火災現場では、住民だけでなく
消防隊員自身が危険に陥るケース が少なくありません。
倒壊、バックドラフト、ホース絡まり、酸欠、迷失…。
その時に消防隊員を救うために編成されるのが
RIT(Rapid Intervention Team)=緊急介入チーム です。
海外で確立された考え方ですが、
日本でも大規模火災・複雑建物で導入が進んでいます。
この記事では、専門知識ゼロでも理解できるように
RITの役割・必要性・活動内容・編成 を解説します。
■ ① RIT(リット)とは?
火災現場で“消防隊員を救助するため”だけに配置される特別チーム。
RITは消火活動には参加せず、
常に 隊員の安全確保・緊急救助 に専念する。
● RITの目的
・建物内で遭難した消防隊員を迅速に救出
・バックドラフトや倒壊などの二次災害を防ぐ
・隊員の脱出ルートを確保
・隊員の位置把握(パーソナルトラッカーなど)
言い換えると、
“消防の消防” を専門に行う隊。
■ ② なぜRITが必要なのか?
消防隊員の死傷事故の多くは
「突然の危険による孤立・脱出不能」。
● よくある危険
・天井・床の崩落
・煙による迷失
・ホース絡まり
・酸欠、熱気の滞留
・機器の故障
・出火源の急激な変化(フラッシュオーバー)
こうした状況は 一瞬 で隊員を追い込み、
助けに向かう同僚も危険に晒す。
そこで、
専任の救助部隊=RIT が重要になる。
■ ③ RITの構成・装備
RITは通常、4〜6名 の精鋭で編成される。
● 主な装備
・予備空気ボンベ
・レスキューロープ
・サーマルカメラ(熱画像装置)
・救助担架
・斧・ハリガンツール・バール
・パーソナルロケーター(隊員位置特定器)
・切断工具
・ガス検知器
・ホースライン確保装備
“救助”に特化した装備を持ち、
消火ではなく 人命救助専門 として行動する。
■ ④ RITの主な活動内容
● ① 隊員の位置特定
無線が使えない時でも、
・熱画像カメラ
・ロープ索道
・音、呼気、振動
などで位置を探し出す。
● ② 救助ルートの確保
倒壊・高熱・濃煙でも進めるよう
バール・斧・チェーンソーで道を開く。
● ③ 隊員の救出
負傷・意識不明でも迅速に担架へ。
ボンベ交換や気道確保も実施。
● ④ 空気供給
空気が切れかけた隊員に
予備ボンベを接続して延命。
● ⑤ 緊急脱出支援
隊員が絡んだホース・落下物から解放し、
脱出ルートまで誘導。
■ ⑤ RITが活動しやすくする“現場の鉄則”
● ① ホースラインは必ず整理
絡まると救助の妨げになる。
● ② 隊員の位置連絡(MAYDAY報告)
「迷った」「負傷した」「出口が分からない」
→ 即座にMAYDAYコール。
● ③ 指揮系統の一本化
RIT用の専任指揮官を置くと事故が激減。
■ ⑥ 日本ではどう活用されている?
日本の制度では「RIT」と明確な名称は少ないが、
内容としては 救助隊・安全管理要員(セーフティオフィサー) として
多くの消防本部が導入済み。
大規模火災・高層建築・複雑建物では
「RIT班」や「安全救助隊」などとして運用している。
■ ⑦ まとめ|RITは“消防隊員を守る最後の砦”
覚えておくべきポイントは3つ。
✔ RITは“消防隊員を救助するための専門チーム”
✔ 救助・位置特定・空気供給・脱出支援が任務
✔ 消火ではなく“隊員の生存率を上げる”のが目的
建物火災は、火よりも“想定外の危険”が隊員を追い詰めます。
その時に命を救うのが RITの存在 です。

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