地震は誰にでも危険ですが、
特に命の危険が高いのは 「要配慮者」 と呼ばれる方々です。
- 高齢者
- 障がいのある方
- 乳幼児
- 妊婦
- 外国人
- 病気療養中の方
防災士として現場を見てきた経験から言うと、
“助けが必要な人ほど、支援が届きにくい”
という深刻な課題があります。
今回は、地震対策の課題⑥
「要配慮者支援体制の不足」 を解説します。
■① 地域ごとに支援レベルの差が大きい
要配慮者支援は自治体や地域で仕組みが違い、
全国で「支援実態の格差」が生まれています。
- 個別避難計画が進んでいない地域
- 名簿作成すらできていない地域
- 支援者(サポーター)が不足
- 担い手の高齢化
この差が、地震後の行動力の差になります。
■② 地震時は“自力避難が難しい”要配慮者が多い
地震発生時には、
要配慮者が自力で避難するのは非常に困難です。
- 歩行が難しい
- 介助が必要
- 車いすで段差を越えられない
- 言語が理解できない(外国人)
- パニックで動けない(子ども・障がい者)
- 妊婦は転倒リスクが高い
自力避難が難しい人ほど、
“近くに助けてくれる人が必要” です。
■③ 避難所が“要配慮者向け”になっていない
多くの避難所は一般向けの設計であり、
要配慮者が使いやすい環境にはなっていません。
- バリアフリーではない
- トイレが遠い
- プライバシーが確保されない
- ミルク・おむつが不足
- 多言語対応が不十分
- 精神的負担が大きい
特に避難所環境は大きな課題のひとつです。
■④ 外国人への情報伝達が困難
外国人住民が増加する中で、
- 日本語の防災情報しかない
- 専門用語が分からない
- 行政文書が難しい
- 避難指示の意味が通じない
など、言語の壁は大きな課題です。
災害時は“分かるまで待つ余裕がない”ため、
命を守る判断が遅れる危険があります。
■⑤ 個別避難計画(ISP)が進んでいない
2021年から法改正で
個別避難計画(ISP)作成が努力義務化 されましたが、
- 人手不足
- 名簿管理の難しさ
- 本人・家族の同意
- 地域の協力体制不足
などで、多くの自治体が追いついていません。
■⑥ プライバシーと支援の線引きが難しい
要配慮者名簿は「個人情報」であり、
- どこまで共有していいのか
- 町内会に渡していいのか
- 支援者は誰か
- 同意はどう取るか
といった問題が複雑です。
その結果、
地震時に支援ができないケースもあります。
■⑦ 支援者(サポーター)が不足している
要配慮者を支えるのは“人”ですが、
- 町内会の担い手不足
- 防災リーダーが高齢化
- 共助が衰退
- 支援に関する研修不足
これらが支援体制の弱体化につながっています。
■⑧ 地域での“日頃のつながり”が減っている
地震で助かる人の多くは、
日頃からつながりのある近所の人に助けられます。
しかし、
- 近所付き合いの希薄化
- アパート・マンションの関係が薄い
- 外国人コミュニティとの交流不足
などにより、
“困った時に誰に頼ればよいか分からない”
という問題が増えています。
■まとめ|要配慮者支援は“地域全体の命”を守る仕組みづくり
地震対策の課題⑥
「要配慮者支援体制の不足」 は、
大きな地震が来たときに最も深刻な問題です。
- 自力避難が難しい人が多い
- 情報が届かない人がいる
- 個別計画が進んでいない
- 避難所が対応しきれない
- 支援者の不足
- 地域のつながりの弱化
結論:
防災士として、要配慮者支援は“地域の命を守る仕組み”。普段から“誰を・誰が・どう助けるか”を決めておくことが最大の備えです。

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