【防災士が解説】学生ボランティアの震災支援後に不調が残るのはなぜか|回復までのリアルプロセスを見極める判断基準

学生ボランティアとして震災支援に入ったあと、
「授業に戻ったのに集中できない」
「周りは普通に戻っているのに、自分だけ引きずっている感じがする」
「眠れないわけではないけど、前の自分に戻った感じがしない」
と感じる人は少なくありません。

結論から言えば、学生ボランティアの支援後不調は、弱さではなく、“強い体験のあとに心と体が追いついていない状態”として起こり得ます。
特に学生は、授業、課題、実習、アルバイト、人間関係など、日常へ戻るスピードが速いため、回復の途中でも「もう平気なふり」をしやすいです。
だから、支援後の回復は「気合いで元に戻す」より、段階的に整理していく方が現実的です。

防災士として率直に言えば、学生ボランティアは行動力があり、思いも強い分だけ、反動も出やすいです。
元消防職員として被災地派遣やLO対応を経験すると、現場で頑張れた人ほど、帰ってから無気力、不眠、イライラ、集中力低下として出ることがあります。
だから学生だから軽い、若いから回復が早い、と決めつけない方がいいです。

■① まず前提として、学生でも支援前から感情は大きく揺れる

看護学生を対象にした研究では、震災体験をした学生たちは、災害支援ボランティアに参加する前から、被災者への共感と同時に、否定的感情やためらいも持っていたことが示されています。
そのうえで、参加を決める上では、
・利己的動機の認識と受容
・参加意義の置き換え
・仲間との思いの共有
・代理経験
が重要だったとされています。

つまり、学生ボランティアは最初からまっすぐ強い気持ちだけで動いているわけではなく、迷いと責任感の間で揺れながら参加していることが分かります。
だから、支援後に心が揺れるのも不自然ではありません。

■② 学生ボランティアが支援後に崩れやすい理由①|日常への切り替えが急すぎる

社会人ボランティアより、学生がしんどくなりやすい場面の一つはここです。
支援から戻ると、すぐに授業、課題、実習、試験、人間関係に戻ることがあります。

そのため、
・気持ちはまだ現場に引っ張られている
・でも周囲は通常運転
・自分も早く戻らないといけない
という圧力がかかりやすいです。

防災士として言えば、支援後の回復には余白が必要です。
でも学生は、その余白を取りにくいことがあります。
その結果、
回復途中のまま日常に押し戻される
感じが起きやすいです。

■③ 学生ボランティアが支援後に崩れやすい理由②|“自分だけ違う感じ”を抱えやすい

支援から帰ったあと、学生が苦しくなりやすいのは、周囲との温度差です。

たとえば、
・友人の普通の会話に入れない
・軽い話題に違和感がある
・支援の話をしても伝わりきらない
・かえって話さない方が楽に感じる
といったことです。

先ほどの研究でも、学生にとっては「仲間との思いの共有」がかなり重要でした。
逆に言えば、共有できない状態は負担になりやすいです。

元消防職員として率直に言えば、現場経験は、言葉にしづらいまま残ることがあります。
学生ボランティアも同じで、「分かってもらえない感じ」が続くと、人間関係から少し引きやすくなります。

■④ 学生ボランティアが支援後に出しやすい反応

学生ボランティアの不調は、特別な一つの形ではなく、かなり日常的な崩れとして出ます。

たとえば、
・授業に集中できない
・提出物に手がつかない
・人に会うのがしんどい
・食欲が落ちる
・眠りが浅い
・イライラする
・逆に何も感じない
といった形です。

日本赤十字社の防災ボランティア基礎研修でも、ボランティア自身の心の問題を軽減するためのこころのケアが扱われていることからも、支援者側の反応は前提として想定されていると考えた方がいいです。

■⑤ 回復までのリアルプロセス①|最初は“疲れ”として出る

支援後の初期は、まず疲労として出ることが多いです。

・眠い
・だるい
・頭が重い
・何もしたくない
・ぼんやりする

この段階では、多くの人が
「疲れただけだろう」
と考えます。
もちろんそれもあります。
でも、防災士として言えば、この段階で無理に通常運転へ戻そうとすると長引きやすいです。

回復の最初は、しっかり休むと少し戻るかを見ることが大切です。

■⑥ 回復までのリアルプロセス②|少し遅れて感情や対人関係に出る

少し時間がたつと、感情の揺れや対人関係のしんどさが出てくることがあります。

・家族や友人に当たりやすい
・人に会いたくない
・無気力
・支援のことを話したくない
・逆に何度も話してしまう

防災士として率直に言えば、この段階で「自分はおかしいのでは」と思いやすいです。
でも、ここはかなり自然な流れでもあります。
大切なのは、ここで完全に孤立しないことです。

■⑦ 回復までのリアルプロセス③|少しずつ“話せる・動ける”が戻る

回復は、ある日突然元通りになるより、
・少し眠れる日がある
・短い授業なら集中できる
・信頼できる人とは話せる
・少し食べられる
といった形で戻ることが多いです。

つまり、回復を見る時は、
「完全に元通りか」
ではなく、
前より少し動ける瞬間が増えているか
で見た方が現実的です。

元消防職員として言えば、現場のあとに大事なのは、ゼロか百かで見ないことです。
学生ボランティアの回復も同じです。

■⑧ 学生ボランティアに必要なケアは“共有・余白・記録”

学生の回復でかなり大事なのは、次の3つです。

1. 共有

一緒に活動した仲間、信頼できる友人、教員、支援団体などに短くでも話すことです。
研究でも「仲間との思いの共有」が重要でした。

2. 余白

帰還直後に予定を詰め込みすぎないことです。
少しでも授業や予定の負荷を調整できるなら、その方が整いやすいです。

3. 記録

睡眠、食欲、感情、集中力を短くメモすることです。
「戻ってきているか」が見えやすくなります。

防災士として率直に言えば、学生ボランティアの回復は、気合いより仕組みです。

■⑨ 相談した方がいい目安

次のような場合は、早めに相談先を持った方がいいです。

・1〜2週間たっても授業や課題に大きく支障がある
・不眠や悪夢が続く
・食欲がかなり落ちている
・無気力やイライラが強い
・人間関係を切りたくなる
・現場の記憶が急によみがえる

日本赤十字社や厚生労働省が、こころのケアやPFAの中で早期の支援やつながりを重視しているのも、悪化を防ぐためです。
学生の場合は、学内の相談室、保健センター、教員、支援団体など、使える窓口を早めに持った方がいいです。

■⑩ まとめ

学生ボランティアの震災支援後不調は、弱さではなく、強い体験のあとに心と体が追いついていない状態として起こり得ます。
看護学生を対象にした研究では、学生たちは被災者への共感と否定的感情の両方を持ち、災害支援参加には「仲間との思いの共有」などが重要だったことが示されています。
また、日本赤十字社の防災ボランティア基礎研修でも、ボランティア自身の心の問題を軽減するためのこころのケアが扱われています。

防災士として強く言えるのは、学生ボランティアの回復で大切なのは、
一気に元に戻ることではなく、
共有し、少し休み、少しずつ戻るプロセスを持つこと
です。
迷ったら、
・眠れているか
・食べられているか
・授業に集中できるか
・人と話せるか
この4つを見て、戻りが弱いなら早めにつながる。
それが一番現実的です。

出典:日本看護学教育学会誌「看護学生の災害支援ボランティア参加に至る情緒的プロセスと動機づけ」

参考:日本赤十字社香川県支部「赤十字防災ボランティア基礎研修会を開催」

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