【元消防職員・防災士が解説】防災×ビル管理④|“停電に強いビル”をつくるための対策ポイント

災害時にビルが機能不全に陥る最大の要因は「停電」。
電気が止まると、照明・空調・給水・エレベーター・通信すべてがストップし、ビルは一気に“動けない建物”になる。
ここでは、停電に強いビルをつくるための実践ポイントをまとめる。


■① 非常用発電機は“動く状態”が当たり前ではない

非常用発電機は、整備しなければ必ず劣化する。

● 年1回の負荷試験(実際に電気を流す訓練)
● 燃料タンクの水分混入チェック
● 排気ダクトの目詰まり点検
● 始動用バッテリーの寿命管理

災害時に「発電機が回らない」はビル管理の最悪パターン。
日常点検がすべてを左右する。


■② 受変電設備の浸水対策は最優先

水害が増えている今、電気室の浸水は最も危険。

● 電気室のかさ上げ
● 止水板・止水パッキンの設置
● 排水ポンプの常時稼働確認
● 配電盤の位置見直し(地下→地上階へ)

電気室が浸水すると、復旧まで数週間〜数か月。
“沈む前提で守る”対策が必要。


■③ UPS(無停電電源装置)は全館を救う

停電直後の“数分〜数十分”の電力確保は非常に重要。

● 防災センターのモニター
● 通信機器・Wi-Fi
● 電気錠・防犯カメラ
● 館内アナウンス機器

これらが即停止すると、混乱が一気に広がる。
UPSの導入で災害時の初動が安定する。


■④ エレベーター停止を前提にした館内運営

停電した瞬間、エレベーターは必ず止まる。

● 閉じ込め対応マニュアル
● 警備会社・保守業者の即時連絡体制
● 階段誘導の案内表示
● 高齢者・車いす利用者への支援フロー

高層ビルほど“停止後の行動”が生存率を左右する。


■⑤ 給水・トイレの機能保持はビルの“生命維持”

電気が止まると、水も止まるビルは多い。

● 直結給水 or 受水槽の仕様確認
● ブースターポンプの非常電源化
● 断水時トイレの緊急対応(携帯トイレ)
● 地下ピットの排水管理

水は「ビルの血液」。
電源喪失でも最低限の維持が必要。


■⑥ テナントと“停電時ルール”を共有しておく

停電時の混乱は、多くが“テナントの知らなさ”から生まれる。

● シャッターは自動で開かない
● POSレジのバックアップ指導
● 冷蔵・冷凍庫の保存時間
● 暗所での転倒防止策

災害時は管理側だけで建物を守れない。
テナントが協力する構造が必要。


■⑦ 停電時の館内アナウンスが“混乱の分岐点”

適切なアナウンスがあるだけで人の動きが整う。

● 初動アナウンスのテンプレート化
● 「エレベーターは使えません」の明確告知
● 階段誘導の強化
● 待機場所の案内

停電時の人の不安は強烈。
言葉が建物の安全を守る。


■まとめ|停電対策は“施設管理の根本”

ビルが災害に強くなるかどうかは、停電対策の質で決まる。
電源が確保できなければ、どれだけ最新設備でも機能しない。

● 発電機の確実な運用
● 電気室の防水
● UPSによる初動安定
● エレベーター停止前提の運営
● 給水・排水の維持
● テナントとのルール共有

停電への備えができているビルは、災害に強いビルである。
防災力の根本は“電源を守ること”にある。

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