【防災士が解説】訓練済みボランティアは何が違うのか|PTSDリスクを下げる心構えの判断基準

災害ボランティアに行く人の中には、
「現場で心が折れないか不安」
「つらい場面を見た時、自分は大丈夫なのか」
「訓練を受けた人と受けていない人で何が違うのか」
と気になる人が少なくありません。

結論から言えば、訓練済みボランティアの強さは、“メンタルが特別に強いこと”ではなく、“現場で起こり得ることを少し先に知っていて、崩れた時の戻し方を持っていること”です。
日本赤十字社の防災ボランティア基礎研修では、災害時の基礎知識や実技だけでなく、ボランティア自身の心の問題を軽減するためのこころのケアも事前に学ぶ時間が設けられています。
また、内閣府の避難生活支援リーダー/サポーター研修も、オンデマンド事前学習と演習で構成されています。
厚生労働省のPFAでも、支援者は休息、食事、水分、つながり、自分に役立つ対処法を整えることが重視されています。

防災士として率直に言えば、災害支援で後から崩れやすい人は、弱い人ではありません。
むしろ、真面目で、責任感が強く、頑張れる人ほど危ないことがあります。
元消防職員として被災地派遣やLO対応を経験すると、現場では平気でも、帰ってから不眠、無気力、イライラ、フラッシュバックとして出る人はいます。
だから、訓練の意味は「怖がらなくなること」ではなく、怖さや反応を前提に動けるようになることだと考えた方が現実的です。

■① まず前提として、訓練の目的は“強い人を作ること”ではない

災害ボランティアの研修というと、
・知識を増やすもの
・作業技術を学ぶもの
と思われがちです。
もちろんそれも大事です。

ただ、日本赤十字社の防災ボランティア基礎研修では、災害時におけるボランティアの心の問題を軽減するため、こころのケアについて事前に学ぶ時間が設けられています。
つまり、研修は「作業力」を上げるだけでなく、支援者自身が崩れにくくするための準備としても考えられています。

防災士として言えば、訓練の目的は「メンタルを最強にすること」ではありません。
むしろ、
何が起こり得るかを知り、反応が出てもおかしくないと理解しておくこと
の方が大事です。

■② 訓練済みボランティアが違うのは“現場の見通し”を持っていること

訓練を受けていない人が現場でつらくなりやすい大きな理由の一つは、想像と現実の差です。

被災地では、
・思った以上に生活感が壊れている
・においや空気が重い
・被災者の言葉に返せなくなる
・支援の限界に直面する
といったことが起こります。

内閣府の研修が、事前学習と演習の組み合わせになっているのは、こうした「現場で起こり得ること」に先に触れておく意味が大きいからだと考えられます。

元消防職員として率直に言えば、訓練済みの人は、ショックを受けないわけではありません。
ただ、想定外が少し減るので、その分だけ崩れにくいです。
ここはかなり大きいです。

■③ 訓練済みボランティアが違うのは“自分の反応”を知っていること

厚生労働省のPFAでは、支援者自身が過去に役立った対処法を思い出すこと、休息や水分、食事、つながりを確保することが重視されています。
これは、支援に入る前から自分の整え方を知っておくことが大切だという意味でもあります。

訓練済みの人は、たとえば
・疲れると黙る
・寝不足でイライラしやすい
・食欲が落ちやすい
・つらい時に一人で抱え込みやすい
といった、自分の崩れ方を先に意識しやすいです。

防災士として言えば、PTSDリスクを下げる心構えで一番大切なのは、
自分は何をきっかけに崩れやすいか
を知っておくことです。
訓練済みボランティアの強さは、ここにかなりあります。

■④ 訓練済みボランティアが違うのは“無理の止め方”を知っていること

災害支援では、頑張ろうと思えばいくらでも頑張れてしまいます。
だから危ないです。

訓練を受けていないと、
「みんな頑張っているから自分も」
「これくらいで休むのは申し訳ない」
「自分だけ抜けるわけにはいかない」
と考えやすくなります。

でも、厚生労働省のPFAが支援者のセルフケアとして休息やつながりを重視しているのは、無理を続けることが良い支援につながらないからです。

元消防職員として率直に言えば、現場で本当に強い人は、限界まで我慢する人ではありません。
危ない時に一歩引ける人です。
訓練済みボランティアは、この「止める判断」を持ちやすいです。

■⑤ PTSDリスクを下げる心構え①|“反応が出てもおかしくない”を先に持つ

ここはかなり大事です。
災害支援後に出やすい反応には、
・不眠
・悪夢
・食欲低下
・イライラ
・集中力低下
・現場の再体験
などがあります。

訓練済みボランティアの心構えで強いのは、
こうした反応は異常ではなく、起こり得るものだ
と先に理解していることです。

防災士として言えば、ここを知らないと、反応が出た時に
「自分は弱い」
「向いていなかった」
と二重に苦しくなります。
だから、まずは「反応が出てもおかしくない」を前提にした方が現実的です。

■⑥ PTSDリスクを下げる心構え②|帰還後まで含めて計画する

訓練を受けている人ほど、現地だけでなく帰ってからも意識しています。

たとえば、
・帰宅後1〜3日は予定を詰めない
・睡眠、食欲、気分を確認する
・一緒に活動した人と短く振り返る
・必要なら相談先につなぐ
といったことです。

防災士として率直に言えば、災害支援のダメージは「終わってから出る」ことがあります。
だから、PTSDリスクを下げる心構えとしては、
支援が終わった時点で終わりにしない
ことがかなり重要です。

■⑦ PTSDリスクを下げる心構え③|一人で整理しようとしない

厚生労働省のPFAは、つながりや支え合いをかなり重視しています。
これは、支援者にもそのまま当てはまります。

訓練済みボランティアが比較的崩れにくいのは、
・話す相手を決めている
・帰宅後に共有する習慣がある
・相談することを失敗だと思っていない
からです。

元消防職員として言えば、災害支援後に一番危ないのは、
「自分で整理できるはず」と思って抱え込むこと
です。
だから心構えとしては、
「一人で頑張る」より
つながりを残す
の方がずっと大切です。

■⑧ まとめ

訓練済みボランティアの強さは、特別にメンタルが強いことではなく、現場の見通しと、自分の崩れ方、そして戻し方を知っていることです。
日本赤十字社の防災ボランティア基礎研修では、基礎知識や実技に加えて、ボランティア自身の心の問題を軽減するためのこころのケアも事前に学びます。
内閣府の避難生活支援リーダー/サポーター研修も、事前学習と演習で構成されています。
厚生労働省のPFAでも、休息、食事、水分、つながり、自分に役立つ対処法を整えることが重視されています。 (jrc.or.jp) (bousai.go.jp)

防災士として強く言えるのは、PTSDリスクを下げる心構えで一番大切なのは、
「自分は反応しない」と思うことではなく、「反応が出ても戻れる準備を持つこと」です。
迷ったら、まずは
・現場で起こり得ることを知る
・自分の崩れ方を知る
・帰還後の戻し方を決める
この3つを持ってから行く。
それが一番現実的です。

出典:日本赤十字社香川県支部「赤十字防災ボランティア基礎研修会を開催」

参考:厚生労働省「心理的応急処置(PFA)フィールド・ガイド」

コメント

タイトルとURLをコピーしました