災害対応で最も難しいのは「住民への説明」。
正しい判断をしていても、伝え方が悪ければ住民は動かない。
ここでは、自治体職員が絶対に身につけておくべき“住民説明力”をまとめる。
■① 専門用語を使わず、誰にでも理解できる言葉で伝える
災害情報には専門用語が多い。
しかし、住民は防災の専門家ではない。
説明力が高い職員ほど、難しい言葉を一切使わない。
● 「氾濫危険水位」→「まもなく川があふれるレベルです」
● 「土砂災害警戒情報」→「崖の近くはすぐ避難してください」
● 「停電リスクあり」→「今のうちにスマホを充電してください」
“伝わる言葉”を選ぶことが命を守る。
■② 行動を明確に伝える|抽象表現は禁止
曖昧な表現は、住民の行動を遅らせる。
悪い例:
「念のため避難を検討してください」
「危険なのでお気をつけください」
良い例:
「〇時までに〇〇避難所へ移動してください」
「この区域は土砂災害の危険が高いので、ただちに避難してください」
“何を・いつまでに・どこへ”を具体的に示すことが重要。
■③ 不安を煽らず、冷静に“リスクと理由”を伝える
住民が行動しない理由の多くは「納得していない」から。
避難の呼びかけには“理由”が必要。
● 「この地区は土砂災害の危険度が非常に高くなっています」
● 「避難が遅れると、暗くなって安全に移動できません」
● 「早めに出る方が渋滞を避けられます」
“理由をセットで伝える”だけで、行動率は大きく変わる。
■④ 住民の不安や怒りの感情を受け止める姿勢
災害時の住民は、冷静ではいられない。
● 「なぜ避難しないといけないんだ」
● 「また避難させるのか、面倒だ」
● 「本当に危ないのか?」
職員が感情的に反応すると、住民はさらに反発する。
大切なのは、
「気持ちは理解しつつ、安全のために必要な行動を促す」
という姿勢。
● 「ご不便をおかけして申し訳ありません。ただ今の状況は本当に危険です」
● 「避難していただくことで命を守ることができます」
感情→事実→行動
この流れで伝えると、受け入れられやすい。
■⑤ 高齢者・子ども・外国人への“伝え方”を変える
誰にでも同じ説明をしていては行動につながらない。
● 高齢者には、ゆっくり・短く・繰り返し
● 子どもには、難しい言葉を使わない
● 外国人には、イラスト・指差し・簡単な英語
● 聴覚障がい者には、筆談やジェスチャー
「相手に合わせて伝える」ことが、正しい避難につながる。
■⑥ 誤情報を見つけたら、即座に“正しい情報”で上書きする
災害時には、SNSなどで間違った情報が瞬時に広がる。
● 「〇〇川が決壊したらしい」
● 「避難所が満員で入れない」
● 「市役所が避難対象地域を間違えた」
こうした情報は、住民の行動を妨げる。
職員は、“誤情報を見つけたらすぐ訂正”が必須。
● 「決壊はしていません。水位は〇〇で推移しています」
● 「避難所は入れます。混雑状況は〇〇です」
正確で迅速な訂正こそが信頼を守る。
■⑦ 説明の最後に“行動を一つだけ”伝える
情報が多すぎると、住民は動けなくなる。
説明の最後は、必ず“1つの行動”で締める。
● 「今から準備して、〇時までに避難をお願いします」
● 「スマホを充電して、水を確保してください」
● 「ご近所の高齢者へ声をかけてください」
行動が具体的であるほど、住民の命が守られる。
■まとめ|住民説明力は“自治体の防災力”そのもの
災害時に住民が動くかどうかは、
職員の「伝え方」によって大きく左右される。
● 分かりやすい言葉
● 具体的な行動指示
● 感情ケア
● 即時の誤情報訂正
● 相手に合わせた説明
説明力は、最も実践的で、最も命を救うスキル。
自治体職員の中に“説明が上手い人”が増えるほど、地域の防災力は確実に強くなる。

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