夏に地震が起きて避難所生活になると、熱中症は「気をつけましょう」で終わる話ではありません。暑さ、湿気、睡眠不足、食欲低下、断水、停電が重なると、避難所では普段より熱中症が起きやすくなります。しかも、避難所では「少しだるいだけ」「疲れているだけ」と見過ごされやすく、対応が遅れることがあります。
だからこそ大切なのは、「熱中症っぽい」と思った時に、すぐ動ける順番を持っておくことです。この記事では、夏の地震で避難所にいる時に熱中症を疑った場合の応急処置を、家庭で判断しやすい形で整理して解説します。
■① 最初に考えるべきことは「様子を見る」ではなく「熱中症かもしれない」と疑うこと
結論から言うと、最初に大切なのは、暑さの中で体調が崩れたら熱中症をまず疑うことです。
環境省の「熱中症環境保健マニュアル」では、高温環境下での体調不良はすべて熱中症の可能性があると示されています。症状としては、めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、頭痛、吐き気、だるさ、意識が何となくおかしい、まっすぐ歩けない、意識がない、などが挙げられています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
元消防職員として感じるのは、避難所では「疲れているだけだろう」と判断が遅れやすいことです。ですが、熱中症は早く気づいて冷やせるかどうかで、その後がかなり変わります。だから、まずは「おかしい」と思った時点で、暑さの影響を疑う方が安全です。
■② 熱中症を疑った時の応急処置は何から始めるべきか
最初にやるべきなのは、涼しい場所へ移すことです。
環境省の応急処置リーフレットでは、熱中症になったときの基本として、まず「すぐに涼しい場所へ移動する」ことが示されています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_ov_04.pdf
つまり、応急処置の出発点は、水を飲ませることより先に、暑い環境から離すことです。日陰、風通しのよい場所、冷房のある部屋、扇風機の近くなど、少しでも熱をためにくい場所へ移すだけでかなり違います。
■③ 応急処置の基本手順は何か
熱中症を疑った時は、次の順番で考えると整理しやすいです。
・涼しい場所へ移す
・衣服をゆるめる
・体を冷やす
・自分で飲めるなら水分・塩分を補給する
・一人にしないで見守る
・よくならない、または重そうなら救急要請する
環境省のマニュアルでは、涼しい場所へ避難し、服をゆるめ、体を冷やし、水分・塩分を補給することが基本とされています。さらに、誰かが付き添って見守り、よくならなければ医療機関を受診、意識障害などがあれば救急車要請と示されています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
■④ 体はどこを冷やせばよいのか
冷やすなら、首の両側、脇の下、足の付け根が基本です。
環境省のマニュアルでは、体表近くに太い血管がある場所として、前頸部の両脇、腋の下、足の付け根の前面を冷やすことが効果的だと説明しています。保冷剤や氷枕がなければ、冷えたペットボトルや缶をタオルでくるんで当てる方法も示されています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_2-3_2-4.pdf
消防庁も、冷却パックを使う場合は脇の下、太ももの付け根、首などに当てると効果的だと案内しています。
https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/05kobetsu/02/05_02_24.html
私なら、避難所では「冷たい物が少ししかない」ことも多いので、まず首元と脇を優先して冷やします。その方が限られた道具でも効かせやすいです。
■⑤ 水分は飲ませた方がいいのか
自分でしっかり飲めるなら、水分と塩分の補給は重要です。
環境省のリーフレットでは、自分で水が飲める場合には、冷たい水分や塩分の補給を行うことが示されています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_ov_04.pdf
ただし、環境省のマニュアルでは、自力で水分の摂取ができない場合は緊急で医療機関に搬送することが最優先とされています。吐いている、意識がぼんやりしている、呼びかけへの返事がおかしい、ぐったりして飲めない場合は、無理に飲ませない方が安全です。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_2-3_2-4.pdf
■⑥ 救急車を呼ぶべきサインは何か
迷わず119番した方がよいのは、意識がおかしい、意識がない、けいれんがある、自分で水が飲めない、脱力感が強くて動けないといった場合です。
消防庁は、意識がもうろうとしている、体温が極端に高いなどの症状がある場合、すぐに119番通報するよう案内しています。また、意識がない、全身のけいれんがある、自分で水が飲めない、強い倦怠感で動けない場合には、ためらわず救急要請が必要だと示しています。
https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/05kobetsu/02/05_02_24.html
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r5/report2/66797.html
元消防職員としては、ここで一番危ないのは「呼びすぎたら悪い」とためらうことだと感じます。重症の熱中症は命に関わるので、迷うくらいなら早めに救急へつなぐ方が安全です。
■⑦ 避難所でやってはいけないことは何か
一番避けたいのは、暑い場所に寝かせたまま様子を見ることです。
もう一つは、意識がはっきりしない人や吐いている人に無理に飲ませることです。環境省のマニュアルでは、自力で飲めない場合には点滴が必要になるため、医療機関搬送が優先だとされています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_2-3_2-4.pdf
私なら、避難所で熱中症の応急処置をする時に一番大事なのは「とりあえず寝かせておく」ではなく、「冷やしながら見守り、悪ければすぐ119番」と伝えます。被災地でも、応急処置の遅れはそのまま重症化につながりやすかったです。
■⑧ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で見てください。
「暑い場所からすぐ離せているか」
「首・脇・足の付け根を冷やせているか」
「自分で飲める状態か」
「意識・返答・歩き方に異常がないか」
この4つが整理できると、避難所での熱中症時の応急処置はかなり動きやすくなります。防災では、完璧な医療判断より「危ないサインを見逃さないこと」の方が大切です。
■まとめ
夏の地震で避難所にいる時の熱中症時の応急処置で大切なのは、「少し休めば治るだろう」と考えないことです。環境省は、熱中症を疑ったらまず涼しい場所へ移し、服をゆるめ、体を冷やし、自分で飲めるなら水分・塩分補給をすることを示しています。さらに、自力で水分が取れない、意識がおかしい、けいれんがあるなどの場合は救急搬送が必要だとされています。消防庁も、意識がもうろう、強い脱力感で動けない場合にはためらわず119番するよう案内しています。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_ov_04.pdf
https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/05kobetsu/02/05_02_24.html
私なら、夏の避難所の熱中症時の応急処置で一番大事なのは「様子を見ること」ではなく「冷やしながら、重いサインを見たらためらわず119番すること」だと伝えます。被災地でも、熱中症は静かに悪化することがありました。だからこそ、まずは涼しい場所、次に冷却、その次に飲めるか確認。この順番で動くのがおすすめです。
出典:https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_ov_04.pdf(環境省「熱中症になったときの応急処置」)

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