(元消防職員・防災士)
病院、福祉施設、学校、避難所、工場──
災害時に電力を支えるのが 非常用発電機 です。
しかし、消防現場では
「いざという時に発電機が動かなかった」
というトラブルが毎年必ず発生します。
停電時に発電機が作動しないと、
照明・エレベーター・医療機器・通信がすべて停止し、
施設の安全が一瞬で崩れます。
この記事では、なぜ非常用発電機が動かないのか、
そして事前にできる安全対策を防災士の視点で解説します。
■ 1. 非常用発電機が“動かない”主な理由5つ
非常用発電機が作動しない原因の多くは、
施設側の“準備不足”にあります。
◎ ① 燃料の劣化
ディーゼル燃料は長期間放置で劣化し、
エンジンがかからなくなる。
◎ ② バッテリーの劣化
自動車と同じで、バッテリーが弱ると始動しない。
◎ ③ 給排気口の塞がり
・物置化
・落ち葉
・雪
これらで排気が詰まり、エラーで停止。
◎ ④ 冷却ファンが故障
夏場の災害では熱暴走し、停止するケースが多い。
◎ ⑤ 定期点検不足
半年・年次点検をしていない施設は特に危険。
“発電機がある=動く”ではありません。
発電機は「手入れしないと動かない設備」です。
■ 2. 停電時に発電機が動かないと何が起きる?
消防現場で実際に起きたトラブルは下記です。
◎ ① 照明がつかず避難が混乱
真っ暗の中で誘導ができず、転倒事故が多発。
◎ ② エレベーターが再起動しない
高齢者の避難が極端に遅れる。
◎ ③ 医療機器が停止
人工呼吸器や吸引器が使用できないケースも。
◎ ④ 通信機器が不通
館内放送も、Wi-Fiも使えず、情報が途絶える。
◎ ⑤ ポンプが停止し、断水・トイレ使用不能
建物の生活機能が完全に止まる。
非常用発電機は“施設の命綱”です。
動かないというのは、ほぼ“機能停止”と同じ意味になります。
■ 3. 非常用発電機の“誤った使い方”
災害時、次の行為は事故につながります。
◎ ① 燃料不足で無理に再起動
空気噛みを起こし、エンジンが故障。
◎ ② 途中で給油しようとする
発電中の給油は火災の大きな原因。
◎ ③ 窓を閉め切って運転
CO(一酸化炭素)中毒の危険。
◎ ④ 排気口周辺に物を置く
過熱し、火災につながる。
“とりあえず動かす”ではなく、
安全に運用する仕組みづくりが重要。
■ 4. 施設が災害前に必ず行うべきチェック
今日からできるものはコレです。
◎ ① 燃料タンクの量を確認
半分以下なら補給を検討。
◎ ② 月1回の試運転
5分〜10分でも稼働させると劣化が防げる。
◎ ③ バッテリー交換周期の把握
2〜4年で交換が必要。
◎ ④ 給排気経路の遮蔽物を撤去
公園の落ち葉・倉庫の物・ゴミを片付ける。
◎ ⑤ 年1回の専門点検を依頼
外部業者による点検が最も信頼できる。
これは避難所や学校でも重要な対策です。
■ 5. 発電機の音がしない=故障?それとも正常?
停電時、発電機の音がしないと焦りますが、
次のケースがあります。
◎ 【正常】自動切替の遅れ
作動に10〜30秒かかる。
◎ 【正常】小型インバーター方式で静音タイプ
近年は“静かな非常用発電機”も増えている。
◎ 【異常】フューズ切れ・バッテリー切れ
ランプの点灯やエラー表示を確認する必要あり。
音だけで判断せず、メンテ情報と併せて確認します。
■ 6. 自治体・学校・避難所の“ありがちな問題点”
現場では、次のようなケースが多いです。
◎ 発電機の鍵が見つからない
→ いざ始動しようとしても開かない。
◎ 担当者が使い方を知らない
→ スイッチの位置すらわからず稼働遅れ。
◎ 避難所の電源が複雑
→ 発電はできても、どこにつながっているかわからない。
◎ 点検記録が更新されていない
→ 故障リスクが高い。
発電機=命綱であるにも関わらず、
「誰も使い方を知らない」という現場は非常に多いのが現実です。
■ 7. まとめ
非常用発電機が動かないのは、
設備の問題より“管理不足”が原因 です。
✔ 燃料・バッテリー・給排気の劣化が主原因
✔ 動かないと建物の機能が一気に停止
✔ 無理な再始動・給油は重大事故に
✔ 月1試運転+年1点検で故障率を激減
✔ 鍵・担当者・マニュアルの位置は“全員共有”
災害時、非常用発電機が動くかどうかで
“施設の安全度” は大きく変わります。
今日からできる点検で、
あなたの職場・地域・避難所を守りましょう。

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