日本では、目の不自由な人が安全に歩くための専門職である
歩行訓練士(視覚障害生活訓練指導員)が、全国的に深刻に不足しています。
この問題は平時の自立支援にとどまらず、災害時の生死に直結する防災課題です。
■① 視覚障害者27万人に対し、歩行訓練士は約200人しかいない
厚生労働省の調査によると、
全国の視覚障害者は約27万人いる一方で、
実働可能な歩行訓練士は約200人にとどまっています。
さらに、
・4県は訓練士ゼロ
・14県は1人のみ
という地域もあり、
多くの自治体が県外派遣に頼っているのが現状です。
■② 災害時、歩行訓練を受けているかどうかで「行動の差」が出る
被災地の現場では、
避難行動において次の差がはっきり出ます。
・白杖での安全な歩行ができる
・段差や交差点での判断ができる
・一人で避難所にたどり着ける
これらは、歩行訓練を受けた経験があるかどうかで大きく変わります。
訓練を受けられていない場合、災害時は「動けない」こと自体が最大のリスクになります。
■③ 被災地で見た「支援が届く前に起きる危険」
災害発生直後は、
支援が整うまでに必ず空白の時間が生まれます。
被災地では、
・避難誘導が追いつかない
・声かけが行き届かない
・周囲も混乱している
という状況の中で、
視覚障害者が取り残される危険を何度も目にしました。
■④ 歩行訓練士不足は「見えにくい防災の弱点」
歩行訓練士は、
白杖歩行だけでなく、
・災害時の移動練習
・避難経路の確認
・生活動線の再構築
なども支援します。
つまり、平時の自立支援そのものが、防災力の底上げになります。
それにもかかわらず、
養成機関は全国に2か所のみというのが現実です。
■⑤ なぜ増えないのか──構造的な問題
訓練士が増えない背景には、
・専門職としての知名度不足
・半年以上の長期研修が必要
・研修費・滞在費の自己負担
・報酬や待遇の低さ
といった構造的な課題があります。
これは個人努力では解決できない問題です。
■⑥ 防災として考える「支援者不足」というリスク
防災は、
物資や避難所だけの話ではありません。
・誰が支えるのか
・専門職が足りているか
・地域で補完できる体制があるか
これらが欠けると、
災害弱者ほど早く追い込まれる現実があります。
■⑦ 防災は「当事者だけの問題」ではない
被災地で感じたのは、
障がい者支援の不足は、
そのまま地域全体の混乱につながるということです。
支えられない状況は、
周囲の人の負担と不安も一気に増やします。
■⑧ 今日できる、防災×障がい者支援の最小アクション
・地域に視覚障害者がいることを知る
・避難所での声かけを意識する
・支援職不足という現実を共有する
それだけでも、
「見えない防災リスク」に気づく第一歩になります。

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