消防士を目指している人が、かなり強く気になるのが
「火災現場って実際どれくらい危険なのか」
という点です。
熱い。
煙が危ない。
崩れる。
爆発する。
こうしたイメージはありますが、実際にどんな危険がどの程度あるのかまでは見えにくいです。
結論から言えば、火災現場は確かに危険です。
ただし、その危険は「炎があるから危ない」という一言では足りません。
本当に危険なのは、
酸欠、高温水蒸気、フラッシュオーバー的な急激な熱環境変化、落下物、荷崩れ、床面の滑り、視界不良、長時間活動による熱中症や疲労が、複数同時に起き得ることです。
元消防職員として率直に言えば、火災現場の危険は、気合いや根性で何とかするものではありません。
危険の種類を知り、基本を守り、隊として動き、安全管理を徹底して初めて近づける仕事です。
だから「火災現場は危ないか」と聞かれたら、答えはYesです。
ただしそれは、無謀に飛び込む仕事だからではなく、危険を管理しながら活動する仕事だからです。
■① まず前提として、火災現場の危険は“ひとつではない”
火災現場というと、まず炎や熱を思い浮かべやすいです。
もちろんそれも大きな危険です。
ただ、消防庁が消防本部へ出している安全管理の再徹底通知を見ると、火災現場の危険はもっと多面的です。
たとえば、
・無窓建物や冷凍倉庫等の酸欠
・延焼中の室内へ放水した際の高温水蒸気噴出
・荷崩れ
・天井の照明器具や装飾品の落下
・油で滑る床
・長時間活動による熱中症
などが、具体的な事故例とともに示されています。
元消防職員として言えば、火災現場が本当に危ないのは、
危険が単独ではなく、重なって来ることです。
熱いだけならまだ分かりやすいです。
でも実際は、熱・煙・視界不良・足場不良・疲労が一緒に来ます。
そこが現場の怖さです。
■② 一番軽く見てはいけないのは“見えない危険”
火災現場で怖いのは、目に見える炎だけではありません。
むしろ、見えない危険の方が厄介です。
消防庁の通知でも、無窓建物や冷凍倉庫など密室に近い室内火災では、酸欠状態になっていることが多く、必ず呼吸器を着装して進入することが示されています。
つまり、火が見えていなくても危険な空間は普通にあります。
元消防職員として率直に言うと、火災現場では
「見た目で大丈夫そう」
がかなり危ないです。
煙の奥の状態、酸素濃度、熱のたまり方、構造物の弱り方は、外から見ただけでは分かりません。
だから火災現場では、勇気よりも警戒心を切らさないことの方が大事です。
■③ 高温水蒸気や熱の変化は、想像以上に危ない
火災現場の危険として、一般の人にあまり伝わりにくいのが、熱環境の急変です。
消防庁の通知では、延焼中の室内へ放水を開始した際、激しく高温の水蒸気が噴き出して顔面に熱傷を負った事例が示されています。
元消防職員として言えば、火災現場の熱の危険は、
「近づいたら熱い」
だけではありません。
急に熱が跳ねる、蒸気が来る、体感が一気に変わることがあります。
だから火災現場は、単に耐火服を着ていれば安心というものではありません。
熱の動き、放水位置、開口部の取り方、退避方向など、細かい安全管理が必要です。
ここを甘く見るとかなり危ないです。
■④ 倒壊・落下・荷崩れの危険もかなり大きい
火災現場の危険というと、炎や煙ばかりが目立ちます。
でも、消防庁通知では、
・天井の照明器具や装飾品の落下
・倉庫での荷崩れ
・壁体の剥離
・高窓進入時の転倒
なども具体的に示されています。
元消防職員として率直に言うと、火災現場では
“燃えているもの”そのものより、“燃えたことで弱くなった構造や積載物”がかなり怖いです。
たとえば倉庫火災なら、段ボールや荷物が崩れる危険があります。
工場や機械室なら、床面や設備の状態が悪化していることがあります。
つまり火災現場は、燃焼物だけでなく、空間全体が危険化していると考えた方が現実的です。
■⑤ 足元・視界・姿勢の崩れが事故につながりやすい
消防庁通知には、
・油がしみ込んで滑りやすい床
・劇場や映画館等の傾斜や段差
・倉庫内での確認困難
など、足元や視界に関する危険も多く示されています。
元消防職員として見ても、火災現場の事故は、派手な爆発や倒壊だけではありません。
滑る、つまずく、段差を見失う、姿勢を崩すといった地味なことでも普通に起こります。
しかも、熱、煙、重装備、緊張、焦りが重なる中で起きるので、平時の転倒とは重さが違います。
だから火災現場では、走れるかどうかより、足元を雑にしないことの方が重要な場面がかなり多いです。
■⑥ 長時間活動による熱中症と疲労も無視できない
消防庁の通知では、大規模倉庫火災など長時間に及ぶ現場活動では熱中症等に十分注意することが示されています。
つまり、火災現場の危険は出火直後だけではありません。
現場が長引くほど、疲労や脱水、判断力低下の危険も増します。
元消防職員として率直に言えば、火災現場で本当に怖いのは、
「危険物がある場所」
だけではなく、
自分たちが疲れていくことです。
疲れがたまると、返事が雑になる、確認が抜ける、足元が甘くなる、無理を押しやすくなる。
だから火災現場では、体力がある人より、疲労の中でも基本を崩さない人の方が強いです。
■⑦ それでも活動できるのは“隊で安全管理するから”
ここはかなり大事です。
火災現場が危険なのは事実です。
でも、だからといって無秩序に突っ込むわけではありません。
消防庁が安全管理を繰り返し通知しているのも、消防本部ごとに安全管理マニュアルや訓練を整備しているのも、危険を減らすための仕組みがあるからです。
火災現場で活動できるのは、
呼吸器着装
進入基準
退避判断
連絡
隊活動
基本訓練
があるからです。
元消防職員として率直に言うと、火災現場の危険を前にして本当に大切なのは、
「勇敢さ」
より、
基本を崩さないことです。
勝手な判断、自分だけの無理、過信が一番危ないです。
■⑧ 被災地や現場経験から言うと、“怖さを失わないこと”が大事
元消防職員として現場や被災地対応を通して強く感じるのは、火災現場で危ないのは、臆病な人より、怖さに慣れすぎた人です。
もちろん毎回怖がって動けないのでは困ります。
でも、火災現場に対して
「これくらい大丈夫」
「いつもの感じだろう」
と雑に入る感覚はかなり危険です。
火災現場は毎回違います。
建物も違う、収容物も違う、熱の回り方も違う、煙の出方も違う。
だから、本当に強い消防士は、怖がらない人ではなく、怖さを踏まえて基本を守れる人です。
■⑨ まとめ
火災現場は確かに危険です。
しかもその危険は、炎や熱だけではなく、酸欠、高温水蒸気、落下物、荷崩れ、滑りやすい床、視界不良、疲労、熱中症など、多層的です。
消防庁も、消防本部に対して警防活動時等における安全管理の再徹底を繰り返し通知しており、火災現場での事故類型を具体的に示しています。
つまり、火災現場の危険は「なんとなく危ない」ではなく、実際に何が危ないかがかなり明確な現実の危険です。 (fdma.go.jp)
元消防職員として強く言えるのは、火災現場で本当に大切なのは、
勇気そのものではなく、危険を知り、隊として動き、基本を崩さないことです。
迷ったら、火災現場が危ないかどうかより、
その危険を管理しながら動く仕事だと理解できるか
を判断基準にした方が、ずっと現実的です。

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