【元消防職員が解説】ダイニチ「スモークマシン」の使い方|避難訓練で“煙の怖さ”を安全に体感する

火災の本当の怖さは「炎」より先に「煙」で生活と判断が崩れることです。視界が消え、咳き込み、出口が分からなくなると、人は想像以上に動けません。だからこそ訓練では、机上の説明ではなく“体感”が必要になります。
ダイニチのスモークマシンは、避難訓練で煙環境を再現し、短時間で「姿勢・動線・声かけ・誘導」の弱点を見える化できる機材です。安全に使うためのポイントを、現場目線で整理します。


■① スモークマシンは何のために使うのか

スモークマシンの目的は、煙を怖がらせることではなく「判断を間違えない練習」をすることです。

煙環境では、次の失敗が一気に起きやすくなります。

・立ったまま移動して呼吸が苦しくなる
・出口表示が見えず、来た道に戻れなくなる
・声が届かず、隊列が崩れる
・慌てて走って転倒する
・扉を開けっぱなしにして煙が回る

私も訓練や現場で何度も見ましたが、煙が入った瞬間に「分かっているはずの人」ほど動きが雑になります。煙は、人の行動を一段階落とします。だから訓練で落とし穴を先に出しておく価値があります。


■② ダイニチの機種でできること(PS-2007/PS-2107)

ダイニチのスモークマシンには、代表的にPS-2007とPS-2107があります。

・PS-2007:比較的コンパクトで扱いやすいタイプ
・PS-2107:20リットル連続供給方式で、煙量を可変しながら長時間運用が可能

参考価格(目安)
・本体価格:約20万円〜30万円前後(機種・販売店により変動)
・専用スモーク液:約3,000円〜6,000円前後/本(容量により異なる)

※価格は時期や販売店で変動します。導入時は最新価格を必ず確認してください。

PS-2107は煙量を調整できるため、訓練規模が大きい施設や学校向けです。煙到達距離は無風で約3mが目安で、空調や扉の開閉で体感は大きく変わります。


■③ 導入前に考える「費用対効果」

本体が数十万円規模のため、個人宅よりも学校・福祉施設・事業所向けの設備です。

ただし、年1回の訓練で「避難動線の欠陥」や「誘導体制の弱点」が見つかれば、その価値は十分あります。
実際、訓練で見つかった“たった一つの段差”や“声の届かなさ”が、将来の事故を防ぐこともあります。

現場感覚としては、
「煙があるだけで、人は思った以上に動けなくなる」
これを一度体感させられるかどうかが大きいです。


■④ 基本の使い方(安全運用の流れ)

1)設置場所を決める(避難動線を塞がない)
2)専用スモーク液を使用する(代用品は使わない)
3)電源ケーブルを養生する(転倒防止)
4)換気計画を立てる
5)少量から発煙させる
6)誘導員を配置する
7)段階的に煙量を調整する
8)終了後は必ず換気確認

機械の操作よりも、「安全管理」と「段階運用」が重要です。


■⑤ 訓練で効果が出やすいシナリオ

・曲がり角で視界が切れる状況
・階段前での誘導確認
・扉の開閉判断
・低姿勢維持の練習
・短い声かけの確認

被災地派遣の現場でも、避難時に迷う原因の多くは「視界不良」と「情報不足」です。
煙は、その状況を安全に再現する手段になります。


■⑥ 安全管理で外せない注意点

・走らせない
・視界ゼロまで濃くしない
・喘息などの体調確認を事前に行う
・退出ルートを常に確保する
・終了後は十分に換気する

訓練は“怖がらせる”ことが目的ではありません。
「判断力を守る」ことが目的です。


■⑦ よくある失敗

・煙を濃くしすぎて混乱する
・誘導員不足
・ケーブル養生不足
・換気計画不足
・姿勢練習だけで終わる

元消防職員としての実感ですが、成功した風の訓練は一番危険です。
“弱点が見つかる訓練”が、本当に意味のある訓練です。


■⑧ 小規模施設や家庭での代替案

スモークマシンがなくても、

・照明を落として移動訓練
・目隠しパネルで視界制限
・雑音環境で声かけ確認
・扉操作ルールの反復

これだけでも判断訓練は可能です。


■まとめ|スモークマシンは「判断を崩さない訓練装置」

ダイニチのスモークマシンは、数十万円規模の本体価格と専用液コストがかかりますが、煙環境を安全に再現できる専門機材です。

結論:
スモークマシンは煙を出す道具ではなく、「迷わない避難判断」を作るための設備です。

元消防職員として感じるのは、煙の中で落ち着ける人は、普段から役割と動線が決まっているということ。
機材の性能より、運用設計が成果を決めます。

出典:ダイニチ工業株式会社 スモークマシン製品情報
https://www.dainichi-net.co.jp/products/smokemachine/

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