。


■⑥ 最小コストで始めるなら「段階導入」が現実的

費用が壁なら、最初から全部は狙わない方が成功します。

  • Phase1:資料共有(会議・行事・文書)
  • Phase2:連絡系(教職員の周知、保護者連絡)
  • Phase3:個別情報(提出物、面談、データ連携)

この順にすると、現場が慣れやすく、事故も減ります。


■⑦ 「安全性」を担保する最低限のルール(これだけは必須)

クラウドを安全に使うなら、最低ラインはここです。

  • 個人アカウント禁止(組織アカウントに統一)
  • 二要素認証(可能なら必須)
  • 共有リンクの権限設定(“全員公開”を原則禁止)
  • 退職・異動時のアカウント整理(放置が一番危険)
  • 端末紛失時の対応(遠隔ロック、報告ルート)

情報管理は処分対象になることもあります。
だからこそ、“守りの設計”が先です。


■⑧ 今日できる最小行動:まずは「3項目」だけ決める

すぐに動けるのはこれです。

  • 共有フォルダの大項目(例:01_行事、02_会議、03_文書)
  • 命名ルール(例:YYYYMMDD_件名)
  • 共有権限(原則:校内限定、編集者を限定)

これだけでも、導入の成功率が上がります。


まとめ

結論:学校のクラウド活用は“便利化”ではなく、災害時にも連絡と業務を止めないためのBCPの中核。費用と安全性が課題なら、段階導入と運用ルールの先行設計が最も現実的で、まずは「載せないもの」「権限」「命名・フォルダ構成」を決めることが成功の近道です。
被災地派遣(LO)でも、混乱を減らしたのは“最新情報に迷わず辿り着ける仕組み”でした。学校のDXも同じで、仕組みが人を守ります。


出典

内閣官房 国土強靱化「事業継続(BCP)に関する情報」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/

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