防災セットは「とりあえず買う」で終わりやすい一方、災害の現場では“場面が違えば必要なものが変わる”のが現実です。西日本豪雨を経験した広島の小学生が、無印良品と半年かけて「本当に役立つ防災セット」を考えた取り組みは、備えの本質を突いています。
結論から言うと、防災セットは「誰の」「どこへ」「どう逃げるか」で分けて作るほど、実際に役に立つ確率が上がります。
■① 防災セット作りの出発点は「被災経験の違和感」
被災経験者が語る「持って避難したが、必要なものが揃っておらず役に立たなかった」という違和感は、とても重要です。
防災セットは“あるだけ”では機能しません。避難先・移動時間・体力・混乱度によって、使える物と使えない物がはっきり分かれます。
防災士として現場で何度も感じたのは、備えの失敗の多くが「想定が一つしかない」ことです。避難所に行く想定だけ、車で逃げる想定だけ、上階に逃げる想定だけ。だから噛み合わなくなります。
■② 「避難所」と「垂直避難」を分けるだけで、必要物は変わる
同じ“避難”でも、避難所と垂直避難では条件が別物です。
避難所は移動を伴い、周囲に人が多く、待機時間が長くなりやすい。垂直避難は自宅や近隣建物の上階に上がるため、移動は短い一方で、電気・水・情報が止まった状態で孤立する可能性があります。
だから、防災セットは「一つの万能セット」より、最低でも2パターンに分けた方が現実に合います。
■③ 被災地の声を拾うと「足りないのは道具より運用」
地域の人に必要な物を聞き取り、メッセージを添えるという作り方は、単なる買い物ではなく“運用設計”です。
防災の現場では、同じ道具でも「使い方が分からない」「家族内で役割が決まっていない」「どこにあるか忘れる」で機能しません。
防災セットを作るときは、物を揃えるのと同じくらい「誰が持つか」「どこに置くか」「いつ点検するか」をセットで決めることが大切です。
■④ 実際に詰めて持ってみると「重さ」と「持ち出し動線」が壁になる
子どもが「詰めたり持ったりして『逃げられない』と話した」という点は、現場目線で非常にリアルです。
防災士から見た実際に多かった失敗は、内容が良くても「重すぎて持てない」「玄関から出るまでに手が足りない」「夜間に見つからない」ことで、結局置いていくパターンです。
セット作りは、必ず“背負って歩く”か“片手で持つ”を試し、家の中の持ち出し動線(置き場所→玄関→外)まで含めて確認すると成功率が上がります。
■⑤ 「子ども視点」が強いのは、避難生活の不快を直撃しているから
避難所や待機中に辛いのは、恐怖だけではなく「不快」と「不便」です。
着替え・衛生・寒暖差・眠れない・待ち時間のストレス。子どもはここに敏感で、必要物の選び方に現実味が出ます。
防災セットを家族で作るときは、子どもに「避難先で一番困りそうなこと」を言わせると、優先順位が一気に現実寄りになります。
■⑥ 「垂直避難」想定は、在宅避難の基礎体力を作る
垂直避難は、在宅避難の延長です。
停電したら照明・充電・情報。断水したら飲料・トイレ・衛生。家の中で数日回す想定が必要になります。
防災士としての経験上、「避難所に行くかどうか」以前に、まず自宅で半日〜1日を回せるかが初動を左右します。垂直避難セットは、その“最低ライン”を作る発想として非常に強いです。
■⑦ 【被災地派遣・LOの一次情報】共通言語がある現場は、初動が早い
被災地派遣・LOとして現場に入ったとき、「避難所に行くのか」「上に逃げるのか」「いつ切り替えるのか」が共通認識になっていない地域ほど、初動の迷いが大きくなりました。
誤解されがちポイントは、「垂直避難=安全」ではなく“危険を回避するための一時的な選択肢”で、状況が変われば次の行動に移る必要があることです。
だからこそ、今回のように「避難所」と「垂直避難」を言葉として分け、セットも分けて考えることは、家族や地域の判断を軽くし、連携を速くします。
■⑧ 今日からできる「防災セットの作り方」最短ステップ
防災セット作りは、完璧を狙うほど止まります。まずは次の順で小さく始めるのが現実的です。
①避難パターンを2つに分ける(避難所/垂直避難)
②各セットを「20点以内」に仮で作る(まず軽くする)
③実際に背負って外に出る(持ち出し動線チェック)
④足りない物は“次回の改善”としてメモする
⑤月1回だけ点検日を決める(入れ替えと軽量化)
この型で回すと、セットは“使える方向”に育っていきます。
■まとめ|防災セットは「避難の形」で分けると、現場で役に立つ
防災セットは「一つで全部」ではなく、「避難所」と「垂直避難」を分けて考えるだけで、必要物と優先順位が一気に現実に近づきます。
被災経験のある子どもたちが半年かけて作った取り組みは、道具の話というより「想定の分け方」と「使える形にする工夫」が本質です。
結論:
防災セットは“万能セット”を目指さず、「避難所用」と「垂直避難用」に分けて軽く作り、実際に持って試して育てるのが最短です。
防災士として被災地の現場に立つたびに感じるのは、備えの差は物量より「迷いの少なさ」に出ることです。避難の形を分け、家族で共通認識を持てるだけで、初動は確実に強くなります。
■出典
ライブドアニュース「児童が大手企業とタッグ組み防災セット考案 西日本豪雨の被災者からも聞き取り・広島」(2026年2月26日)
https://news.livedoor.com/topics/detail/30658561/

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