【防災士が解説】新年度の自治会防災訓練は何から始める?形だけで終わらせない判断型マニュアル

新年度になると、自治会や自主防災組織では「今年の防災訓練をどう組み立てるか」で迷いやすくなります。毎年同じ内容を続けると参加者が固定化しやすく、逆に内容を増やしすぎると運営側が疲れて続かなくなることもあります。だから大切なのは、立派な訓練を一度だけ行うことではなく、地域の実情に合った訓練を、無理なく回せる形で新年度の計画に落とし込むことです。

消防庁の「自主防災組織の手引」では、自主防災組織の活動は単発ではなく、年間計画の中で継続的に進めることが重要とされており、訓練についてもPDCAで見直していく考え方が示されています。さらに、令和7年度総合防災訓練大綱では、住民や自治会、自主防災組織等が参加する実践的訓練を重視し、発災時に起こり得る状況を踏まえた訓練づくりが求められています。

つまり、新年度の自治会防災訓練で大切なのは、「何をやるか」だけではなく、誰が・何のために・どこまでできれば合格かを最初に決めることです。この記事では、その現実的な組み立て方を整理して解説します。

■① まず結論として、新年度の防災訓練で最優先にすべきことは何か

結論から言うと、最優先にすべきことは、今年の訓練目的を一つに絞ることです。

防災訓練で失敗しやすいのは、「避難も、消火も、安否確認も、炊き出しも、避難所運営も全部やろう」とすることです。これでは準備が重くなり、参加者も何を覚えればよいか分かりにくくなります。

元消防職員として感じるのは、訓練で大事なのは「項目の多さ」ではなく「住民が一つでも動けるようになること」です。私なら、新年度の最初の訓練では
まず安否確認
次に避難行動
最後に必要なら避難所開設や初期消火
というように、主目的をはっきりさせます。

■② 新年度に訓練計画を立てる時、最初に確認したいことは何か

最初に確認したいのは、地域の今年の課題は何かです。

たとえば、
高齢化が進んでいる
新しい住民が増えた
役員が入れ替わった
避難所の場所やルールが変わった
昨年の訓練参加率が低かった
といった変化です。

消防庁の手引でも、自主防災組織の活動は地域の実情を踏まえて組み立てることが重要とされており、年間計画の見直し例も示されています。だから私は、「毎年やっているから今年も同じ」ではなく、「今年この地域で一番弱い所はどこか」を先に見ます。

■③ 訓練テーマはどう決めればいいのか

訓練テーマは、災害種別より“住民の行動”で決めると組み立てやすいです。

たとえば、
地震の時に誰が安否確認するか
大雨の時にどのタイミングで避難を始めるか
夜間に避難所をどう開けるか
というように、「住民が何をするか」で決める方法です。

令和7年度総合防災訓練大綱でも、状況設定や被害想定を踏まえた実践的な訓練が重要とされています。つまり、単なる見学型より、実際に動く前提で設計する方が現実的です。

■④ 自治会の訓練は何人集まれば成功なのか

ここはかなり誤解しやすい所です。人数だけで成功・失敗を決めない方がいいです。

もちろん参加者は多い方がよいですが、訓練の価値は「何人来たか」だけではありません。
役員以外も動けたか
初参加の人がいたか
高齢者や子ども世帯が参加しやすかったか
次回へ改善点が見えたか
が大事です。

元消防職員としても、現場で本当に強い地域は「参加者数が多い地域」より、「来た人が役割を理解して帰る地域」でした。私なら、“参加率”だけでなく“動ける人が増えたか”で見ます。

■⑤ 新年度の自治会防災訓練で入れたい基本項目は何か

新年度の基本項目としては、次の4つが現実的です。

① 安否確認の流れ
② 避難開始の判断
③ 避難経路と集合場所の確認
④ 避難所開設または受入れの初動確認

消防庁の事例集でも、自主防災組織や自治会、消防団員等が連携し、避難所開設訓練や手順書活用を進めている事例が示されています。だから、私は自治会訓練では「見る訓練」より「役割を一度やってみる訓練」を優先します。

■⑥ 役員だけで抱え込まないためにはどうすればいいか

大切なのは、役割を細かく分けて、当日だけでも住民へ渡すことです。

たとえば、
受付係
安否確認係
要支援者確認係
放送・連絡係
避難所資器材確認係
のように分ける方法です。

被災地派遣の現場でも、うまくいく地域は「代表者が全部分かっている地域」ではなく、「複数人が少しずつ役割を持てている地域」でした。私なら、訓練を“役員の仕事”ではなく“地域の分担練習”にします。

■⑦ 実践的な訓練にするには何を入れるべきか

実践的にするには、時間帯・天候・参加者条件を少し厳しく設定することが有効です。

たとえば、
休日朝の想定
夜間の想定
雨天の想定
高齢者が多い前提
停電想定
などです。

総合防災訓練大綱でも、発生時間帯や避難方法、複合災害など、より実践的な最悪事態を踏まえた訓練が重視されています。だから私は、「晴れた昼間のやりやすい訓練」だけで終わらせず、少しだけ難しくする要素を入れた方がよいと考えます。

■⑧ 訓練後に必ずやるべきことは何か

必ずやるべきなのは、反省会を短くてもやることです。

ここで大切なのは、立派な報告書より、
うまくいったこと
混乱したこと
次回直すことを一つだけ決めること
です。

消防庁の自主防災組織の考え方でも、年間計画の中でPDCAを回していくことが重要とされています。つまり、訓練は“やったら終わり”ではなく、“次回を少し楽にする材料を残すこと”まで含めて意味があります。私なら、「完璧な総括」より「次に直す一点」を重く見ます。

■⑨ 迷った時の判断基準

迷ったら、次の順番で考えてください。

「今年の訓練目的は一つに絞れているか」
「地域の今年の課題に合っているか」
「住民が実際に動く内容になっているか」
「訓練後に次回改善できる形で終われるか」

この4つが整理できれば、新年度の自治会防災訓練マニュアルとしてはかなり現実的です。防災では、「大きな訓練を一回すること」より「地域で回せる訓練を毎年積み重ねること」の方が大切です。

■⑩ まとめ

新年度の自治会防災訓練で大切なのは、訓練目的を一つに絞り、地域の課題に合わせて、住民が実際に役割を持って動ける形にすることです。消防庁の「自主防災組織の手引」では、年間計画の中で継続的に活動を進める考え方が示されており、令和7年度総合防災訓練大綱でも、住民や自治会、自主防災組織等が参加する実践的訓練の重要性が示されています。

私なら、新年度の自治会防災訓練で一番大事なのは「全部盛りの訓練をすること」ではなく「今年この地域で、一つでも住民が動けるようになること」だと伝えます。被災地でも、強かったのは大規模な訓練をした地域より、役割を少しずつ共有できていた地域でした。だからこそ、まずは目的を絞る、次に役割を分ける、最後に次回改善へつなげる。この順番で整えるのがおすすめです。

出典:https://www.fdma.go.jp/mission/bousai/ikusei/items/bousai_R5_3.pdf(消防庁「自主防災組織の手引」)

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