【防災士が解説】“防災ボランティアの現状と課題”支援が必要な時に、なぜ人手が足りなくなるのか?

日本は世界でも屈指の“災害が多い国”。
その中で、被災地を支える大きな力が 防災ボランティア です。

しかし現場では、
「人が足りないのに、コーディネートできない」
「支援したくても受け入れができない」
という矛盾が毎回のように起こっています。

ここでは、防災士の視点で“ボランティアの現状と課題”をまとめます。

■防災ボランティアの現状
① 大規模災害のたびに全国から支援希望者が殺到
→ 令和6年能登半島地震では受け入れ停止期間が続いた
→ 道路・交通・宿泊が確保できず調整困難

② 少子高齢化で“地域ボランティアの担い手”が減少
→ 特に農村・山間部で深刻
→ 高齢者中心となり活動量が限られる

③ SNSの発達で“突発的な個人参加”が増加
→ 廃棄物処理・炊き出し・清掃などに参加
→ しかし安全管理が追いつかない場面も

④ 平常時の防災訓練は参加率が低い
→ 災害時の即応力が育たない
→ 若者の参加率は極めて低い

⑤ 専門スキルを持つボランティアが増加
・ドローン
・ICT
・医療
・福祉
・通訳
→ これらが大幅に支援力を向上

“意識は高いが、仕組みが追いついていない”のが現状。

■防災ボランティアが抱える主な課題
受け入れ体制が整わない
・道路寸断で入れない
・宿泊場所が無い
・拠点が不足
→「来て欲しいのに来れない」状態が発生。

安全管理が難しい
・倒壊家屋での危険作業
・二次災害のリスク
・装備不足
→ 管理者不在だと事故につながる。

調整役(コーディネーター)が不足
→ これが最大の課題
・自治体職員も被災している
・ボラセンが立ち上がらない
・情報が錯綜する
→ 結果、支援の手が“宙に浮く”。

専門スキルが活かされない
・ドローン班を受け入れる窓口が無い
・医療・介護ボラの配置ができない
→ 能力があっても活用されない。

ボランティア疲弊(バーンアウト)
・長期支援で燃え尽き
・ストレスによる離脱
・経済的負担が大きい

地域ボランティアの高齢化
→ 平常時の担い手が限られ、訓練不足が進む。

被災者とのトラブル
・支援内容の不一致
・プライバシー問題
・善意が誤解される
→ 心理的負担になるケースも。

■課題を解決するための現実的な改善策
「災害ボランティア受入マニュアル」の全国統一化
→ 被災自治体が迷わず動ける
→ 役割分担が明確になる

コーディネーターの平時育成(最重要)
・行政職員
・社協
・防災士
・消防OB
→ 専門的な調整訓練が必要

災害ボランティア登録制度の活用
・地域登録
・専門スキル登録
→ どんな人材がどこにいるか可視化

受入側が確保する宿泊拠点の整備
・体育館
・テント村
・民間ホテルと連携
→ 宿がないとボランティアは集まらない

ICTによるマッチングシステム導入
・作業内容
・人数
・時間
・危険度
をアプリで可視化する。

スキル別ボランティアチームの編成
・土砂撤去班
・医療班
・福祉支援班
・情報伝達班
・ドローン班
→ 能力を最大限活かせる。

地域ボランティアの若返り(重要)
・学校教育に防災ボランティアを組み込む
・大学との連携
・企業のCSR参加
→ 若者の参画が継続性を支える。

■防災ボランティアの未来
・DX化によるマッチング効率化
・ドローン・AI・ロボットと連携
・要配慮者支援の専門チーム増加
・全国共通資格の導入
・地域単位での自主的なボラ体制強化

被災地の“人手不足”は技術と制度によって必ず改善できます。

■まとめ
防災ボランティアは災害対応の大きな柱ですが、
・調整役不足
・受け入れ体制不足
・情報遅延
・安全管理不足
といった課題が依然として残っています。

解決のカギは、
「平時から仕組みを作っておくこと」
「コーディネーター育成」
「ICTによるマッチング」
の3つです。

この仕組みが整えば、被災地の支援効率は劇的に向上し、
命を守る力が強化されます。

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