【防災士が解説】被災時に本当に役立つ備えは何?モバイルバッテリーより見落とされやすい“生活用水”の判断基準

災害への備えというと、多くの人がまず思い浮かべるのは、食料、水、懐中電灯、モバイルバッテリーではないでしょうか。
もちろんそれらは大切です。
ただ、結論からいうと、在宅避難を本気で考えるなら、見落としやすいのは「飲み水」よりむしろ「生活用水」です。

今回の調査では、被災時に最も役立った備えとして「雨水貯留タンク」が1位でした。
普段はあまり注目されない設備ですが、トイレの洗浄や洗い物など、生活を続けるための水の確保が、在宅避難の質を大きく左右することが見えてきます。

元消防職員として被災地を見てきた感覚でも、避難生活で後からじわじわ効いてくるのは、派手な装備不足より、水回りと衛生が回らないことです。
防災は「生き延びる備え」だけでなく、「生活を壊さない備え」まで考えた方が強いです。

■① 一番の盲点は「生活用水」かもしれない

多くの家庭は、災害備蓄というと飲料水を意識します。
それ自体は正しいです。
ただ、在宅避難で本当に困りやすいのは、飲む以外の水です。

たとえば、

  • トイレを流す
  • 手を洗う
  • 汚れを落とす
  • 最低限の清潔を保つ

こうした場面では、かなりの水が必要になります。

今回の調査で雨水貯留タンクが「役に立った備え」1位だったのは、まさにこの部分が足りなくなりやすいからです。
つまり、
飲み水だけでは在宅避難は回らない
ということです。

■② なぜモバイルバッテリーより上に来たのか

モバイルバッテリーは、今や多くの家庭が持っています。
実際、所持率は高い備えの一つです。
それでも「最も役に立った」で上位に来なかったのは、スマホの充電より前に、生活の基本が止まるからです。

トイレが流せない。
手が洗えない。
洗い物ができない。
この状態は、数時間なら我慢できても、1日、2日と続くとかなり厳しくなります。

防災では、どうしても電気の話が目立ちます。
でも現場感覚では、
水と衛生が崩れるストレスは非常に大きい
です。

■③ 在宅避難を選ぶ人が増えていることも重要

今回の調査では、避難指示が出た場合でも「自宅に留まる」が「避難所へ行く」を上回っていました。
特に50代以上では、在宅避難を選ぶ傾向がより強く見られています。

その背景には、

  • 自宅の方が安全だと思う
  • 避難所で生活したくない
  • ペットがいる
  • 留守宅が心配

といった理由があります。

つまり、今の防災では、
「避難所に行く前提」だけでは足りず、「自宅で耐える前提」も必要
ということです。

■④ 在宅避難で一番不安なのは何か

今回の調査で、在宅避難の不安として最も多かったのは「トイレが使えないこと」でした。
これはとても現実的な結果だと思います。

停電や情報不足ももちろん大きな不安ですが、トイレの問題は、我慢だけでは解決できません。
家族が多いほど、高齢者がいるほど、子どもがいるほど、切実になります。

元消防職員として感じるのは、災害後の生活では、
人は“我慢できるもの”より“我慢できないもの”から苦しくなる
ということです。

トイレ、衛生、水。
ここを軽く見ない方がいいです。

■⑤ 雨水貯留タンクがなくても考えておきたいこと

もちろん、すべての家庭が雨水貯留タンクを今すぐ導入できるわけではありません。
ただ、この調査から学ぶべきなのは「必ず設置すべき」という一点ではなく、
生活用水をどう確保するかを考えておく必要がある
ということです。

たとえば、

  • 浴槽に水をためる習慣
  • ポリタンクやバケツの準備
  • 簡易トイレの備蓄
  • 断水時の使い分けの整理

こうした工夫でも差が出ます。

設備があれば強いですが、設備がなくても考え方は取り入れられます。

■⑥ 在宅避難は「家にいれば安心」ではない

在宅避難を選ぶ人は増えていますが、家にいるだけで安心とは限りません。
調査でも、余震や二次災害、停電、情報不足への不安が大きいことが示されています。

つまり在宅避難は、
避難しなくて済む楽な選択肢ではなく、自宅で生活を維持するための備えが必要な選択肢
です。

特に、

  • 家の耐震性
  • トイレ対策
  • 停電対策
  • 情報収集手段
  • 家族との連絡手段

ここが揃っていないと、自宅にいてもかなり厳しくなります。

■⑦ 被災地で本当に差が出るのは「生活の継続力」

被災地では、大きな備えより、小さな継続力が効くことがあります。
たとえば、

  • 1回分のトイレ対策がある
  • 少しでも生活用水がある
  • 夜に明かりがある
  • 情報が取れる
  • 体を清潔に保てる

こうしたことが、避難生活のしんどさを大きく変えます。

被災地派遣でも、最初の1日は何とかなることが多いです。
ただ、2日目、3日目になると、生活を回せるかどうかがじわじわ効いてきます。
だからこそ、防災は
「助かる備え」だけでなく「続けられる備え」
まで考えた方が現実的です。

■⑧ 今日から見直したい備え

この調査を見て、今日から見直したいのは次のような点です。

  • 飲料水だけでなく生活用水の確保方法を考える
  • トイレ対策を具体化する
  • モバイルバッテリーだけで満足しない
  • 在宅避難をするなら家の条件を確認する
  • ペットや高齢家族がいる場合の生活継続を考える

防災は、流行りのグッズを増やすことではありません。
自分の暮らしで何が止まると困るかを考えること
が出発点です。

■まとめ

今回の調査で見えてきたのは、被災時に本当に役立つ備えは、必ずしも「みんなが持っているもの」とは限らないということです。
特に在宅避難では、生活用水の確保が思っている以上に重要です。

本当に大事なのは、
「防災グッズを持っているか」ではなく、「家で生活を続けられるか」
です。

モバイルバッテリーも大事です。
でも、それだけでは在宅避難は回りません。
トイレ、水、衛生、情報、この4つをどう維持するか。
そこまで考えておくことが、これからの家庭防災ではかなり重要だと思います。

出典:大和ハウス工業 総合技術研究所「災害の多様化と意識調査(被災経験者2678人)」

コメント

タイトルとURLをコピーしました