【防災士が解説】学校防災訓練は新年度に何を先に決める?“毎年同じ”で終わらせない判断基準

学校防災訓練は、毎年実施していても「形だけ」になりやすい分野です。ですが、本来の目的は、訓練回数をこなすことではなく、児童生徒・教職員が、その学校の実情に合わせて実際に動けるようにすることです。文部科学省の「学校の危機管理マニュアル作成の手引」では、各学校は危機管理マニュアルを作成し、体制整備、点検、避難訓練、教職員研修、安全教育を一体で進めることが示されています。さらに、「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」では、訓練は計画(PLAN)-実施(DO)-評価(CHECK)-改善(ACT)のサイクルで見直すことが重要とされています。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/saigai02.pdf

また、文部科学省は2025年3月に「実践的な防災教育の手引き」を公表し、中学校・高等学校を中心に、より実践的な防災教育や訓練へつなげる視点を示しています。つまり、新年度の学校防災訓練で大切なのは、「去年と同じ訓練を今年もやること」ではなく、今年の学校の課題に合わせて、何を訓練で身に付けさせるかを先に決めることです。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/jissenbousai-ck.pdf

■① まず結論として、新年度の学校防災訓練で最優先にすべきことは何か

結論から言うと、最優先にすべきことは、今年の訓練目的を一つに絞ることです。

学校防災訓練で失敗しやすいのは、「地震」「火災」「引き渡し」「避難所開設」「不審者対応」などを一度に詰め込みすぎることです。文部科学省の危機管理マニュアル作成の手引でも、学校の危機事象は多様であり、学校の実情に応じて想定する必要があると示されています。つまり、まずは「今年この学校で一番弱い所は何か」を決める方が現実的です。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf

元消防職員として感じるのは、訓練で本当に差が出るのは、項目数ではなく一つの行動が確実に身についたかです。私なら、新年度の最初の訓練では
まず初動行動
次に避難経路
最後に点呼と情報伝達
この順で考えます。

■② 新年度に最初に確認したいのは何か

最初に確認したいのは、今年の学校の変化です。

たとえば、
校舎や教室配置の変更
新入生・転入生の増加
教職員の異動
通学路や周辺工事の変化
特別支援を要する児童生徒の状況
などです。

文部科学省の「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」でも、学校防災マニュアルは学校や地域の実情に応じて作成・見直しすることが前提です。つまり、訓練計画も、年度替わりの変化を反映して更新する方が自然です。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/saigai02.pdf

■③ 訓練シナリオはどう決めるべきか

訓練シナリオは、災害種別より“その時に学校がどうなっているか”で決める方が実践的です。

たとえば、
授業中
休み時間
給食時間
登下校時
部活動中
のどこで起きるかで、対応はかなり変わります。

文部科学省の参考資料「生きる力を育む防災教育の展開」でも、教育時間中だけでなく、預かり時間や登下校など、さまざまな時間帯を想定した訓練例が示されています。つまり、「地震訓練をする」だけでなく、いつ起きた想定で行うかまで決める方が現実的です。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/saigai03.pdf

■④ 教職員側で一番先にそろえるべきことは何か

教職員側で一番先にそろえるべきことは、初動時の役割分担です。

文部科学省の危機管理マニュアル作成の手引では、体制整備が危機管理の事前準備として明示されており、危険等発生時に教職員がとるべき措置の具体的内容と手順を定める必要があるとされています。つまり、避難訓練の前に、
誰が放送するか
誰が通報するか
誰が負傷者対応をするか
誰が児童生徒の点呼を集約するか
を決める方が重要です。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf

私は、学校訓練では「子どもを動かす前に、先生の役割を通す」方が現実的だと考えます。

■⑤ 児童生徒に何を覚えさせるべきか

児童生徒に覚えさせたいのは、難しい知識より最初の行動です。

具体的には、
まず身を守る
先生の指示を聞く
勝手に戻らない
避難経路を知る
です。

文部科学省の「実践的な防災教育の手引き」でも、防災教育は知識だけでなく実践力につなげることが重視されています。つまり、学校防災訓練では、説明を増やしすぎるより、最初の数分の動きを身に付ける方が実践的です。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/jissenbousai-ck.pdf

■⑥ 新年度に見落としやすいのは何か

見落としやすいのは、新任教職員と新入生への周知不足です。

学校防災マニュアルは作ってあっても、新年度に入ったばかりの教職員や新入生には、その学校特有の避難経路や危険箇所がまだ入っていないことがあります。文部科学省の各種手引きが、マニュアルの見直しや教職員研修を重視しているのも、そのためです。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf

私なら、新年度の訓練では「学校全体の本訓練」の前に、教職員向け確認新入生向け簡易説明を入れます。その方が本訓練が安定します。

■⑦ 実践的な訓練にするには何を入れるべきか

実践的にするには、少しだけ条件を厳しくすることが有効です。

たとえば、
放送が一部聞こえにくい想定
階段の一部が使えない想定
負傷者役を入れる
雨天時を想定する
などです。

文部科学省の近年の資料では、より実践的な防災教育・訓練への展開が重視されています。つまり、整列して避難するだけでなく、少し判断が必要な場面を入れると訓練の質が上がりやすいです。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/jissenbousai-ck.pdf

■⑧ 訓練後に必ずやるべきことは何か

必ずやるべきなのは、振り返りとマニュアル修正です。

「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」は、訓練を含む危機管理の取組をPDCAで回すことを重視しています。つまり、訓練は一回やって終わりではなく、
どこで詰まったか
放送や集合はうまくいったか
新しい危険箇所はなかったか
を確認して次へつなげる必要があります。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/saigai02.pdf

私は、学校訓練では立派な反省会より、次回直す一点を決める方が現実的だと考えます。

■⑨ 迷った時の判断基準

迷ったら、次の順番で考えてください。

「今年の訓練目的は一つに絞れているか」
「今年の学校の変化を反映できているか」
「教職員の役割分担が先に通っているか」
「訓練後に見直しまでつなげられるか」

この4つが整理できれば、新年度の学校防災訓練実施マニュアルとしてはかなり現実的です。防災では、「毎年やること」より「毎年少しずつ実際に動けるようになること」の方が大切です。

■⑩ まとめ

新年度の学校防災訓練で大切なのは、学校の今年の実情に合わせて訓練目的を絞り、時間帯や場面を設定し、教職員の役割分担と児童生徒の初動行動を明確にして、訓練後にマニュアルへ反映することです。文部科学省の「学校の危機管理マニュアル作成の手引」は、体制整備、点検、避難訓練、教職員研修、安全教育を一体で進める考え方を示しており、「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」はPDCAで見直すことを重視しています。さらに、2025年公表の「実践的な防災教育の手引き」は、より実践的な防災教育・訓練への展開を示しています。
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/jissenbousai-ck.pdf

私なら、新年度の学校防災訓練で一番大事なのは「去年と同じ訓練を回すこと」ではなく「今年の学校で本当に必要な行動を一つ身に付けさせること」だと伝えます。学校では、訓練回数より、最初の数分が動けるかの方が大事です。だからこそ、まずは目的を絞る、次に役割を通す、最後に見直す。この順番で整えるのがおすすめです。

出典:https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf(文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」)

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