【防災士が解説】防災×記憶の復興|水害が奪ったものと、再び取り戻せたもの

災害は、人の命だけでなく、思い出や記憶までも奪っていきます。
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備地区。
その地で、水没し泥にまみれた一台の赤いスポーツカーが、7年の時を経て再び走れる姿を取り戻しました。

それは、亡き息子の形見として大切にされていた「日産フェアレディZ」でした。


水害リスクは地域によって大きく異なります。お住まいの地域のハザード状況を地図で事前に確認しておくと、いざという時の判断が速くなります。地域のハザードマップを地図で確認することができます。

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■① 西日本豪雨が奪ったのは「物」だけではなかった

西日本豪雨では、多くの住宅や車が水没しました。
しかし被災者が失ったのは、単なる財産ではありません。

写真、手紙、思い出の品。
そして、亡くなった家族との“心のつながり”。

真備地区で水没したフェアレディZも、単なる旧車ではなく、
交通事故で亡くなった息子の存在を今につなぐ「形見」でした。


■② 形見の車が水没した現実と、諦めの時間

豪雨後、フェアレディZは泥をかぶり、錆び、輝きを失いました。
一時は「処分もやむを得ない」と考えざるを得なかったといいます。

災害後、多くの被災者が同じ選択を迫られます。
・保管する余裕がない
・修理費が高額
・心の整理がつかない

防災の現場では、こうした「見えない喪失」が数多く存在します。


■③ 災害ボランティアがつないだ「もう一度走らせたい」という想い

転機となったのは、災害ボランティアとして現地を訪れていた学生の存在でした。

「形見のZを復活させたい」

その想いを受け止めたのが、自動車整備を学ぶ学生たちです。
彼らはプロジェクトを立ち上げ、修復に挑むことを決意しました。

災害ボランティアは、瓦礫撤去や清掃だけではありません。
心に寄り添う支援も、確かな防災・復興の一部です。


■④ 約3年半、60人以上が関わった修復の道のり

修復を担ったのは、日産京都自動車大学校の学生たちでした。
2021年から約3年半、延べ60人以上が関わり、

・錆びた部品の修理
・交換部品の選定
・一つ一つの調整作業

を積み重ねていきました。

これは単なる技術実習ではなく、
「人の想いを形に戻す作業」でもありました。


■⑤ 災害復興は「元に戻す」だけではない

復興という言葉は、建物やインフラの復旧を想像しがちです。
しかし本質は、

・心の整理
・記憶の回復
・人とのつながりの再生

にあります。

フェアレディZの修復は、
被災者にとって「時間が止まっていた記憶」を再び動かす出来事でした。


■⑥ 防災士として見た「支援の本当の価値」

防災の現場では、
「命を守る」ことが最優先です。

しかし、命が守られた後に続く生活の中で、
人を支えるのは“心の拠り所”です。

形見、写真、思い出の品。
それらが残るかどうかで、立ち直りの速度は大きく変わります。


■⑦ 防災で本当に考えるべき「残したいもの」

防災対策というと、
・備蓄
・耐震
・避難計画

が注目されます。

しかし同時に考えるべきなのは、
「自分にとって失いたくないものは何か」という視点です。

それは高価な物とは限りません。
思い出や記憶こそが、人を前に進ませます。


■⑧ 防災は「未来」と「過去」の両方を守る行為

防災は、未来の命を守るための行動です。
同時に、過去から受け継いだ大切なものを守る行為でもあります。

水害で失われたはずのフェアレディZが再び走り出したように、
人の想いは、支え合いによって再生します。


■まとめ|災害後に残るのは「人と想い」

災害は、突然すべてを奪います。
しかし、人の手と想いがあれば、取り戻せるものもあります。

結論:
防災とは、命だけでなく「生きる意味」を守る取り組みである

防災士として数多くの被災地を見てきましたが、
最後に人を支えるのは、物でも制度でもなく「人の想い」でした。

このフェアレディZの物語は、
防災の本質を静かに、しかし力強く教えてくれています。

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