火災現場で消防士が身にまとっている 防火衣(ぼうかい)。
炎・熱・有毒ガスなど、命を奪う危険から身体を守るための
“消防士の最重要装備”です。
見た目は一着の服ですが、
その中には高度な科学技術が詰め込まれており、
命を守るための仕組みが複雑に組み合わされています。
ここでは、防災士の視点で
防火衣の構造・性能・役割をわかりやすく解説します。
■ ① 防火衣とは?
防火衣とは、
消防士が火災現場で着用する耐熱・防炎性の高い特殊な防護服 のこと。
火災現場は…
● 800℃を超える高温
● 煙
● 有毒ガス
● 炎の熱放射
● 落下物
など、命の危険だらけ。
防火衣は、消防士が安全に活動するための必需品です。
■ ② 防火衣の構造(3〜4層構造の“鎧”)
一般的な防火衣は、
3〜4層の多重構造 で作られています。
● ① 表地(アウター)
耐熱・防炎素材(アラミド繊維など)
→ 火が接触しても燃えない
● ② 透湿防水フィルム
→ 水は通さない
→ 湯気や蒸気の熱から身体を守る
→ 服の内部の汗は外へ逃がす
● ③ 断熱材(中綿)
→ 高温の熱を通さない
→ 熱放射から体を守る
● ④ 内側生地
→ 着心地の安定
→ 汗の吸収
→ 体温調整をサポート
この“層の力”で消防士を守っています。
■ ③ 防火衣が耐えられる性能
● ① 高温への耐性
800℃級の熱に一定時間耐える設計。
炎に直接当たる火炎耐性も備えます。
● ② 熱放射からの防御
距離を隔てても襲う“熱波(遠赤外線)”を遮断。
● ③ 水・蒸気の熱から守る
火災現場では水蒸気爆発や熱い蒸気が危険。
防火衣は湿気や熱水の侵入を防止します。
● ④ 引き裂き・摩擦に強い
倒壊家屋・鋭利な破片から身体を守る強度。
● ⑤ 反射材で視認性UP
煙の中でも仲間が認識しやすいよう反射テープを搭載。
■ ④ 防火衣の種類
● ① 火災防御用防火衣
一般的な構造火災・建物火災で着用。
● ② 山林火災用(林野火災用)
軽量で動きやすく、過酷な野外活動向け。
● ③ 化学防護服
有毒物質・ガスへの対応専用。
● ④ 救助用防護衣
救助活動に特化した軽量タイプ。
■ ⑤ 防火衣は“重い・暑い”…それでも必要な理由
防火衣は1着で 約3kg〜5kg。
空気呼吸器(約13〜15kg)と合わせると、
消防士は 20kg前後の装備 を身につけます。
● 暑い
● 重い
● 動きにくい
…それでも命のために必要不可欠。
防火衣があるからこそ、
消防士は炎の中に踏み込むことができます。
■ ⑥ 防火衣の管理と交換
● 汚れの洗浄
● 熱損傷の確認
● 破れの補修
● 匂い・有毒物質の除染
● 使用年数(耐用年数の管理)
火災現場ではダメージが蓄積するため、
定期更新(通常5〜7年)が必須です。
■ まとめ
防火衣とは、
消防士を炎・熱・煙から守る“命の鎧” です。
- 3〜4層構造で高温・炎・蒸気から防御
- 800℃級の熱に耐える性能
- 反射材で視認性を確保
- 重くても安全確保のために必須
- 定期的な点検・洗浄・交換が必要
見た目以上に高度な技術と使命が詰まった装備。
防火衣は、消防士の“最後の盾”として命を支えています。

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