災害が起きたとき、避難所ではなく車の中で過ごす「車中泊避難」を選ぶ人は少なくありません。家が危険、避難所が満員、ペットがいる、家族だけで落ち着いて過ごしたい。理由はさまざまです。実際、内閣府は在宅避難者や車中泊避難者も支援の対象として位置づけ、地方公共団体が把握と支援を行うことの重要性を示しています。 (bousai.go.jp)
ただし、車中泊避難は「プライバシーがあるから安心」と単純には言えません。狭い空間に長時間とどまることで、健康被害や生活環境の悪化が起きやすくなります。特に長期化は望ましくなく、内閣府は車中泊避難について、健康被害の発生が懸念されることから注意点や危険性の周知、保健師等による健康管理、早期解消を目指すことが必要だとしています。 (bousai.go.jp)
この記事では、車中泊避難の注意点を、家庭で判断しやすい形で整理して解説します。
■① 車中泊避難はいつ選んでよいのか
結論から言うと、車中泊避難は「仕方なく選ぶ避難」であって、最初から最適解とは限りません。
内閣府の手引きでは、車中泊避難は支援の対象として明確に位置づけられていますが、同時に健康被害のリスクがあり、長期化は望ましくないとされています。 (bousai.go.jp) つまり、防災の考え方としては「どうしても必要な場合に選ぶ一時的な避難」が基本です。
たとえば、家が危険で戻れない、避難所にすぐ入れない、ペット同伴や家族事情ですぐに他の避難先を確保できない、という場合は現実的な選択肢になります。ただし、「避難所が苦手そうだから」「なんとなく自由そうだから」で選ぶと、あとから体調や生活面で苦しくなりやすいです。
■② 車中泊避難で最も注意すべき危険は何か
最も注意したいのは、静脈血栓塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群です。
厚生労働省は、脱水や長時間同じ姿勢で足を動かさない状態が続くと、血行不良から血液が固まりやすくなり、深部静脈血栓症や肺塞栓症につながるおそれがあると示しています。 (mhlw.go.jp) 内閣府の車中泊避難者支援資料でも、エコノミークラス症候群等の健康被害リスクを回避・低減する広報や支援が必要とされています。 (bousai.go.jp)
元消防職員としてお伝えすると、車中泊避難で怖いのは「その場では何とか過ごせているように見えること」です。ですが、じわじわ体に負担がたまり、ある日急に体調を崩すことがあります。だから、車中泊は“休めているようで休めていない避難”になりやすい点を知っておくことが大切です。
■③ 車中泊避難を避けた方がいい人はいるのか
はい。特に慎重に考えた方がよい人がいます。
内閣府の検討資料では、妊産婦等のハイリスクの方は車中泊を避けるべきであり、健康影響を考慮して検討する必要があるとされています。 (bousai.go.jp) また、高齢者、持病のある方、障害のある方、乳幼児連れなども、暑さ寒さやトイレ、姿勢保持、睡眠の面で負担が大きくなりやすいです。
つまり、車中泊避難は「誰にでも同じように使える避難方法」ではありません。家族の中に要配慮者がいる場合は、一般避難所、福祉避難所、親族宅、ホテル避難など他の選択肢を優先して考えた方が安全です。
■④ 車の中ではどう過ごすべきか
車中泊避難では、できるだけ同じ姿勢を続けないことが大切です。
厚生労働省は、長時間同じ姿勢を避け、足を動かす軽い運動や適度な水分摂取を行うことを勧めています。 (mhlw.go.jp) 内閣府も、弾性ストッキングの配布や保健師等による健康管理の必要性を示しています。 (bousai.go.jp)
つまり、車中泊では「とにかくじっとして休む」だけでは不十分です。こまめに足首を動かす、可能なら外に出て短時間歩く、水分を取る、体を伸ばす。こうした小さな行動がかなり重要です。休むことと、血流を止めないことは両立させた方が安全です。
■⑤ 夏と冬で何に注意すべきか
車中泊避難は季節によって危険が変わります。
内閣府の検討資料では、夏季は高温や熱中症、冬季は低温や、積雪でマフラーが埋まることによる一酸化炭素中毒への注意が必要とされています。 (bousai.go.jp) 車は密閉性が高いぶん、外気の影響を受けやすく、暑さ寒さが生活に直結します。
そのため、真夏は日陰や風通し、こまめな換気、熱中症対策を優先し、真冬は防寒と排気まわりの安全確認が重要です。車内でエンジンをかけたまま過ごす発想は、一酸化炭素中毒や燃料消費の面からも慎重に考えた方がいいです。
■⑥ トイレや衛生はどう考えるべきか
車中泊避難では、トイレが近くにあることがかなり重要です。
車そのものは寝る・休む空間にはなっても、排せつや手洗い、着替えまで快適に回せるわけではありません。内閣府の手引きでは、車中泊避難者を集約して支援するスペースを検討・公表し、必要な支援を行うことが重要とされています。 (bousai.go.jp)
つまり、車中泊を考えるなら「どこに停めるか」がかなり大事です。安全な場所か、トイレが使えるか、物資や情報が届くか、支援の対象として把握されやすいか。この条件がそろっていない車中泊は、かなり厳しくなります。
■⑦ 車中泊避難でやってはいけないことは何か
一番避けたいのは、「少しの不便だから」と長引かせることです。
内閣府は、長期的な車中泊避難は望ましくなく、早期の解消を目指すべきとしています。 (bousai.go.jp) にもかかわらず、プライバシーが保てる、周囲に気を使わなくてよいといった理由で、体調の変化を無視して続けると危険が大きくなります。
また、水分を控える、トイレを我慢する、ずっと座席で同じ姿勢を続ける、夜通しエンジンをかける、という行動も避けたいところです。こうした行動は、車中泊避難のリスクをさらに上げます。
■⑧ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「車中泊以外の安全な避難先は本当にないか」
「家族の中に車中泊を避けるべき人はいないか」
「トイレ・情報・支援につながる場所に停められるか」
「これは一時的な避難として考えているか」
この4つがそろっていれば、車中泊避難はやむを得ない選択肢として成り立ちやすいです。逆に、どれかが大きく欠けるなら、別の避難先を優先した方が安全です。
■まとめ
車中泊避難は、災害時の現実的な選択肢の一つですが、決して安全で楽な避難方法とは言えません。内閣府は、車中泊避難者も支援対象として位置づけつつ、健康被害のリスクがあるため、注意喚起と健康管理、そして早期解消が必要だとしています。 (bousai.go.jp)
特にエコノミークラス症候群、熱中症、寒冷、トイレ、衛生の問題は大きく、妊産婦などのハイリスクの方は車中泊を避けるべきとされています。 (mhlw.go.jp)
私なら、車中泊避難は「気楽な避難」ではなく「条件がそろった時だけ使う短期の避難」だと伝えます。被災地でも、車は安心感がある一方で、体にはかなり負担がかかります。だからこそ、車中泊を選ぶなら、短く、安全に、支援につながる形で行うことが大切です。

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