火事が起きた時、
「とりあえず水をかければいいのでは」
と思う人は少なくありません。
たしかに、水は火を消す代表的な方法です。
でも、火災には水をかけてよい火と、水をかけると危険な火があります。
結論から言えば、火災時に水をかけていいケースは、木・紙・布などの普通火災が初期段階で、しかも油火災や通電中の電気火災ではない場合です。
逆に、天ぷら油火災や通電中の電気火災に水をかけるのは危険です。
さらに、火が天井に回るようなら、水かどうか以前に、もう初期消火の段階ではありません。
元消防職員として率直に言えば、火災で危ないのは、
「火を見たら水」と反射で動くこと
です。
東日本大震災当時に東京で被災し、その後の被災地派遣やLO対応でも強く感じるのは、命を守る判断はいつも「一拍置いて見極める」ことで大きく変わるということです。
火災でも同じです。
■① まず前提として、水をかけていいのは「普通火災」の一部
消防庁の住宅用消火器案内では、適応火災の例として
・木・紙
・布・布団
・天ぷら油
・コンセント
などが分けて表示されています。
これはつまり、火災には種類があり、
同じ消火方法で全部に対応するわけではない
ということです。
防災士として言えば、水をかけてよいのは、
・木材
・紙
・布
・くずかご
などの、いわゆる普通火災が中心です。
ただし、ここでも条件があります。
まだ初期段階で、退路が確保でき、火が大きくなっていないこと
です。
水をかけてよい火でも、拡大していたら避難が優先です。
■② 水をかけていい代表例①|紙・木・布が燃えている小さな火
一番分かりやすいのは、
・くずかごの紙が燃えた
・カーテンの端が少し燃えた
・木製品や布製品が小さく燃えている
といった火です。
こうした火は、水による冷却が効きやすく、初期段階なら消火しやすいです。
ただし、ここでも大切なのは、
火の大きさ
と
煙の量
です。
元消防職員として率直に言えば、水をかけてよい火でも、
・炎が高い
・煙が急に増えた
・熱くて近づけない
なら、もう「水で消す」より「逃げる」判断の方が現実的です。
■③ 水をかけていい代表例②|火元から電気が切れている器具まわり
ここは少し誤解されやすいです。
電気製品まわりの火災は、通電中かどうかでかなり違います。
通電中なら感電やショートのおそれがあるため、水は危険です。
一方で、電源を切り、コンセントを抜けていて、可燃物が燃えているだけなら、状況によっては水が使えることもあります。
たとえば、
・電気ケトル自体がガス火で燃えた
・すでに電源を切った器具の外装が燃えている
などは、火の性質を見て判断することになります。
ただ、元消防職員として率直に言えば、家庭でそこを瞬時に見極めるのは簡単ではありません。
防災士としては、
電気が関係していると感じたら、まず水を避ける
方が安全です。
■④ 水をかけてはいけない代表例①|天ぷら油火災
これは最重要です。
東京消防庁は、天ぷら油火災に水をかけると、
高温の油に入った水が一気に蒸発し、油をまき散らして炎が急拡大するため非常に危険
だと明記しています。
つまり、
・揚げ物中の鍋
・フライパンの油
・油の入った容器
から炎が出ている時に、水は使ってはいけません。
元消防職員として率直に言えば、キッチン火災で一番多い大失敗はこれです。
防災士として強く言えるのは、
油火災は「水をかけない」が最優先
だということです。
■⑤ 水をかけてはいけない代表例②|通電中の電気火災
コンセント、配線、家電などで火や煙が出ている時も、水は慎重に考えるべきです。
消防庁の住宅用消火器案内では、コンセント火災も適応火災として独立して示されています。
つまり、普通火災と同じ感覚で扱わない方がいいということです。
防災士として言えば、
・コンセントから火花
・配線まわりから発煙
・家電内部から火
のような場面では、まず
電源を切る、プラグを抜く、専用の消火器を使う
方向で考えた方が現実的です。
元消防職員としても、通電中の電気火災に水をかけるのは、火を消す前に自分を危険にさらすことがあります。
■⑥ 水をかける前に必ず見るべき3つの判断基準
火災時に水をかけてよいか迷ったら、最低でも次の3つを見ます。
1. 何が燃えているか
紙・木・布なのか、油なのか、電気なのか。
ここを間違えると危険です。
2. 通電中ではないか
電気が生きている可能性があるなら、水は避けた方が安全です。
3. まだ初期段階か
消防庁のeカレッジでは、初期消火の限界は天井に火が回るまでとされています。
つまり、火が大きくなっていたら、水かどうか以前に避難です。
元消防職員として率直に言えば、水をかける判断は、
火を見てからではなく、火の種類を見てから
です。
■⑦ 迷った時は「水をかけない」方が安全なことが多い
ここはかなり大事です。
家庭火災の初期対応では、火の種類を100%正確に見抜けないことがあります。
特にキッチンや家電まわりでは、
・油か
・電気か
・普通火災か
が混ざっていることもあります。
そういう時は、
とりあえず水
が危険です。
防災士として言えば、迷った時は
・周囲に知らせる
・退路を確保する
・適応する消火器があれば使う
・無理なら逃げる
の方が現実的です。
元消防職員としても、家庭火災では
消火の正確さより、判断の安全側
を取る方が助かりやすいです。
■⑧ まとめ
火災時に水をかけていいケースは、木・紙・布などの普通火災が初期段階で、しかも油火災や通電中の電気火災ではない場合です。
消防庁は住宅用消火器の適応火災として木・紙、布・布団、天ぷら油、コンセントなどを分けて示しており、適応しない火災に使うと拡大のおそれがあると案内しています。
東京消防庁は、天ぷら油火災に水をかけるのは非常に危険と明記しており、消防庁も初期消火の限界は天井に火が回るまでとしています。
元消防職員として強く言えるのは、火災時に大切なのは
「水を持つこと」ではなく「火の種類を見極めること」
だということです。
迷ったら、
・油には水をかけない
・電気にも安易に水をかけない
・普通火災でも初期段階だけ
・少しでも危険なら避難
この順番で考えるのが一番現実的です。
参考:消防庁「住宅用消火器」

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