火災で亡くなる原因の多くは、
炎よりも 煙・熱・有毒ガス によるものです。
その中でも特に危険なのが 気道熱傷(きどうねっしょう)。
これは、熱い空気や煙を吸い込むことで、
喉・気管・気道が“内側から焼ける”非常に重い傷害です。
外見に火傷がなくても、
吸い込んだ熱だけで短時間で命を奪うことがあります。
防災士として、気道熱傷の仕組み・症状・対策をわかりやすくまとめます。
■ ① 気道熱傷とは?
火災で発生した高温の空気や煙を吸い込み、 気道内(喉〜気管〜肺)が焼けること。
火災現場では空気が100〜300℃に達しており、
吸い込んだ瞬間に粘膜がダメージを受けます。
気道は粘膜でできているため、高温に弱く、
短時間で腫れて“空気の通り道が塞がる”ため非常に危険です。
■ ② なぜ命に関わるのか?
● ① 気道が腫れて呼吸できなくなる
吸い込んだ熱で粘膜が腫れ、
空気の通り道が狭くなり、窒息につながります。
● ② 症状の進行が早い
火災から逃げられた直後は元気でも、
数分〜数時間後に急激に悪化 するケースが多い。
● ③ 有毒ガスとのダブルダメージ
火災の煙には…
● 一酸化炭素(CO)
● シアン化水素
● 煤(すす)
などが含まれ、熱傷+中毒で悪化。
■ ③ 気道熱傷の症状(最初は軽い咳だけでも危険)
● 初期
● 咳
● 声がかれる
● のどの痛み
● 呼吸が早い
● 顔がすすで汚れている
● 中等度
● 息がしにくい
● 喉のゼーゼー音
● 痰に黒いすすが混じる
● 苦しさでパニックになる
● 重症
● 呼吸困難
● 意識低下
● チアノーゼ(唇が紫)
● 呼吸停止
“声が変だな”と感じた瞬間には
すでに進行している可能性があります。
■ ④ どんな時に発生するのか?
● ① 室内火災からの逃げ遅れ
炎よりも煙が広がるスピードが速い。
● ② 暖房器具・ストーブの火災
煙の充満した室内は瞬時に高温になる。
● ③ キャンプ・コンロ・テント内火災
吸い込んだ瞬間にダメージ。
● ④ 車の火災
閉鎖空間で非常に危険。
■ ⑤ 気道熱傷を防ぐ行動(これだけで生存率が大きく変わる)
● ① 姿勢を低く(煙は上に溜まる)
床付近は比較的温度が低い。
“ハイハイ姿勢”で避難が基本。
● ② 口・鼻を覆う(ハンカチ・服でOK)
防げるのは“熱と煤の一部”だけだが、
何もしないよりは大きな差。
● ③ エレベーターは使わない
煙が一気に入り、逃げ道がなくなる。
● ④ ドアを開ける前に温度確認
熱い扉の向こうは火が回っている可能性。
● ⑤ 迷ったら“避難しない”より“避難する”
火災は数十秒の判断遅れが命取り。
■ ⑥ 気道熱傷が疑われる時の対応
● ① 新鮮な空気の場所へ移動
まずは煙から離れる。
● ② 速やかに119番通報
気道熱傷は一刻を争う緊急事態。
● ③ 水を飲ませない
嘔吐リスクが高く、気道閉塞の危険。
● ④ 無理に寝かせない(呼吸がしにくくなる)
座った体勢の方が呼吸が楽。
● ⑤ 搬送時も容体が急変することがある
病院では気道確保(挿管)を行うことも。
■ まとめ
気道熱傷とは、
火災で吸い込んだ熱と煙で気道が焼ける極めて危険な状態。
- 無色・無臭の熱気でも起きる
- 数分〜数時間で急速に悪化
- 咳や声枯れが“最初のサイン”
- 低姿勢+口鼻を覆って避難
- 疑ったらすぐ119番が命を守る
火災の本当の恐怖は“炎より煙”。
知識があるだけで助かる命は確実に増えます。

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