【元消防職員が解説】防災×初期消火訓練|火災を“最も小さいうち”に止めるための実践スキル

火災は「最初の30秒」で運命が決まります。
消火器を正しく使えれば消える火も、
使い方がわからずに数十秒遅れるだけで、
一気に炎が天井へ燃え広がります。

初期消火訓練は、
“自分の手で消せる火”と“逃げなければならない火”を
見極めるための非常に重要な訓練です。

ここでは、消防現場の経験を踏まえて、
初期消火訓練のポイントを分かりやすく解説します。


■① 初期消火ができるかどうかは「火の大きさ」で決まる

初期消火が成功する火災には明確な条件があります。

  • 炎が天井に届いていない
  • 部屋中に煙が充満していない
  • 消火器がすぐ手に取れる位置にある
  • 逃げ道が確保されている

炎が 膝〜腰くらいの高さ なら、まだ初期消火可能。
胸以上の高さの炎や天井への到達 は迷わず避難が正解です。


■② 初期消火の基本は「火元に近づきすぎない」

訓練で最も間違えやすいポイントがこれです。

  • 炎のすぐ手前まで行く
  • 消火器のノズルを火の“上”に向ける

これでは消えません。

正しい位置は
火から3〜5m手前で構える → 徐々に近づく
炎ではなく、火元(可燃物)に向けて吹きかけるのが基本です。


■③ 消火器の正しい使い方「PASS(パス)」を覚える

世界共通の消火器操作の基本です。

  • P:Pull(安全ピンを抜く)
  • A:Aim(ノズルを火元に向ける)
  • S:Squeeze(レバーを握る)
  • S:Sweep(左右に振ってほうきのように掃く)

実際の訓練でも、この4つをゆっくり確実に行うことが重要です。


■④ 訓練で絶対に覚えておくべき「3つの判断」

●① 自分で消せる火か?

炎の高さ・煙の量・避難ルートで判断。

●② 消火より“通報”が先

初期消火に入る前に
必ず119番通報を他者に依頼すること。

●③ ダメならすぐに撤退

火災は30秒で倍々に拡大します。
1回消してみてダメなら、すぐ避難に切り替える勇気が必要です。


■⑤ 実際の訓練でありがちな失敗と改善ポイント

  • レバーを握り続けるため、すぐ薬剤が切れる
    → 1秒ごとに断続的に吹くと効果的
  • 火の“上の空気”に薬剤を撒く
    → 可燃物めがけて掃くように放射
  • 後ずさりしながら消す
    → 足元を見ずに転倒する危険あり
  • 煙を吸ってむせる
    → 姿勢を低く、風上から消火

訓練ではこれらを体験することが最も大切です。


■⑥ 家庭の初期消火で役立つもの

家庭では消火器以外にも役立つものがあります。

  • 住宅用消火器(軽くて扱いやすい)
  • キッチン用エアゾール消火具
  • 防火フード(油鍋の火災に有効)
  • 火災警報器(早期発見の鍵)

特にキッチン火災は多いため、
調理中にすぐ手に取れる位置に置くのが重要です。


■⑦ 初期消火訓練は“恐怖に慣れる”訓練でもある

訓練は技術だけでなく、心理面が非常に大きいです。

  • 突然の炎を見ても慌てない
  • 動作を体が覚えている
  • 判断を迷わない

これが生死を分けます。

実際の火災でパニックにならないためには、
何度も繰り返して体に覚えさせることが唯一の対策です。


■⑧ 初期消火訓練が職場・家庭で義務化される理由

火災のほとんどは「初期段階で止められたはずの火」。
消防統計では、
消火器1本で消せる火災は全体の7〜8割と言われます。

逆に言えば、
「訓練が無い=消せる火が消えない」ということ。

従業員・家族の命を守るうえで、
初期消火訓練は最優先の防災教育だと言えます。


■まとめ|初期消火ができる人がいるだけで、家族と職場は圧倒的に強くなる

  • 膝〜腰の高さまでなら初期消火のチャンス
  • 消火器は「PASS」で操作
  • 119通報 → 初期消火 → ダメなら撤退
  • 火元を狙う、近づきすぎない
  • 訓練は“恐怖に慣れる”ことが最大の目的

初期消火は、知識があれば誰でもできるものではありません。
訓練して初めて使えるスキルです。


■元消防職員から最後に

火災現場では、
「あと10秒早ければ消せていた」という場面を何度も見てきました。

初期消火訓練は、
あなた自身だけでなく、大切な家族・同僚・子どもを守る行動です。

今日できる一歩は――
→ 家の消火器の場所と使用期限を確認しておくこと。

これだけで、命を救う準備が一つ進みます。

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