【防災士が解説】車での避難は本当に安全か|浸水道路で走る前に止まるべき判断基準

大雨や台風が近づく時、
「車なら早く逃げられるのでは」
「歩くより車の方が安全では」
「少しくらい冠水していても通れるのでは」
と考える人は少なくありません。

結論から言えば、水害時の車避難で最も大切なのは、“動けるうちに早く出ること”ではなく、“そもそも車を使う条件かどうかを先に見極めること”です。
一般的に、浸水した道路では水深が浅く見えても、走行不能・立ち往生・ドアが開かない・車が浮くといった危険があります。特に道路冠水時は、アンダーパス、側溝、マンホール、見えない段差が重なり、徒歩よりかえって危険になることもあります。

元消防職員として率直に言えば、水害時の車避難で一番危ないのは、
「まだ走れるだろう」という感覚で進んでしまうこと
です。
東日本大震災当時に東京で被災し、その後の被災地派遣やLO対応でも強く感じたのは、水害は火災や地震以上に移動中の判断ミスが命に直結しやすいということです。水は浅く見えても流れや見えない障害物で一気に危険になります。だから車避難は、使うならかなり早い段階、迷うなら使わない、という考え方の方が現実的です。

■① まず押さえたいのは「車避難は原則として条件付き」だということ

水害時の避難で、車はいつでも使ってよい手段ではありません。

国土交通省の水害ハザードマップ作成の手引きでは、一般的に浸水深30cm以上で車の走行が困難となり、50cm以上では車が浮いたり、パワーウィンドウ車では車内に閉じ込められたりするなど、避難時の車の使用は危険と示されています。さらに、事故や緊急車両の通行妨害、波による歩行避難者への影響など、周囲への危険もあるとされています。

防災士として言えば、車避難は
便利な避難手段
ではなく、
条件がそろった時だけ使える手段
と考えた方が安全です。
元消防職員としても、現場で危険になるのは「車を使ったこと」そのものより、
使ってはいけない状況で使ったこと
です。

■② 30cm前後でも「走れる」とは考えない方がいい

初心者が一番誤解しやすいのがここです。

冠水が30cm程度に見えると、
「タイヤの半分もないから行けそう」
と思いがちです。
でも、国土交通省の手引きでは、一般的に浸水深30cm以上では車の走行が困難とされています。

しかも実際の道路では、
・水深を目で正確に測れない
・側溝や段差が見えない
・流れがある
・対向車の波を受ける
といった条件が重なります。

防災士として率直に言えば、30cmは
「少し深い水たまり」
ではありません。
元消防職員としても、この深さから急に動けなくなるケースは現実にあります。
だから「30cmくらいなら大丈夫」とは考えない方が現実的です。

■③ 50cm前後は「立ち往生」では済まないことがある

国土交通省の手引きでは、50cm以上では車が浮いたり、車内に閉じ込められたりする危険が示されています。
さらにJAFの実験では、水深が深くなると水圧の影響でドアが開きにくくなり、脱出が難しくなることが示されています。

つまり50cm前後は、
・エンジン停止
・ドアが開かない
・車体が流される
・車内閉じ込め
へつながりやすい深さです。

防災士として言えば、50cmは
走れるかどうかを試す深さ
ではなく、
車を使わない判断を優先する深さ
です。
元消防職員としても、この段階では「少し無理すれば抜けられる」より「もう危険域に入っている」と見た方がいいです。

■④ 一番危ない場所は「アンダーパス」と「低い道路」

車での避難で特に危険なのが、
アンダーパス

周囲より低い道路
です。

気象庁の浸水キキクルの解説でも、危険度が高まると道路のアンダーパスに水が流れ込むおそれがあると示されています。
また、浸水キキクルで「警戒」や「危険」が出た段階では、道路冠水がいつ起きてもおかしくない状況として注意を呼びかけています。

防災士として率直に言えば、車避難で怖いのは
広い道路
より
低い場所へ吸い込まれる道路
です。
元消防職員としても、アンダーパスは「気づいた時には引き返しにくい」ため特に危険です。
迷ったら近づかない方がいいです。

■⑤ 車避難が相対的に有効なのは「かなり早い段階」だけ

では、車避難が全部だめかというと、そうではありません。

たとえば、
・高齢者や障害のある方がいる
・徒歩避難が難しい
・避難先が遠い
・まだ道路冠水が始まっていない
・明るいうちに移動できる
という条件なら、かなり早い段階での車移動が現実的なこともあります。

ただしこの場合も、
避難情報が出てから考える
のでは遅れやすいです。
気象庁は、大雨や台風への備えとして、水位上昇を見てから避難を始めると、氾濫や道路冠水で避難できなくなるおそれがあると注意しています。

防災士として言えば、車を使うなら
危険が見えてから
ではなく、
危険が形になる前
です。
元消防職員としても、車避難は「最後の手段」ではなく、「かなり前に決めてかなり前に動く手段」と考える方が安全です。

■⑥ 立ち往生しそうなら「無理に進まない」が最優先

車で避難中に前方が冠水していたり、渋滞や停滞が起きたりしたら、
一番大切なのは
無理に進まないこと
です。

国土交通省の手引きでも、車避難は渋滞を生み、円滑な避難や緊急車両の通行を妨げる危険があるとされています。
またJAFの実験からも、浸水が深くなると脱出は難しくなります。

防災士として率直に言えば、水害時の車で一番危険な判断は
「前の車も行っているから自分も行く」
です。
元消防職員としても、立ち往生は単独の問題ではなく、後続車や周囲まで危険に巻き込みます。
だから、怪しいと思った時点で進まない方が現実的です。

■⑦ 被災地経験から見ても「夜の車避難」は一段危険が上がる

被災地派遣やLO対応で強く感じたのは、
夜になると車避難の危険が一段上がる
ことです。

夜は、
・水深が見えにくい
・道路と水面の境が分かりにくい
・側溝や段差が見えない
・周囲の異常がつかみにくい
という条件が重なります。

元消防職員として率直に言えば、
昼なら避けられた冠水路も、夜だとかなり危険です。
だから、夜に悪化しそうな予報なら、
暗くなる前に移動を終える
か、
最初から車避難を前提にしない
方が現実的です。

■⑧ 迷った時の判断基準

車で避難するか迷った時は、次の順番で考えるとかなり実務的です。

  1. すでに道路冠水が始まっていないか
  2. アンダーパスや低い道路を通らないか
  3. 高齢者、障害者、乳幼児など徒歩避難が難しい事情があるか
  4. 明るいうちに移動を終えられるか
  5. 30cmでも危険と考えてルートを再確認したか

この中で一つでも不安が強いなら、
車を使わない判断
を優先した方が安全です。

防災士として言えば、車避難で大切なのは
行けるかどうか試すこと
ではなく、
行かない判断を早くすること
です。

■⑨ まとめ

水害時の車避難で最も大切なのは、“動けるうちに早く出ること”ではなく、“そもそも車を使う条件かどうかを先に見極めること”です。
国土交通省の手引きでは、一般的に浸水深30cm以上で車の走行が困難となり、50cm以上では車が浮いたり車内に閉じ込められたりする危険が示されています。気象庁も、道路冠水やアンダーパス流入のおそれがあるときは早めの安全確保を呼びかけています。

元消防職員として強く言えるのは、車避難で一番危ないのは
少しくらいなら行けると思ってしまうこと
です。
迷ったら、
・30cmでも危険
・50cmはかなり危険
・冠水路、アンダーパス、夜間は避ける
この感覚で判断するのが一番現実的です。

出典:国土交通省「水害ハザードマップ作成の手引き」

参考:JAF「水深何cmまでドアは開くのか?」

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