夏に地震や豪雨で避難する時、熱中症対策というと水分補給や室温管理ばかりが注目されがちです。ですが、実際には心が先に疲れて、体の判断が遅れることがあります。暑い、眠れない、先が見えない、家族が気になる、周囲に気を使う。こうした負担が重なると、水分補給や休息のタイミングまで後回しになりやすくなります。
災害時の精神保健医療に関する厚生労働省のマニュアルでも、被災者に見られる情動反応の多くは、異常な事態に対する正常な反応であり、そのことを本人に伝えることが重要だと整理されています。つまり、避難中に不安、イライラ、涙もろさ、無気力、眠れなさが出ること自体を、すぐに「弱い」「自分だけおかしい」と考えすぎない方がよいです。
https://www.mhlw.go.jp/content/000772550.pdf
つまり、夏の避難中の心のケアで大切なのは、「不安をゼロにすること」ではなく、不安で体の行動まで止めないことです。この記事では、その判断基準を現実的な順番で整理して解説します。
■① まず結論として、心のケアで最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、不安を我慢しすぎず、体の基本行動を止めないことです。
避難中は、「しっかりしなければ」「家族を守らなければ」と気を張り続けやすいです。ですが、気持ちが張り詰めるほど、水を飲まない、休まない、眠れない、食べられない、といった形で体の方が崩れやすくなります。
元消防職員として感じるのは、被災地で本当に危ないのは「強く不安を感じること」そのものより、「不安のせいで基本の行動が止まること」だという点です。私なら、夏の避難では
①まず一口飲む
②次に座る
③そのあと不安を言葉にする
この順を大事にします。心を立て直す時も、体の土台が先だからです。
■② なぜ夏の避難では心が崩れやすいのか
理由は、暑さ・疲労・寝不足・先の見えなさが一緒に来るからです。
夏の避難では、ただ不安なだけでなく、体も同時に消耗します。暑い、汗が気持ち悪い、眠れない、音が気になる、家族のことが心配、いつ戻れるか分からない。こうした負担は、ひとつずつは小さく見えても、重なるとかなり効きます。
被災地派遣の現場でも、避難者が急に泣き出したり、逆に何も言わなくなったりすることがありました。ですが、それは「おかしい反応」ではなく、普通の人が異常な状況に置かれた時に起こる自然な反応と考えた方が現実的です。だから、自分や家族の変化を必要以上に責めない方が安全です。
■③ どんな反応が出てもおかしくないのか
避難中には、次のような反応が出ても不思議ではありません。
・不安が強い
・イライラする
・涙もろくなる
・頭が働かない感じがする
・ぼんやりする
・何もしたくなくなる
・眠れない
・周囲と話したくなくなる
こうした反応は、暑さや疲れが加わるとさらに強く出やすいです。私なら、こういう反応が出た時に「自分はだめだ」と考えるより、「今はそうなりやすい状況なんだ」と捉える方をすすめます。その方が次の行動へ戻りやすいです。
■④ 心のケアで最初に役立つ行動は何か
最初に役立つのは、体を少し落ち着かせる行動です。
たとえば、水を飲む、顔や首を拭く、日陰や風の通る所へ移る、座る、深呼吸する、誰かと短く話す。こうしたことは単純ですが、かなり効きます。心のケアというと、深い話や特別な支援を想像しやすいですが、避難直後はむしろ「体を少し戻す」ことの方が現実的です。
私なら、「落ち着かなきゃ」と無理に考えるより、「まず一口飲む」「少し風に当たる」を先にやります。被災地でも、心が張り詰めている時ほど、体から戻した方が整いやすかったです。
■⑤ 一人で抱え込まない方がいいのか
はい。短い言葉でも、人につなぐ方が安全です。
「ちょっとしんどい」「少し休みたい」「子どもを少し見てほしい」「水を取りに行きたい」といった一言だけでも、かなり違います。大きな相談でなくてもいいです。避難中は、全部を一人で抱えるほど心も体も崩れやすくなります。
元消防職員としても、被災地では「我慢していた人」ほど後から急に落ちることがありました。だから、心のケアで大事なのは、立派に話すことではなく、「少し困っている」とつなぐことです。
■⑥ 子どもや高齢者の心のケアでは何を見ればいいのか
子どもや高齢者では、言葉より変化を見た方がよいです。
子どもなら、急に黙る、べったり離れない、逆に落ち着きなく動き続ける、怒りっぽくなる。高齢者なら、会話が減る、食べない、動きたがらない、ぼんやりする。こうした変化は、暑さや疲労だけでなく、心の負担でも起こります。
私なら、「何か言っているか」より「いつもと違うか」で見ます。その方が早く気づけます。避難中は、心の不調が体のだるさとして出ることも多いからです。
■⑦ 避難所で心のケアのために避けたいことは何か
一番避けたいのは、無理に平気なふりを続けることです。
もう一つは、「自分より大変な人がいるから」と全部を飲み込むことです。もちろん助け合いは大切ですが、自分が崩れると、結果として家族や周囲も支えにくくなります。
私なら、心のケアでは「我慢が美徳」とは考えません。夏の避難では、暑さだけでも体力を削られます。そこに感情まで押し込めると、かなりきつくなります。だから、「少し休みたい」「今はしんどい」と言える方が現実的です。
■⑧ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「不安のせいで、水分・食事・休息が止まっていないか」
「一人で抱え込みすぎていないか」
「子どもや高齢者に“いつもと違う変化”が出ていないか」
「今の反応を“異常”と決めつけすぎていないか」
この4つが整理できれば、夏の避難中の心のケアとしてはかなり現実的です。防災では、「不安を消すこと」より「不安の中でも体を止めないこと」の方が大切です。
■⑨ まとめ
夏の熱中症から避難中に身を守る心のケアで大切なのは、不安やイライラをゼロにすることではなく、不安で水分補給や休息まで止めないことです。厚生労働省の災害時精神保健医療に関するマニュアルでは、被災者に見られる情動反応の多くは異常な事態に対する正常な反応であり、そのことを本人に伝えることが重要と整理されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000772550.pdf
私なら、夏の避難で一番大事なのは「強くあろうとし続けること」ではなく「不安があっても、飲む・休む・話すを止めないこと」だと伝えます。被災地でも、心が張り詰めた人ほど体が先に落ちることがありました。だからこそ、まずは一口の水、次に少し座る、最後に一言つなぐ。この順番で整えるのがおすすめです。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000772550.pdf(厚生労働省「自治体の災害時精神保健医療福祉活動マニュアル」)

コメント