危険物は、私たちの生活や産業を支える一方で、ひとたび事故が起きれば甚大な被害をもたらします。
その最前線にあるのが、道路を走る「移動タンク貯蔵所」です。
消防庁が実施した最新の立入検査結果は、危険物輸送に潜むリスクが、決して過去の話ではないことを示しています。
■① 移動タンク貯蔵所の立入検査とは
移動タンク貯蔵所とは、タンクローリーなど、危険物を貯蔵・移送するための車両です。
消防法に基づき、構造・設備・運用について厳格な基準が定められています。
今回の立入検査は、全国の消防機関が連携し、基準への適合状況や運転者の安全認識を確認する目的で実施されました。
■② 数字が示す現状|約13%が基準不適合
検査結果によると、基準不適合などが認められた車両は 12.97%。
前年より改善はしたものの、依然として約8台に1台が問題を抱えている計算です。
この割合は、事故が起きれば即「危険物災害」に直結する分野としては、決して低い数字ではありません。
■③ 深刻化する無許可車両の増加
特に注目すべきは、無許可車両が63台確認された点です。
これは前年より14台増加しています。
違反内容の約6割を占めていたのが、
・注入ノズルを無許可で変更
・手動開閉装置を開放状態で固定できるよう改造
といった事例でした。
現場経験上、こうした改造は「作業効率」を理由に行われることが多く、事故リスクを軽視した結果であるケースが少なくありません。
■④ 最も多い違反は「定期点検の不備」
立入検査で最も多く指摘されたのは、定期点検に係る義務違反(875台)でした。
これは前年よりも増加しています。
定期点検は、事故を未然に防ぐ最後の砦です。
ここが形骸化すると、劣化や不具合が見逃され、重大事故につながります。
■⑤ 道路上での検査が示す現実
検査は、常置場所だけでなく、道路上や積卸し場所でも実施されています。
これは、実際に危険物を運搬している「その瞬間」が最もリスクが高いからです。
現場では、
「普段は問題ないと思っていた」
という声が多く聞かれますが、検査結果はその認識が甘いことを示しています。
■⑥ 危険物事故は“想定外”では済まない
移動タンク貯蔵所の事故は、
・火災
・爆発
・有毒ガスの発生
など、周辺住民を巻き込む災害に直結します。
被災地で活動してきた経験からも、危険物事故は初動の遅れが被害拡大につながりやすい災害です。
■⑦ 行政と事業者に求められる視点
消防庁は、危険物安全週間などを通じて、事業者への継続的な指導を求めています。
しかし、指導だけでは限界があります。
重要なのは、
・現場で働く人の安全意識
・ルールを守る文化
・「違反しなければいい」から「事故を起こさない」への発想転換
です。
■⑧ 防災としての結論
今回の立入検査結果は、
「数字が改善しているから安心」
という話ではありません。
危険物輸送は、
一度の油断が社会全体を危険にさらします。
防災とは、災害が起きた後の対応だけでなく、
起きないように止めることです。
移動タンク貯蔵所の安全確保は、
目立たないけれど、社会を支える極めて重要な防災対策の一つです。

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